フランスでは、年末になると、各家庭に「カレンダーを
売る人」がやってきます。
売りに来るのは、消防隊員、郵便配達人、道の清掃員など、
公共のサービスに従事している人たちです。
これらの職業の人たちが、自分の担当している区域の
家を一軒ずつたずねまわり、
「カレンダーはいりませんか?」と、売り歩くのです。
初めて聞いたときにはびっくりしたフランスの習慣です。
また、このカレンダーには値段がなく、買う人の気持ちで
金額を決めて払う、というのにも驚きました。
そして、売り上げは、売った人がもらうそうです。
「値段が決まってないカレンダー?」
しかも、
「その売り上げは、売った人のポケットマネーに!?」
なんとも不思議なことがあるもんだな~と思ったものです。
※ 消防隊員の場合は、「いったん集めて皆で分配」もし
くは「皆でパーティーをする」場合もある等耳にしましたが、
いずれにしても、その方達の「楽しみのため」に用いられる
ようです。
普段皆のために尽くして頑張っているけれど、給料は
そんなに多くはない。そんな彼らのために、クリスマスを
祝う時期に、地域住民から「ボーナス」をプレゼントする。
そんな意味合いを持った、古くからの習慣だそうです。
そうは言われても、なんともしっくりこなかった私。
ボーナス、しかも相手から請求してくるボーナスねぇ。。。(^^;)
なーんてことを思ったものでした。
もうじき、フランスに住んで4年になります。
しかし、たまたまタイミングを外していたのか、過去三年間、
その「カレンダー売り」に遭遇したことはありませんでした。
しかし!
先日、夕方アパートに戻ってくると、一階のエントランスの
ドアに、張り紙を見つけました。
「住人の皆様へ、
○月×日の△時、カレンダーを売りに行きます。
郵便配達員」
と書いてありました。
お、これが噂の!
しかも、訪問日までお知らせしてくれるなんて…。(^^;)
ここまで丁寧に予告してもらっては、ちゃんとお金を
用意して待っておかなきゃよね~。
なんて考えつつ、でもいくら用意したらいいのか
わからなかったのでネットで調べてみると、
「5~10ユーロくらいが平均」
とあったので、ちょっと迷いましたが、今まで買ったことも
なかったので、とりあえず10ユーロ札を用意しておきました。
そしてその日、予告された時間から数分が過ぎた頃、
ベルがなりました。
出ると、若い青年が立っていて
「カレンダーはいりませんか?^^」と。
「はーい、買いますよ~」
と答えると、
「どれがいいですか?風景、花、動物、、、、」
と、何種類か見せてくれたので、子供が喜びそうな
「動物」のほうを頼みました。するとさらに、
「犬と猫はどっちがいいですか?」
と言うので、隣で私たちのやり取りを見ていた
息子に
「犬と猫、どっちがいい?」
と聞いたところ、
「あれ、もしかして、日本人ですか?!」と。
「あれ、日本語わかるんですか?」と聞くと
「はい、、、アニメが好きなので、ちょっとだけですが、
わかります^^。 ”ネコ” は知ってました」と。
アニメファン=親日家でもある。
と勝手に都合よく解釈する私は、なんだか
嬉しくなったものでした。
カレンダーをもらって10ユーロを渡すと、
とても感じのいい明るい笑顔で
"Merci madame :)" と言ってくれました。
"Au revoir, bonne soirée!"
と言ってドアを閉めた後の、あまりの気分のすがすがしさに、
なんだか色々考えたものでした。
「自分のボーナスを集めるために、自らアプローチ
してくるって、ちょっとどうなの?^^;」
当初、そんなことを思ってしまったものでしたが、
実際に買ってみたら、考えが変わりました。
その人に直接、日ごろの感謝の気持ちを形にして
与えることができる機会、素敵じゃない。
それが率直な感想でした。
「与えることは、幸せになること」
「人の幸せは、与えることによって得られる」
今までいろんな所で耳にしてきた、また目にしてきた、
そんな言葉の意味が、「ストン」と腑に落ちた出来事でした。
誰かに何かを与えて、「ありがとう」と言ってもらえる。
それって実は、自分のほうこそ、大きなものを「与えて」
もらってるんだな。なんてことを考えました。
ひとつ大事なことに気づかせてくれたフランスの
冬の風物詩、カレンダー売りに感謝です。