こんばんは


ちょっと間が空きましたが Rと市警の地獄編です。



短い夜 Ⅲ 第3話 Liberty - 市民蜂起 (7)

http://ameblo.jp/francescabell/theme-10063895964.html



地獄って、ウソでした。





うーん、文章で「物理的な」 戦いを表現するのは、どうなんでしょうか。

難しい。




ブシュ!


どりゃぁ!


チャリン!


○○剣をくらぇぇ!



ないない。。。w




緻密に心理描写を加えながら・・・ちがうなぁ~。 いえ違わないけど、じゃあキチンと表現できるのか。

って、文章自体は結構前に書き捨てたモノなんですけどね(かなり修正はしてますが)。

別で書いている現作ともども、文章表現に悩む日々です。




ついでに

最近こんな音楽聴いてるよシリーズ 第6993弾


Braveheart Full Techno Remix - DJ Hixxy

http://www.youtube.com/watch?v=yPvZdZ5QR8A



マビの世界観にちか、そうでもないかな。


短い夜の世界はもっと近代のつもりなんですけど、イメージはお気に入り。

新しい技術に Boy Meets Girl てきなところが。

音楽もね♪







3-2-8 R5



コトリバコ回収計画。




・・・ R 准尉、地形を頭に叩き込め ・・・。


・・・ ダンバートン市潜入に失敗した場合、皇帝タラ隷下の親衛隊に庇護を求めること、これをを許可する ・・・。


・・・ 全ての尋問に回答して構わない … 「コトリバコについてもですか?」 … 彼らはコトリバコの存在を知らない … 。



輸送を担当する人民軍海兵司令と我が内務省情報局は直前までシミュレートを繰り返した。



・・・ウルラ上陸後、通信途絶は必至 ・・・。


「救出は不可能だ。しかし君達の帰還を心より待っている」






もし王都タラへ移動が難しい状況に陥ったら、イメンマハ候あるいはバンホール候に種族を明かし武装解除、投降する。


ラインアルト市やセンマイ地域への逃走も考慮すること。

それすら叶わなければ市内のイネーブラ卿あるいはナイアス子爵の支配区域へ。


いずれかなら犯罪者ではなく軍人、つまり捕虜として拘束される可能性が高い。


情報提供を条件に身体は保障されるだろう。


なぜなら外世界への窓口を欲しているから。




ところがよりによってダンバートン市警公安、特高とは。



・・・激烈な拷問が待っている。





特高課員が高々と演説を述べている間に、僕の対応をしていた銀行頭取が貸金庫の中身を片付けはじめた。


「おいアンタ、何をしている」


「警部殿お役目ご苦労様です。しかし待ってください。協定を守っていただきたい。容疑の方について意見はありませんが、預金物は当行が責任を持ち管理する義務があります。確固たる正当な手続きの上、申請願いたい」


頭取が貸金庫の箱を引き下げたので、僕の左手は84式を握ったままカウンターに落ちる。そして貸金庫の扉がカチッと閉じ・・・鍵はポケットの中。



「頭取さんねぇ。アタクシ、特高課の人間なんですよ。分かりますよね。コイツもすぐに口座解約書にサインしますって。なっ エルフ」


また殴られ、歪む映像がさらに多層にぶれる。


「失礼、ご存知でしょうが」


歯が折れたかも・・・眩暈で吐き気がする・・・口の中がじゃりじゃりする。


「脅迫、ましてや拷問で強制された書面、つまり自由意志ではないサインは無効です。これはダンバートン高等裁判所にて判例があります。

警察の方なら御存知でしょう。正式な手続きの上でのみ当行は従います。
なぜならお客様の信用がなければ銀行は成り立たないからです。
ワタクシ共は信用を担保にお客様の財産を運用し、市の経済活動に貢献する独立機関です。
硬く聞こえるかもしれませんが、法律に則り、お客様と私共、銀行と市政府で取り決めたルールから外れるなどありえません。
つまり市の行政機関たる警察と独立した権限をもつ当銀行の協定が遵守されない限り、あなたの意思には従えません。
信用こそ当行の生命線です。ご理解いただきたい。
どうか上席の方に伺いを」



頭取・・・コイツらお前達の秘密警察でしょう。


「はぁ、おっしゃりたいのはそれだけですかな?」


見誤ってる。蛮勇です。特高は話が通じる相手じゃない。


「ふぅん、アンタさメンツ潰す気?
それじゃあよぉ、戒厳令の意味が無いじゃねーか。バカかアンタは」


警部と呼ばれた男は紙袋から制帽を取り出し眺めはじめた。何か気になるらしい。もったいつけた後、糸クズをつまみ息を吹きかける。
動作の一つひとつが芝居がかっていて笑える。


ただし、制帽のエンブレムは紛れもなくダンバートン市警、恐怖警察の印。



「あー、あー。 ・・・意見するとはなんだ。立場わかってんのか貴様」




後ろに並んでいた女性はペンと書類を持ったまま固まって、頬だけが痙攣している。


銀行員たちはもちろん、客まで身じろぎひとつしない。


頭取と僕、そして警部と呼ばれた奴以外は凍り、完全に音の消えたロビー。


市警、特に特高は何をするか想像がつかない。


どんな些細な事でも、目をつけられたら破壊される。





「まぁいい。
いいんだ、意見なぁ。
あぁ・・・なるほどぉ。いやいや・・・お!・・・ おぉ素晴らしい。なるほどですなぁ。
クサイ、プンプン臭う。反社会的な香りがするのぉ。いかん、真にいかん」


