こちらは、50歳で若年性アルツハイマー型認知症になってしまうコロンビア大学の女性教授のお話。
認知症についての参考になれば…という思いで、気が向いて借りてきた。
でも、現役バリバリで、仕事も家庭もノリに乗っている感じの主人公が、ある日突然陥る病魔なだけに
心の動きとしては、かなりシビアで、重い。
高齢者のそれと違って、まだボケなど気にならない世代にとって、同世代の人間が、急にいろんな
ことを忘れてしまったり、動きも緩慢になったり・・・というのは、かなり「差別的な対応」をされる事
でもあるのだな・・・と、改めて感じた。
身体に障害が出ることと違って、脳から認知障害になるというのは、やはり非常にデリケートであり
本人にとっても、周りの人間にとっても、辛いものがある。
身体が動かなくなっても、自分の生き方を自分で決めて、実行する脳が保持されているのは、きっと
ありがたい事なんだろうな・・・。
主人公のアリスは、まだ、病状が軽い時期に、自ら、未来のもっと病状の進んだ自分に向けて
ビデオレターを残し、そこに、自分の命を自ら終わらせるための手段を指示しているのだけれど、
それを正しい認知で受け止められないその時期のアリスは、結局過去の本人が望んだようには
自分の人生を終わらすことさえできなかった。そこが、かなり胸の詰まる思いだった。
今、若年性ではないけれども、自分の母親も同様に認知症になり、症状も大分進んできて
しまって、すでに自分がどんな人生を歩んできたのかさえ、半分くらいは記憶から抜け落ちて
しまっている・・・。認知機能も大分落ちてきている様子で、娘の私が○○歳だから、お母さん
はいくつ?と聞いても、正しい計算が出来ないという。どうやって計算すればよいかわからなく
なっちゃって・・・と。それでも、娘や孫の事は心配しているし、自分が迷惑をかけないようにと
気を使っているのがわかり、切ない。自分が、脳に不具合があって、おかしくなってきてるんだ
な…ということも、わかっているし。
認知症って、しんどい病気だなぁ~と再確認する。
そんな、家族の事とも重ねて、あれこれ考えさせられる作品だった。