彼氏にタイに出家すると言われ、もう間も無く出国だという時期。
相変わらず大量の薬を服用していました。
専門学校とバイトで忙しすぎて、たまには息抜きしたら、とお姉ちゃんが遊びに誘ってくれたのです。
久しぶりの外出で、嬉しくてワクワクしていました。その日一日中楽しくて、あぁ、自分には楽しいっていう感情がまだ残っていたんだ、と思いました。
帰り道、久しぶりにお花でも買って帰ろうかなぁと呟くと、
そういえば、お婆ちゃんが、私がお花を買ってはあまり面倒を見ず、枯らしてばかりだから困ると言っていたよ
と何気なく教えてくれました。
しかし、私はこの時、自分の中がドス黒い感情で渦巻くのをハッキリ感じました。
健康な状態なら、はは、ごめんなーい、と笑い飛ばしてしまえるくらいの、本当に軽い会話。
それなのに、私の頭の中には、ずっと、
迷惑、迷惑、迷惑、迷惑
と負の言葉がグルグル回っていました。
気にしていないそぶりを見せ、お姉ちゃんは実家を出ているので、別々の帰路につきました。
帰り道ずっと、
私はやっぱり何をしても迷惑な存在なんだ
生きていてはいけない存在なんだ
早くこの世から消えなければいけない
ずっと「死にたい」というより、「死ななければならない」という義務感のような希死念願望に取り憑かれていました。
ふと、横を見ると川に橋が架かっています。
どう考えたって、せいぜい足を骨折するくらいのとても低い橋です。
しかし、なぜか当時の私には、暗闇のせいもあってか、とても高く、とても魅力的に見えてしまったのです。
靴を脱いで揃えて、橋の柵を越えて柵の向こうに腰掛けました。
それからしばらく、今までの人生について考えました。
私は迷惑しかかけてこなかった
生きていてはもっと迷惑がかかる
誰のことも幸せにできなかった人生だったな
きっとお葬式では誰も泣いてはくれないだろうな
友達は何人来るんだろうか
結婚してみたかったな
最後にお母さんの唐揚げ食べたかったな
人生の辛かったこと楽しかったことが走馬灯のように思い出され、本当にもう死ぬんだと思いました
さようなら。生まれてきてごめんなさい。
そう思った瞬間、後ろから声がしました。
ちょっと、あなた!!何やってるの!!!
知らないおじさんとおばさんが駆けつけてきて、私を橋の柵から無理やり引き剥がして柵の手前側に引っ張ってくれました。
こんな低い橋で飛び降りたって、せいぜい骨折るだけよ、バカなことしないの!!
あぁ、死ねなかった。
助けてもらったのにも関わらず、思いにふけっていた自分を責めたのと同時に、助けてくれる人の温もりで涙と嗚咽が止まりませんでした。
そこの鰻屋、うちの店だから!!
と、すぐそばのお店に連れていかれました。
どうしたの、何があったの、彼氏にでも振られたの?
と質問責めにされるも、相変わらず涙と嗚咽が止まらないので、ほとんど会話になりませんでした。
少しして落ち着くと、家まで送ってくれる、と車を出してくれました。
車の中で、おばさんが言いました。
いいかい、このことは、絶対、一生誰にも言っちゃいけないよ。
私ははい、とだけ返事をして、本当にありがとうございました、と御礼を言い、車が見えなくなるまで深く、深く、お辞儀をしました。