「話を聞いてください。私はですね、互いの役割、つまり職責について確認しているだけです。メンツであるとか、そのようなレベルの・・・」


「よっしゃ! 理解できた。エルフに協力する気だぁ、コイツ。
おう、頭取も逮捕なぁ。
お前はな、スパイの協力者でテロリストだ。
大人しく聞いてりゃコレだ。呆れるわ。
ウチの取調べは過酷である。血まみれにしてやるからよ。死なんよう努力せい!」



「な、何を言っている。無茶な事をおっしゃる。私が何をしたと言うのです? 正気ですか・・・ これは私の職務だ。正式な手続きを求めているだけだ。
そ、そう! 当行はタラが貴族ブラージ公の所有物・・・それに私の市民権はタラだ。いいですか、外交問題になりますよ。あなた、一介の刑事でしょう、その覚悟をお持ちか? 上の方に、とにかく上司の方を呼んで伺いを・・・。


あぁあ、何をする。
離せ、ぶ、無礼な!
呼べない?なぜです。出来ないなら貴様こそ・・・所属・・・官姓名を名乗りたまえ! 勘違いしているようだが・・・」




鈍く重い音が響き、生暖かいモノが手と顔に触れた。




「今は戒厳令下ですぞ、頭取。ダンバートン市警察に全権が委任されておる」






ある意味、口だけでは無い。


本当にやる。


昼間からブラブラしている職の無いチンピラたち。


日暮れから現れ肩で風を切る武装ギルドの構成員。


闊歩するマフィアの面々。


彼等はよく知っており特高には絶対近づかない。威勢と虚勢が全ての彼らを無視する異質な存在。
ダンバートンでは市警特高がNo.1だ。間違いない。
ただ唯狂ってる・・・無言でやるとは。



特高課員の一人が振りかぶった斧は、躊躇なく頭取の手首を切断した。





嗤いながら猟犬たちがカウンターを飛び越え、頭取を引きずり出しす。


「おい、頭取のおっさん。お前なんなの?
顔色わるいぜ、真っ青だ。健康には気を使ったほうがいい。あぁ手がとれちゃったからか。 あぁん?
そうそう、知らないのか。
警部閣下は貴族が嫌いで、タラはもっと嫌いなんだな。最近はエルフもだぜ。で、ん・・・喧嘩売ってんの?」


こいつら・・・。


「警部、ここは反動分子の巣のじゃないですかね。一発、気合入れてやりますわ」


悲鳴が木霊して、充満する恐怖に僕は意識を閉じかけた。


- 医師を目指していて、その気持ちはまだ十分残って・・・感謝されて、それを辞退する柔らかくて優しい世界を夢想していた。


え、ちょっと・・・なにしてんの。


- 現実がこれほど酷いとは。


もがいても厳しく押さえつけられ動けない。






私服の特高課員。客と見分けがつかない。

馬鹿な。


「やめて。止めてください、おねがいします。いやだぁ」


カウンターを飛び越えた男・・・制服の女子行員の髪を掴み無造作に押し倒す。口の中に突っ込んだナイフ・・・一気に引き抜いた。

殺した、アイツ。同胞なのに殺した。だから待てよっ・・・ヤメロヨ・・・関係ないじゃないか。

簡単に殺すな。躊躇とか無いのか。



お前達、人間ってなんだ?


- 帰ったら単位をとらないと。復学してするんだ。





見境無くシリンダー/スイッチブレードを乱射する・・・狂犬の群れ。


ルールってあるでしょう。
僕が甘いのか、世界が狂ってるのか。
エルフは人間と対等に向き合えるだろうか。
こんな動物以下の種族と。



「おいおい優しくなぁ。軟弱な市民だよ。苛烈はいかんから精神棒まで許可しよう。刃物はバツなぁ」




・・・警察官が市民を虐殺する街。




「総員作業停止! 銀行員ども! カウンターから出ろ!
ビシッと動けよ。トリッキーなヤツは即処刑だ。セキもマバタキも許可制だぞ、コラ」



キレルナ。
熱くなったら殺される。



戒厳令のせいで、かえってタガが外れた。この街は危険すぎる。恐らく崩壊する。


優先順位に迷ってる間はないな。


落ち着け。


こんな奴らにジルが捕まったら。


命令書なんてもういい。


正しい選択なんて結果が出た後に部外者が決めるモノ。後出しのジャンケンでしょう、それは。


ただ、この場に限り間違いようの無い道を見つけた。


黙って連行されて殺されても、仮に助かってフィリアに帰れたとしても、死は万人のもの。


どうせいつか死ぬわけだし。


ジルのために生きられるなら、そっちの方がいい。
自分が納得できる人生を選択するは … 今だ。

深呼吸をしてもう一度、自分に言いきかせるため、落ち着いて、ゆっくりと声に出す。


「バイバイ、ジル」


貸金庫のユニットの外、裸の84式は一瞬で展開した。

もしヒーローになれるなら、僕は・・・。

3-2-7 サナ3




「レーシ先生。


帝都では新型艦の建造が始まりました。大海を渡るために設計された巨大軍用艦です。


コードネーム"幼いタヌキ"。
ふふ、脆弱そうで面白いでしょう。


で、なんですけど・・・"幼いタヌキ"は広域魔法射出装置を多数備えております」



レーシ自身もターニングポイントとして「オ・プレッチェネッラ 」 まで来たはず。知らなかったなんて通らない。とにもかくにもタラ親衛隊の会見を自ら受けた。
選択すべきだ、己の命の行く末を。




「主力は内3門。臨界兵装」




知識は認めるが拒否するなら、シナリオは私が書き換える。


ただ陛下のご意思は紛れもく「生モノ」で、叱責を受けるだろうね。だが、頑なそうなこのジイさんの思考経路はどうにもならない。


能力があるのに生かす術を知らない。逆にバカなのか? それとも脳に欠陥でもあるのだろうか。



もっと人間を、人格構造をトレースしたい。
動機、思考・・・年寄りの首を刎ねるなど雑作も無い。が、知りたい・・・傾向、生い立ち、経験、指向、性癖。



コイツはイリアで何を見たんだ?




