「安いは怖い」
昼のお弁当が298円、ジーンズが880円、第三のビールは
ひと缶100円。
それどころか、とあるファーストフードでは期間限定でコーヒーが
0円だという。
究極の安値はついに底を打ってタダまで登場したのだ。
日本は今や完全にデフレ経済に入っている。
確かにこの10年間で平均所得は年間マイナス100万円と
いうから、安い商品は誰だってうれしいだろう。
昔のように安かろう、悪かろうではなく、格安商品のクオリティは比較に
ならないくらい向上している。
一消費者としてはいいものが安ければ、満足度は高い。
けれど、これが一国の経済ということになると、
話しはまた別になる。
慢性的な需要不足で、価格競争が激しくなり、物価は下落していく。
企業はてっとり早くコストを抑えるために、従業員の給料を下げ、
リストラを行う。
勤労者は同時に消費者でもあるから、みな将来が不安になって
ものがさらに売れなくなっていく。
結局のところバカ安経済は、ごく少数の勝者と無数の瀕死の企業を生む。
安いからうれしいどころか、安いから未来がなくなるのだ。
若い世代を見ていると、なにより消費に対する憧れがなくなって
いるようだ。
草食男子は女性にだけでなく、ライフスタイル全般に欲望が薄いのである。
高性能なスポーツカー、スイス製の機械式腕時計、ブランドもののスーツ。
ならべて書いてみると、なんだかどれもバカみたいだけど、
こうしたムダの見栄っ張りで、エコの時代には流行おくれの消費が
意外にも景気の牽引車なのである。
人はちょっと背伸びしたいとき、一番お金を使うものだ。
きっとみんなもあの時は失敗したという思い出があるだろう。
でも、その恥ずかしい背伸びが、ニッポン国の経済にはいい薬だったのである。
別にぼくも誰もが背伸びをして、無理やり似合わない高級品を持つ必要は
ないと思う。
でも、消費やライフスタイルにはあこがれが絶対に必要だ。
いつかあんなふうになりたい、あんな生き方をしてみたい。
そういう理想の暮らしへの憧れまで殺してしまったら、
預金額がいくら増えても幸せにはなれないと思うのだ。
この不景気で、贅沢は敵だ、昼食代も削らなければという人も
無数にいるだろう。
けれど毎日頑張って働いているのだ。
自分へのご褒美として、一点豪華主義でいいから
何か贅沢をしてみよう。
ほんの一滴の憧れが、生きる喜びとなり
経済を活性化させる。
みんなちょっとは楽しいムダ遣いをしよう。
「坂の下の湖」 石田衣良
憧れは、エネルギーの元にもなりますよね![]()
石田さんはいつもブレないところがすごいです☆