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かくれんぼ

私の物語の待避所です。
よかったら読んでいってください。

私は幼い頃から、騙されやすい質だったように思う。

 

 

テレビ番組でスプーン曲げをしていれば素直に驚いたし、とある山の山頂にある小屋にはヤマンバが住んでいるというのも信じていた。

 

 

よく言えば素直で、悪く言えば考えなしの子供だった。

 

 

あまりにもよく騙されるものだから、家族や友人から色々ないろなウソをつかれてきた。

 

 

そんな中でも、強烈に覚えていることがある。

 

 

それは、コンクリートミキサー車についてだ。

 

 

皆さんご存じの通り、コンクリートミキサー車とはいわゆる働く車の一種で、荷台に大きな回転式のタンクが付いている車である。

 

 

私が初めてこの車を見たのは確か幼稚園の年中さんの頃で、その日は家族総出で車に乗り出かけていた。

 

 

私は助手席、父は運転席、母と姉は後部座席に乗っていた。

 

 

出掛ける時は基本的にこの形なので、座席で揉めためたことはない。

 

 

この日もいつも通り助手席に乗り、車窓から見える景色をウキウキで眺めていた。

 

 

程なくして、多くの車が行きかう交差点に差し掛かり、車が一時停車した。

 

 

その時だ。

 

 

目の前をコンクリートミキサー車が横切ったのだ。

 

 

私は初めて見る車にテンションが上がり、夢中で見つめた。

 

 

一体、あのグルグルしたもののなかには何が入っているのだろうか。

 

 

今、思えば名前からして「コンクリート」以外に入っているものなどないと分かるが、当時は名前すら知らなかったので、様々なものを想像した。

 

 

そうして胸を膨らませていると、後ろに座っていた姉が私に向かって言った。

 

 

「よづ、あの中に何が入ってるか知ってる?」

 

 

私は首を横に振る。

 

 

すると、姉は満面の笑みでこう答えた。

 

 

「あのね、あの中には昆布が入っているんだよ」

 

 

一瞬、姉が何を言っているのか理解できなかった。

 

 

しかし、確かに姉は昆布が入っていると断言していた。

 

 

混乱する私を置き去りにして、さらにこう付け足した。

 

 

「昆布ってね、ワカメからできてるんだよ。だから、あの中で乾燥させて、昆布にしてるの」

 

 

意味が分からなかった。

 

 

けれど、自信満々に言う姉を見ていると、段々とそう思えてきて、ついには納得した。

 

 

馬鹿だ。

 

 

私も姉も。

 

 

このウソを私は小学校中学年ごろまで信じていた。

 

 

先日、姉にこのことを聞いたが、全く覚えていないらしい。

 

 

世の中は不条理だ。

 

 

騙した側は何も覚えていないが、騙された側は一生の記憶に残るのだから。

 

 

今でもコンクリートミキサー車を見ると、ついつい昆布を思い出してしまう。