「現在ケオ島沖で試験運転中だそうですよ、タヌキは」





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私は工場で作られた大量生産品のスプーンとは違う。


生まれながらの上位貴族。


世界一の父と母から授かった美しい容姿と社交性。それは鏡が無くとも自覚できる。


加えて曽祖父より受け継いだ古い気質。一族が貴族たる祖のもの。


・・・軍の行動記録がソレを露にしてしまい、だから陛下は本家から私を切り離した。正統たる騎士の血なのだから致しかたないでしょう・・・貴族階級でなければフリークス(変態)かサイコパス(精神病質)で病院送りだ。


陛下は同類だと守ってくださった。


ダンバートン大公と死闘を繰り広げた血は、私だけでなく陛下も継承されている。


「お揃いでカワイイ」と仰るが、あの方、自覚しておられるのだろうか。




大公と始皇の遺志は騎士が継ぐむ。


避けようのない未来・・・来るべきイリアとの大戦・・・騎士の、我らが存在意義。


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「なんでもその主砲は試射レベルでケオ島の石人形"The Golem"をまとめて屠ったとのこと。これが現在の帝国の技術です。


臨界兵装と呼ばれるモノを搭載したベイビー・・・完成の暁には帝国海軍旗艦"エイヴォン"となります。


海上要塞とも称させる不沈艦。


その船に・・・王立大学の上級研究員ともなれば将官待遇で一室ご用意できますよ。
一かバチかの航海を高齢であるレーシ先生にさせる訳には参りません。
つまりもう一度、イリアの地を見聞いただく事も・・・ご希望とあらばですが」



「のう、サナさん。その船の臨界兵装とは"ファイヤーボール(核)"ではないのかね。
親衛隊は、皇帝陛下はイリアの地で核を使うつもりか。


もっとあるだろう、対話するとか。お互いをだね、理解しなければダメだよ。

話し合えば通じる。彼らは野蛮人ではなく・・・いきなり・・・海上から焼き払うなど。

エルフも魔法を使うぞ。エルフは・・・。


いやそれ以前に大体馬鹿げている。核兵器を船から射出し、その影響範囲から離脱できるとでも思うのかね。
君はその戦艦"エイヴォン"だかに搭載される兵装を理解していない」





「核・・・とはエルフ語でしょうか?


・・・。


まぁ! ご存知でしたか。はい、臨界兵装とはファイヤーボールです。

かつて、130年前と60年前、空間転移された異人"ゴースト"がトゥガイドアイル、ダンバートンを焼き払った技術です。

エルフは実用化できなかったようですね」


「それは違う、彼らですら制御できなかったのだ。だから・・・」


「ええ、だから負けるのでしょう、ジャイアントに。

ビシスのミートボール (Viceths being)も"エイヴォン"の前では石人形、いえ泥人形では?



それを踏まえて・・・ご存知ですか?


エルフの敗色は濃いようで、撤退につぐ撤退と。


100年と続いた絶滅戦争は終盤かもしれません。


現時点で陛下と列強の種族王は秤に掛けています。


エルフの首都フィリアが陥落した場合、彼等の難民が海を越えた場合、それをどう受け入れるか。
流出するであろう彼らが先端技術の再現可能性は?


そしてイリアをビシス人が制した場合の動向。噂される超兵器 "Viceths being" に対抗する手段とは。



確かに"ファイヤーボール"を帝国本土で使用する事態は避けたいと、陛下は仰っていましたけどね。



もっと早くから考えるべき問題だったんです。


しかし前帝はもとより社会そのものが興味を持たなかった。
先生の存在価値は・・・失礼な物言いですが、大きく変わったんです。




現帝陛下は決断された。


国策はイリア大陸進出へ大きく舵を切られました。既にタラ政府はそのように動いております 」

こんばんは


昨夜に引き続き



短い夜 Ⅲ 第3話 Liberty - 市民蜂起 (5)

http://ameblo.jp/francescabell/theme-10063173822.html


でっす。



まぁ 放置してたから・・・読んでくれてた人にも自分的にも罪悪感。



えーおいといとて!

以下独白。

そして妄想。






やっと出せたよー。


ダンバートン最悪の勢力・・・恐怖警察・・・ダンバートン市警!



そしてサナは世界を語ります。

サナのパートは時々、しばらく続きます。


ではっ













3-2-5 サナ2


サナは静かに背を伸ばす。


「この街、ダンバートン市の処遇はありえません。酷すぎます。


レーシ先生は延べ40年もイリア大陸を渡り歩き、かの地の文化を研究された。


そのたぐい稀な経験をお持ちな方に与えた仕事は、一介の司書。
お役目は僅かな翻訳業。



失礼ですが暮らし向きは如何でしょう。
逼迫されているのではないですか?

先生の研究に遅滞は生じていませんか?

私は憤りを・・・。軽んじるも過ぎております。



先生が個人的に編纂されていた 「タラ・エルフ・ビシス域汎用言語辞典」は既に入手困難です。世界で初めて成し遂げた偉業なのに一部の研究者しか手に取れません。


ご存知ですか?


