有田焼を雑貨とは呼んではいけないような気がしますが・・・

今回は有田焼についてお話したいと思います。

「S」の項で「瀬戸物」についてお話しました。

瀬戸物は字の通り本来は愛知県の瀬戸で作られ、日本全国、はたまたアメリカを主にした海外に輸出された(「O」オキュパイドの項参照)瀬戸の焼き物ですが、高度成長期以降あまりに浸透し、日用雑器の陶器類の呼び名として瀬戸産出なくても焼き物の代名詞になってしまったくらいの日用品であると言えます。

 

有田焼は日本人なら聞いたことがない人はいないでしょうし、何気なく使っている言葉かと思います。

商店街を歩いていても「瀬戸物やさん」では有田焼についてはPOPやシールであえて「有田焼」とハッキリと謳って他の陶器とは区別されている感じがありありと伺えます。

 

有田焼は陶器ではなく磁器です。

陶器は土を原料とし、磁器よりは低い温度で焼かれることと柔らかく温かみのある土肌が特徴とされています。

磁器は石を原材料とし、陶器よりは高い温度で焼き締められます。青白い涼やかな肌の色に、硬く丈夫な特性があります。

 

そして名前の通りに、佐賀県の有田地域で作られる焼き物が有田焼、主なイメージとしては高級品、日本が世界に誇る宝物、という事があり

人間国宝となるような有田の代表的な窯元がいくつもあります。

そして鎖国をしていた江戸時代のはずですがその有田焼は世界に大きな影響を与えていました。

 

 

 

歴史は安土桃山時代に遡ります。

当時日本ではまだ磁器は作られてはいませんでした。

中国の景徳鎮が有名な産地で、ヨーロッパの王侯貴族たちに好まれていました。

そんな時代背景の折、

磁器に適した陶土の発見と豊臣秀吉の朝鮮半島遠征によって連れてこられた李参平という朝鮮人の陶工を幽閉し技術を日本に伝えさせ、有田焼が生まれました。

有田という場所に上質な陶土があったということと朝鮮半島から近かった事がこの歴史的事柄が起きたと思います。

それから陶器に赤い色絵付けをするという事は非常に難しい事で、赤い色は釜で焼き付けると焦げ落ちてしまい、なかなか赤い色柄の焼き物を作る事はできなかったと言います。多く見られるのは「染付」と言って青い絵柄の焼き物です。

李参平によって赤絵、と呼ばれる赤や色絵の具の使われた焼き物を焼く技術ができました。

幽閉、と言っても確かに「赤絵町」からは李参平を出さなかったようですが、十分な暮らしを与え手厚く扱ったという事です。

 

よく、「古伊万里って何ですか?」という質問がありますが、ざっくり言えば江戸時代の有田焼のことです。伊万里港からヨーロッパに運ばれたので「IMARI」と呼ばれていました。

繊細な日本人の技術の有田焼は本家の景徳鎮を追い越す人気になり、ヨーロッパの王族、貴族たちはこぞって収集、富や名誉の象徴の品となり有田焼は「白い宝石」と呼ばれ王族貴族はその集めた膨大なIMARIを専用の部屋を作り陳列する事が大流行り、それは「ポーセリアンルーム」と呼ばれました。

 

 

 

 

今でもヨーロッパのお城の写真集などでポーセリアンルームを見る事ができたり、ヨーロッパのティークロス、インテリアクロスのテキスタイル柄に日本の染付の磁器がデザインされたものがあります。

 

ヨーロッパはドイツの有名なブランド、マイセン窯ですが、日本がそうしたように、マイセンも遥か遠い日本からIMARIを輸入するのではなく自分のところで作りたいと考え城に錬金術師を幽閉し、有田焼を模した物を作らせました。マイセンには日本の有田焼インスパイアのデザインが見られます。ドイツのマイセンのルーツは日本にあったのです。

 

 

伊万里焼は上記に書いた通りですが、有田焼の中に「鍋島焼」という言葉も使われます。

それは有田の地域は当時鍋島藩であり、諸大名や江戸幕府への贈り物として非常に珍重されていたことと、鍋島焼きに見られる図柄のデザインがあり、品の良さや高級感を醸し出しています。

その図柄は今でもモダンと感じてしまうほどのものが多くあります。

 

 

 

 

現代でも有田焼は高級品であり日本を代表する焼き物です。

とは言え、有田にも色々あり、私たちが日常で使えるような安価なものもあります。

冒頭の商店街の瀬戸物屋さんなどに並んでいます。

 

それから普段あまり考える事はなさそうですが、ホテルや料亭、和食屋、レストラン、それから何とファミレスなどのチェーン店・・・業務用食器はその「丈夫な」という特性から有田焼が多く使われています。

まぁ、どこにも有田焼とは業務用なので書いていないのですが。

業者さんならば産地に行って打ち合わせルームなどに行くと見る事ができると思いますが一般には見る事はないと思います。

と、いう例をあげたのは決して高級品の扱いだけではなくいろんなものを作っているし頑丈で持ちが良いという素晴らしい特徴があるんですよ、というお話でした。

 

 

 

ちょっと余談ですが、最近は雑貨屋さんなどでは「波佐見焼」というのがよく見かけますし、人気です。

面白い話、有田焼と波佐見焼は道を隔てて同じ地域です。

佐賀県と長崎県の違い。

同じ地域なので恵まれた質の良い陶土も手に入りますし、人の行き来ももちろんあるわけで。

どんな品物の世界でもある事ですが、やはり佐賀県の有田で作られた、というと昔から歴史があり格があるものです。

でも近年は隣町の波佐見に若いデザイナーが育ち現代的な作品、商品を作る企業努力があり、街の雑貨屋さんなどでは若い人たちに人気があります。価格も有田焼より値ごろ感がある事も人気の要素の一つです。

面白いですね。

 

 

 

2020年はコロナで開催がWEBになったそうですが毎年ゴールデンウィークになると普段静かな有田の町が人人人で大混雑!

人気の陶器市があります。

密にこだわらなくても良い時代になったら陶器市の楽しさも味わいたいですね!