タラ、ティーン、イメンハマ・・・城塞都市の諸賢はもとより、ラインアルトやセンマイの異属まで先生の教本を所望しています。


先生は欲が無さ過ぎますよ。もっと、ええ、言語学者 レーシ の名は後年の歴史書に記されるべきです。


更に「イリア諸国政治制度概論」と「コンヌースフォークロア序論」に至っては初版本のみ。

哀れ血眼で捜し求めている方々がいらっしゃるようです。あげく独立系ギルドは先生の教本を巡って傷害事件まで起こしたとか。



私は一部を拝読いたしました。


率直に驚嘆を。


しかし。

なぜに原版を破棄されたかっ。


失礼・・・。


先生のお気持ちも含め、全て受け止める所存です。



世辞ではありません。それは私だけではなくタラ本国の専任研究員も同じです。
ダンバートンで埋もれさせるなど知の損失、その何物でもありません。
タラ政府と親衛隊はレーシ先生を高く評価しており、御身柄を保護すべく馳せ参じました」



カナッペを少しずつかじり、老人は皿を見つめる。その表情は読めない。



「我々はタラ王立大学に上級研究員の籍を用意しております」

レーシのグラスを満たしてやる。


「帝都にいらして頂ければ一等市民ですよ。貴族と同格です。


お買い物も図書館も待つ必要なんてありませんし、交通機関も最優先。と、いうより遮るなんて不敬ですから。先生は博士号を称されるんです。ステキじゃないですか。


先生、帝国に力を貸していただけませんか。

予算に上限はありません。存分に研究して頂き、若い研究員にその知見を披露下さい。
向学心旺盛な学生達が大学で待ちかねております」



学生・・・大学・・・軍か・・・老人は小さく呟いたあと、無言でサングリアを口に運ぶ。





古よりエルフとジャイアントは激しく対立している、と情報は得ている。
当然この人はその事を知っているわけだ。
もう少しカードを切っていいだろう。


篭絡と拉致ではその後のパフォーマンスが違いすぎる。


できれば自分の意思で決めてほしい。




「はい、軍です。我が国の最高学府は親衛隊が運営しております。
正直に申し上げましょう。ふふ、私もサングリアを頂いてヨロシイかしら?


えーぶっちゃけ、話しちゃいますね。
本当のお話を。
レーシ先生はお気づきなのではないですか?





イリアとはどんな土地なのでしょう?


空を舞うドラゴン、妖精を喰らうジャイアント、人を惑わすエルフ。


この程度であらば私達の伝説 「サキュバスの魔」のほうが圧倒的に美しい。


競う意味もありませんけど、これが一般的な国民の認識でしょうね。


対して軍は現実的な情報を欲しています。またそのような人材の育成が急務なのです。




確かに全く交流が無いわけでもありません。イリアにはささやかながらベースキャンプがありますし、エルフだけですが来訪も確認しています。しかし冒険者気取りか、よくて少し危険な旅行を楽しんだ若者と年寄りの怪しげな情報ではダメなのです。


整理し考察された・・・情報が必要なのです。


私たちはイリアの地図、動植物、気候、風習といった基礎的な情報を欠いている。
それどころか満足な言語辞書すら持たない。


一番の問題がココです。

地図や風土の情報は時間を掛ければクリアできるかもしれない。しかしその前にエルフやジャイアント(ビシス人)と遭遇してしまう。


仮に平和的な邂逅だとしても、予め彼らの情報を準備できているか否か。
実際に現地で行動する親衛隊、すなわち新設される遠征軍 "帝国海軍"
が大陸で寛容に行動できるか、その鍵になります。


そして来年初めには大々的に第一次移民の募集を始めるんですよ。貴賎は問いませんし、もちろん親衛隊が安全を保障します。


つまり、私は、いえタラは本気なんですよ。


事態は逼迫しています。
誠意の示し方が無学ゆえ浮かびませんが、機密と理解いただき是非タラ行きを決断いただきたい。」



最後のカードを切ろうか。
レーシにとって最も心が踊り、動機にもなるはず。


拒否したら・・・いらないな、もう。


私が示せる最大の、敬意かつ陛下の意思。

帝国の機密。

理解出来ないなら・・・拉致も無しだ。


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3-2-6 R4



「誠に申し訳ございませんが R 様の預金口座は凍結致しました」



僕はカウンターの前で立ちつくす。



「本日早朝、市警本部より指導を頂きました。つきましては貸金庫の代理人申請書をもう一度改めさせて頂きたいのですが」



隣の窓口に立つ夫婦が露骨な視線を向ける。



「R 様、手にされている物は貸金庫の中身とお見受けします。どうかラックへ。お手元の書類を戻していただけませんかな」



80×20cmの箱の中、片手で84式クロスボウの安全装置を外す。これを預けるとき、ジルは矢を装填しただろうか。


「口座の件はわかりました。市警に確認してみよう。しかし貸金庫は僕名義じゃなく正式な委任状も用意しています。

止められる理由は無いでしょう。

ただ、立場はわかりますよ。

納得はしてませんけど市警の命令なら仕方が無い。とりあえず代理人申請書は受付の人に預けたままですし、確認していただけますか。待ちますよ、ここで」




返事をして・・・貸金庫の箱を覗くフリをすると汗が頬を伝った。


迷う。


ハイド(擬態)を使うタイミングはまだ先だろうか。
その時が来たのか。




使ってしまえばエルフとバレる。






「待つ必要もないって」



え・・・。

隣に立っていた夫婦。

妻のほう。女? 僕に? 知らない顔だと思う。



何十分かの一秒で辛うじて囲まれていると気づいた。


女が右手の書類に手を伸ばして来た。それを胸に抱える。



砕ける音と同時に、視界が薄いピンクに染まる。




鼻っ柱を殴られた?


激痛が頭の中を走り、急に周囲は暗くなり火花で覆われ・・・膝の力が抜ける。ひんやりとした銀行の窓口テーブルを・・・頬に感じた。



殴った手、金属の何かを付けていた。


後ろから髪をつかまれ頭を持ち上げられると、また一発。


野太い声がぐわんと言霊のように響く・・・。




「はいぃ、ダンバートン市警察うぅぅ! お前ぇ、逮捕なぁ。スパイ容疑だ。えーっ 5月13日 8時15分、身柄確保ぉぉ」




激痛で涙と汗があふれ、息ができない。


「エルフのクソを逮捕だ!」



僕はアチコチから押さえつけられ、得意げなハンターの顔も見れない。

落ち着いたら身分を明かして交渉を・・・異種族と証明すれば・・・大丈夫。
ペルソナ・ノン・グラータ(外交官特権)を、チラつかせれば現場指揮官では判断できまい。

そんなもの持っていし、そもそも国交すら無いけどさ、面倒な相手だと理解させ切り抜ける。





「あー、お前には黙秘する権利がある。が、まぁ無理だろう。
供述は不利な証拠になる場合がある。
そして残念なんだが弁護士を呼ぶ権利は無いんだな。


なぜか?」



警官は僕のアゴを掴み引き上げる。


丁寧に血でベトつく髪を払ったソイツ。覗き込む異様に大きな黒い瞳、底が無い。





「テロリストに弁護士など・・・ナンセンス!


悪を弁護するとは、それこそ悪である。正義の、調和の!


同情しようかな・・・なり手なぞおらんからさ。


我等を欺いた、その知恵があるならば予想もつくだろう。覚悟しておけ、エルフのボク。


非公開の異端審問は非常に厳しい。貴様は死を望むだろう。致し方あるまい。

まぁ亜人間にも唯2つ許されている。生まれる権利と死ぬ権利だ。寛大な神は選択を赦された。


権利の行使について決定権は我々にあるが、一つ、もし裁判までこぎ着けたら、同じオスとしてお前を認めてやる。その時、貴様とは一種の信頼関係を築けるのではと思う。


問題はそれ以前。なぁ、ワシらの尋問に耐え切り裁判まで持つか、はなはだ疑問。そう、心配している次第である」



左手は貸金庫の中に突っ込んだまま、引っかかっている。

背筋が凍り、震えた歯の嫌な音が響く。


箱の中では安全装置を外しても弓を展開できない。



異端審問?
刑事部や所轄の警官ではない・・・。



まさか公安部 特別高等警察課・・・。

いわゆる特高、思想警察。




「頭取、そこにとっ散らかってる物は全て証拠として扱いますから。手を触れないようお願いしますよ」

えと、書くだけ書いて放棄してました。


大量にあるんです。



で、



こっちは後で。

http://ameblo.jp/francescabell/theme-10063125434.html



こっちさきです。

http://ameblo.jp/francescabell/theme-10062222968.html



ダンバートンが崩壊していきます。



その序曲です。

(やっとw)



いろいろ反省だ!遅筆について!



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えと、追記


短い夜 Ⅲ 以降はブログタイトルに登場人物にナンバーをつけるようにします。


自分管理用なんです。


自戒、自戒。


群像劇を書ける人は天才だよ;;








3-2-3



過日。


「ご足労いただき、ありがとうございます」

支配人サナは戸惑う老人、レーシの手を柔らかく取り近くのデッキチェアを薦めた。


~ 会員制 レストラン 「オ・プレッチェネッラ 」 ~


「急では困る。
あれだ・・・突然での・・・色々と今の生活もある・・・あぁ、アンタがサナ・ブラーシさんですかな。タラは親衛隊の人と聞いておるが」


「初めまして。サナとお呼び下さい。
親衛隊員と申しましても剣を取った事はありません。いわゆる事務系です。


スチュアートさんから概要は聞いておられると存じますが、改めてまして。


外地では親衛隊について随分大袈裟に報道されていますね。少し驚きました。
私の役割はコーディネーターです。軍人やその手の方々とは違いますわ。ご安心を。


えー、さてっと。


堅い話の前に、まずは喉を潤しましょう。お話したいこと沢山あるんです。
サングリアをいろいろ用意してみました。桃、アップル&バナナ、梨、キウイ&パイン、それとも素のワインになさいます?」



テーブルをセットしながらレーシ氏を観察する。くまなく。


予想より矍鑠(かくしゃく)としていた。
目が若干泳いでいるのは酒の毒ではない。緊張し脅えているだけだ。
実年齢より若く見える。新大陸の長旅が足腰を鍛えた・・・考えすぎかな。

そして視線から周囲を気にしている様子は見受けられない。彼にとって市警はノーマークっと。

まぁ普通に親衛隊の名だろう・・・唇の動きから・・・私を警戒している。


うーん、フィリア、ビシスと新大陸を渡り歩いた御仁で、ここで小心者とも判断出来ないでしょう。
この街の生活が老人を萎縮させてしまったなら、残念な限り。



「ワシ、キウイがいい」


グラスにサングリアを注ぎカナッペを薦めると老人は2枚つまんだ。


同じものを自分のグラスについで、右隣の席を選ぶ。


「どうぞ、遠慮なさらず。他にも用意してますよ。お好みの飲み物がありましたら申し付け下さい。
試飲のつもりで気軽に」


レーシは一息でグラスを空けた。


テーブルに並べたボトルを順にちょんちょんと触れていくと、アップルのボトルで老人は頷く。
タバコと葉巻を皿に並べながら私は発す。


「私共の願いを受け、この席にいらして頂いた・・・前向きに考えてよろしいのでしょうか?」



カナッペをむさぼるだけ、反応はない。


返事を待たずに私はタバコをくわえ、火を。


「レーシさん。単刀直入に申し上げますね」


カットチップを口に運ぶ老人の指。


微かに震えている。




「タラに亡命しませんか?」



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3-2-4



ダンバートン市 凱旋公園前 - ダンバートン中央銀行




家賃と公共料金の支払いを済ませ解約する。
不要な家財は教会に寄付し、この文化圏に影響を与えてしまいそうなエルフの痕跡は廃棄するか持ち帰る。


これは亡くなった支局長の大尉が決めた方針。


「近い将来エルフは人間と正式に接触する。無用な予断を抱いてほしくない。もちろん反感は絶対に避けたい。
エルフとジャイアント、その遺恨。・・・和平など到底無理だ。
だから人間とは友人として接するべき」
と大尉。



人間はもとよりウルラ大陸との敵対は絶対避けなければならない。その意見は正しいと思う。

ただ、その意見に従うが故、僕は支局のメンバーに嘘をついている。


無用な不安を避け、一丸となってコトリバコを回収するため、一部の命令書を支局員に知らせなかった。

僕達の首都、出身地でもあるフィリアの現状を故意に隠していた。



ジル・フラットランド名義で預けておいた・・・貸金庫。


偽造した代理人申請書で問題なく受け取れた。



順調に進んでいる。


中身のほとんどは祖国からの定期連絡書類。あとジルの私物が僅かに・・・フィリアの意匠が強いアクセサリやペンなど小物・・・隠しておくよう頼まれたから。

そしてフィリア製 84式短クロスボウ:潜入工作員向けに折り畳み式になっている。焼夷弾、閃光弾は半ダース、硬質弾が2ダース。




問題は・・・隠した定期連絡書の束。


独断で止めた重要書類はジルの貸金庫に紛れ込ませた。

定期連絡書に触れ憂鬱な気分になる。

とうとう嘘を告白する日が来た。
ジルはどんな目で僕を見るだろう。
残酷な事実をどう説明したらいいのだろう。


彼女は意外と激しい。罵るだろうな。しかしそれで僅かでも彼女の気持ちが鎮まるならかまわない。





続いて僕、R 名義の銀行口座も解約しておくことにする。


かなり待たされた上、口座番号を控え奥に消えた窓口担当者ではなく、蝶ネクタイを身に付けた上級職然とした初老の男が僕の名を呼んだ。


良くない予感が過ぎる。


普段と少し違う対応。


- 勘弁してくれ。

今日だけはいかなるイレギュラーも避けたい。


警戒していた僕は、先に受け渡された貸金庫を手元に引き寄せた。
折りたたまれた84式はどうする? 手に取るか? 武器と気づくだろうか。


「誠に申し訳ございませんが R 様の預金口座は凍結致しました」




今さら人間の金などどうでも良いのだ。本国から届いた命令書の束を掴む。
破棄しないと。


外へ。


振り向いた先、白く輝き、切り取られた四角い空。

3-2-3


学校は閉鎖される。
機動隊に包囲されたヴァンバール校は廃校を条件に、生徒への不干渉を求めた。



もう戻れない。もしバレたら・・・誰も私を許さない。
大切な場所を自分の手で壊してしまった。


"人間には迷惑を掛けない"


亡くなった支局長が口癖を、まさしく理解した。


自分達の犠牲や種族に降りかかる不幸しか考えていなかった。
それは一方通行ではなかったんだ。災いを払う拳が他人に当たるなんて想像していなかった。


そもそもこの作戦は必要だったのだろうか。コトリバコを手に入れられない可能性だってある。
莫大な資金を注ぎ込み、僅かな人数で異国に潜入して、みんな死んだ。その上、祖国の誰一人助けられなかったら。



作戦自体がマイナス。

国のなんだろう・・・言い訳のため?



コトリバコを無事に持ち帰る事が出来たとして、それは奴らの都市にバラ撒かれる。
確かにジャイアントは憎い。
アイツ等にたくさん殺された。一人も親族を失っていない人、私は知らない。



そう、だから忘却は生きる術なんだ。
ダンバートンの生活はそう教えてくれた。


実際正直に答えればこの土地で暮らしてる間、戦争、祖国や党、家族ですら忘れていた。

コトリバコを持ち帰れば党はビシスの都市に投下する。アイツ等が街に送り込んだ生体兵器の報復をするつもりだ。


確かに思い知らせてやることは出来るけど、たった一つの兵器で戦局は変るのだろうか?
そして、この程度で消える恨みじゃない。


それを踏まえて更に!私は恐ろしい。優勢なジャイアント達の、より過酷な逆襲を呼ぶような気がする。



このまま逃げようか。Rと一緒にずっと人間のフリをすれば。


まさか、できない。苦しんでいる人民を見捨てるなど。
そう教育されたから。




どちらをとっても・・・それは正義か、ジナイーダ。




いえコトリバコさえあれば。ヤツ等の前でデモンストレーションをすればいい。恐れおののいたジャイアントは逃げ出し、戦局は一変、私は国民を救う一翼を担い党の信頼を得る。


あはは。


百に一つも党が私の意見など聞くはず・・・そんな都合良く・・・。





火災さえ起こさなければ!

もしLを一撃で葬れれば!



戒厳なんて発令されなかった。
学校が市警に包囲される事も、皆の将来を変えてしまうことも。


そもそも。
奴が来なければ穏やかにずっと暮らせたのに。


もし。
シルバーバーチのゲートウェイさえ無ければ。


もし・・・あぁ。
戦争なんて起こらず、私が軍人でなければ。


コトリバコって一体なんなの。怨嗟の結晶と聞いた。それが呪いならすでに発効している。






3-2-4


※(2-13話の続きです)



階段に腰掛けたままストレッチして、床に寝転がる。

現実的じゃないよなあ。
やり方、変えるかぁ。


市立図書館シルバーバーチ4階の屋根を貫くクスの大木。
数年に一度、生ると言われる"赤い実"の調査。


準備のため、フルトは図書館の地下書庫に入れてもらった。


歴史書、郷土史書、紀行誌、伝記。


関連書物の概算数を出してから、分野/分類ごとに人員を割り振ろうと考えている。もちろんバイトを雇ってだ。しかし、ダンバートンの歴史に関わる書物ラックは20を超えとは。


その上、分類はずさんだった。




時間と人手を費やせば何か判るかもしれないと考えたが、多すぎる。
この書籍の山を漁り、「図書館」や「赤い実」という蜃気楼のようなキーワードで集めた情報を更に振るいに掛けるわけだ。


・・・戒厳令下、人を集める事自体、困難かつ危険。
・・・ハズレもありえる。


手間を厭っているわけではない。消費する時間が効率に見合うかどうか。

予測はしていたが。



最初は赤い実について研究した者はいるのか、そこから始めるのが妥当と。


市役所と図書館、市内にある中等以上の学校をあたったが、一日で結果が出るなら苦労はしない。が、そもそも赤い実が忘れられかけている。



-「あぁ たしか・・・」
-「ありましたね、そんな話」



少なくとも組織的に赤い実について調査したという話は確認できなかった。
これは一種のタブーなのか。
もう一度研究者の存在から当たって・・・。



螺旋階段の先、出口の扉が開きレーシ爺さんが手招きしている。


やはり手応えが欲しい。「赤い実とは何か」よりルーツから調べる方が早いな。思索する道筋の幅も広がるかもしれない。




地下1階のロビーを覗くとウチの会社の半数6名と、全く無関係なレーシ爺さんが各々寛いで朝食を取っていた。


メンバーには過去の新聞記事を洗い出すよう命じてある。


それはそうと、見過ごしそうになった・・・なんだ、こう・・・あまりに自然なレーシ爺さんの態度に。

若いのに混じって食事を、甲斐甲斐しくも他人の皿にピネガーやらハーブを勝手に振りかけてる。なんなのコノ爺は?


まぁ、どうでもいい。


皆が立ち上がり整列しようとするのを制して朝食の入ったバスケットを漁ると、隣でホスビーがコーヒーを注いでくれている。


「で、図書館の赤い実について何か分かったかよ」


あれ・・・ハムレタスチーズのクロワッサンが見当たらない。


「それがですねぇ、社長の期待といいますか考えとは・・・。どうも噂と違うというか。間違いが無いよう、二人一組で新聞を確認したんですけど」


「ダブルチェックは基本だろが。自慢してんのかボケ。それよか、オレの・・・」


クロワッサンだけ何故無い。おっ なんだよ、こっちにもバスケットあるじゃねえか。


「図書館のクスノキ、赤い実について書かれた最後の記事は意外に古いんです。15年前でした。それにサイズもサクランボ位の小さな実だったようで」


ねえな・・・。


朝食は必ずクロワッサン。ハムとレタスの組み合わせを考えた奴は天才だ。

間違いない。

ベーコンも悪くないが、挟んじゃいかんだろう。香りが強すぎる。最近は何でもかんでもベーコンだ。

否定しているわけではない。付け合せなら歓迎だが、挟むとダメだ。せっかくのバターの風味を強い脂で消してしまう。そういったセンスは簡単な足し算で理解されるハズで・・・。


飯の話は差し置いて、飯とタバコ、酒の邪魔すると俺の機嫌がどうなるか、コイツ等はよく知っているはずだが。


つまり・・・。



「おい、爺さん。アンタよお。あ、それだ。おい! 他人の朝飯! なに勝手に喰ってんだよ」


ビクッと反応した爺さんは何故かペッパーの缶を差し出す。


「ふざけんなよ、コラ。テメエ買ってこいよ。いや、いいや。まずは頭さげろ。痛い目に合いたいのか、爺さん」


レーシ爺さんは謝るどころか、手にしているクロワッサンを慌てて口に詰め込んだ。


「サングリアあるよ。桃の・・・」

「うっるせえ。朝から酒飲むアホと一緒にすんな。仕事してんだよっ」



・・・。



「で、おいっ 最後の記事が15年前だと! 見落としてるんじゃないの。そんなペースじゃないだろ。大体、お前ら爺さん見張っとけよ。赤い実も新聞もクロワッサンもお前らがトロくさいから・・・」


ホスビーがカバンから紙袋を差し出す。


「抜かりはありません、社長。ブツはこの中に。新鮮なチーズを入荷したそうで品を確認しましたら、これがまた良い具合でして。本日は独断でダブルにさせました。もちろん俺の前でチーズを削らせてます。美味そうなところを指定してです」


おう・・・。


「一応3年後、つまり12年前の新聞に赤い実が生らないって感じで、読者から投書はあったんですけどね。
2組4人でチェックしながら新聞を当たったんですよ。ミスは無いはずです。
少なくとも15年間、実は生っていない。間違いありません。


それで1組を逆方向から、ダンバートン大火の直後、60年前からさかのぼらせてみました。
60年前から40年位前まではスムーズに確認できました。
3~4年に1度、スイカ大の実が生るというのは恐らく一時期のペースだと思います。


この街の風物詩のようで、大火直後は3~4年どころか毎年、それも同じ季節の同じ頃に立派な実が生っていました。
夏が来た、といった趣旨の毎年恒例の定番記事だったようです。


つまり3年に1度というペースは20年から30年ほど昔の感覚で、なんでしょう。今まで残っていたんですかね、昔話が」



パイプ椅子に腰掛てホスビーたちが持ち帰った新聞を取る。


そこにはエッチングで描かれた"図書館の実"の姿があった。



「あと社長、もう一つ事実がわかりました。といっても噂話についてですがね。
ほら名物の図書館音楽祭があるじゃないですか。
えー、今年で47回目だよな」


もう一人のメンバー、マンデルが頷く。


「こんな話を聞いたことありませんか。クスノキの赤い実が取れた年、その実は図書館音楽祭の優勝者に送られる、と」



マンデルが話を引き継ぐ。
「自分も同じです。ここにいる6人とも赤い実がプレゼントされるって話はどこかで耳にしてるんです。しかし・・・」


「ワシはしらないよぉ。初めて聞いたな。食べるの?それ」


レーシ爺さんは話に割り込むと、マンデルのサンドイッチを一切れつまんだ。


マンデルの鼻筋が僅かに反応したのは誰もが気づいた。キレんなよお。



「爺さんはちょっと黙っててくれ。
えー、しかし、今のところそんな記事は一つも見つかっていません。それより意外なことを見つけました。
大火直後から赤い実はダンバートン侯爵に献上されたって記事です。
時期によっては複数の関連記事があります。毎年だったのか、最後の15年前も献上されたのか、そこまで確認できませんでしたが」



60年前に起きたダンバートン大火。この街はそこで一度リセットされた。原因は不明。真相は闇。最大のタブー。


その直後か。


侯爵家と貴族、今は無き騎士団の権威が失墜した時期だ。大火の後、奴らの権力と財産はことあるごとに奪い去られていった。


大火については調査すらままならないと聞く。あくまで噂だが、いたるところにトラップが仕掛けられていて、開いた扉の先には市警特高が待ち構えている、と。


そう、そもそも特別高等警察はいつから存在する? 大火後じゃないのか。
特高はダンバートン騎士団が母体という説が密かに囁かれている。




相反するが、大火の日に騎士団は全滅したという話もある。


確かにダンバートン市は騎士団を廃して久しい・・・しかし全滅ってなんだ?
騎士団の本分は機動戦だろう。火事から逃げ遅れるってどういうことだ?


大火とは比喩で物理的な何か、例えば物理的な争い?交戦状態のような・・・誰と?


"大火" の後を "戦後" と呼び、口をつぐんだ年寄りがいたな。
誰だったか・・・。イネーブラの爺さんか・・・黒沼の屋敷で、孫の入隊の日、上機嫌で珍しく酔っていた。
盛りに盛った己の半生を語り、それを口走った・・・アイツは確かに"戦後"と言った。

はは、今度調べてみよう。ヤツのカードはベルボトムが喜ぶ。特高の扉を開かない程度に。




「この街の政治が最も混乱していた時代に献上とはなあ」

「そうなんです。最近ならともかく、当時、市民の怒りの矛先は侯爵であり貴族だった。頼りの騎士団は壊滅し満足に街を出歩くことすら・・・」


「なぁなぁ、お前さんたち。勘違いしているのぉ」


「あのな、爺さん。仕事あるでしょ。サンドイッチ食べただろ。お腹いっぱいだろ。いいのか、遊んでいて」

「間違っているとは? 教えてくれるかい」



キレかけているホスビーとマンデルの肩に手をかけて、レーシ爺さんに問う。



「図書館の大木はクスノキじゃないよ。クスノキに赤い実なんて生るかいな。学の無い子達だのう」


立ち上がろうとする二人をグッと押さえ込む。


「クスノキではない?」


「あの木はカルーホーリー。現地語だとサマネア・サマン。ラノ地域が原産種だの。クスノキによく似ているが、クスノキは天井を突き破るほど大きくなるまいね」


ホスビーは首をかしげている。俺もだ。
マンデルは、あのラノ地域か・・・と言いかけて固まった。知らないだろうが、お前も。
たまりかねてホスビーが言い出した。

「ラノ地域ってどこでしたっけ。ティルコネイルとか北の辺境ですかね・・・爺さん、梨でも食うか?」




レーシ爺さんは語る。

俺たちが「新大陸」と呼ぶ、海を隔てた大地イリア。

その入り口はケルラと名付けられ、ささやかなキャンプ村が建設されているとの事。


ケルラの一帯を我々はラノと呼ぶそうだ。


だが、そのラノすらイリア大陸のほんの一部。

にわかには信じられない、気の遠くなる広大な自然。


ヒグマより大きな牛。
エンチャントホールの尖塔より高い森。
ゾウとライオン。それらを凌駕する巨大生物。
未知の地下洞窟。


エルフとジャイアント。


超金属ミスリル。
飛行要塞。

竜。



普段の爺さんはどうにも信用ならないが、俺たちは話に魅了された。

メンバーの尻を叩いて仕事に戻らなければいけないのだが、俺自身、一瞬草原の匂いを嗅ぎ砂漠の風を感じた。





王都タラに生まれた。


16の頃、たかだかバンホールまで足を伸ばし満足していた。


30も随分過ぎたオレ。


あの夏、手に入れかけた何かを取り戻せるだろうか。


より遠い世界は実在する。


新天地。


年甲斐もなく恥ずかしながら、意識は空を翔る。





エルドラドは黄金郷。


歳とは生きた年齢じゃない。


シャングリラとは桃源郷。





もし16歳のオレが、今のオレに会ったなら、そのクソガキは何て言うだろう。


やってやれないワケじゃない。だろ、フルト。


間に合う、ギリギリな。










おつかれさまです!





市民蜂起 (2) の追記しましたー。 一応・・・ 3-2-2 と。。。。


http://ameblo.jp/francescabell/theme-10047403287.html


↑ URLの後半部分です。


よろしければチェックしてください。







そろそろ人物相関図とか必要です。

ぞと組織相関図も・・・。


この物語の最強ランキング!!!


ないから、ナイナイw




次回予告


次は怪しい御方。

フルト社長から始まる・・・3話 短い夜 Ⅲです。


かも?