ラグビー、エディ監督から学ぶもの | サッカーのための筋トレと栄養(since 2010)

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15歳以上のサッカー選手向けトレーニング情報

ラグビー日本代表・エディ監督の本から、サッカーにも参考になりそうなポイント抽出しました

■エディー・ジョーンズ監督とは?


オーストラリア人
(1960年生、父ウェールズ系オーストラリア人、母日系アメリカ人、妻日本人)

幼少時代は人種差別を受けながらも、ラグビー選手としての活躍でそれを跳ね除けながら成長。クリケット、13人制ラグビー、15人制ラグビーなど複数スポーツを経験

「たくさんのスポーツを経験することで、いろいろな能力が身につくんだ」とエディ氏談

19歳、大学進学し弱小大学チーム(シドニー大学)でプレーするも、3ヶ月でアマチュア最強クラブ(ランドウィック)へ移籍。ポジションはフッカー(2番)。

「コーチにとって最高のコーチは優れた選手。自分の経験則を選手に当てはめるのではなく、優れた選手が何をどうやっているのかを観察し、そこから自分たちにも取り入れられるものを発見し学んでいく」

23歳、教員になる。当時プロラグビーは存在せず、豪州のインターナショナルスクールで地理・体育教師として働きながら32歳までランドウィック1軍選手としてプレー。スクールでは教頭、校長を努め、同校のホーチミン校の設立・運営にも従事。

その後のラグビー監督として経験を積むため、新興チームや英国イングランドのチームで“選手として”プレーした

36歳、プロ監督になるため教員をやめ、東海大ラグビー部の監督に就任

同年、ラグビー日本代表FWコーチ就任(監督は山本厳氏)

37歳(1997)、サントリー就任(FWコーチ)

38歳(1998)、オーストラリアのプロチーム(ACTブランビーズ)監督就任

41歳(2001)、オーストラリア代表監督就任、W杯準優勝

46歳(2006)、イングランドのプレミア・プロチーム(サラセンズ)でコーチ

47歳(2007)、オーストラリアのプロチーム(QLレッズ)で監督
   南アフリカ代表助監督就任、W杯世界一

48歳(2008)、イングランドのプレミア・プロチーム(サラセンズ)で監督

49歳(2009)、サントリーGM就任

50歳(2010)、監督の清宮克幸氏が辞任し、GM兼監督

52歳(2012)、ラグビー日本代表監督(ヘッドコーチ)就任

就任時の目標
「代表チームとしての哲学の統一化。まず世界一フィットネスの高いチームを作る。筋肉の増強を図る。世界で一番アタックの優れたチームを作る」

「最初に果たすことは、日本の勝利。日本の世界トップ10入り。日本人選手にあった日本スタイルのラグビー構築。セットプレーの改善、テクニックに優れたチーム作り。相手に“日本は何をしてくるか分からない”と思わせる」

53歳(2013)、10月に脳梗塞で緊急入院するも、無事回復

55歳(2015)、ラグビー日本代表、W杯予選にて歴史的3勝



■サッカーとのつながり


「我々が目指すのは、サッカーのバルセロナのようなゲームをラグビーで実現させることです」

バイエルン・ミュンヘン(グアルディオラ監督に会うため、バイエルンの練習場を訪れ見学し、ペップと会談)

「ラグビーとサッカーはスペースにボールを運ばねばならない点で似ている」エディー談

「ラグビーの動き方はサッカーにも非常に役立つ。ラグビーは前に進むために後ろへパスしなければならない。これはサッカーでの最高の攻撃方法と同じだ」グアルディオラ談

「あらゆる練習の要素を戦術的に特化する(タクティカルピリオダイゼーション)。ストレングス、スピードの話をしましたが、それも一部です。すべての練習を考えていくときに、もっと戦術に重点を置いてプランニングするのです。幸運にもバイエルン・ミュンヘンの練習を見学することができました。ヘッドコーチとも長時間お話しすることができました。我々の練習もさらに改善が図れるのではないかと考えています。我々の目標である、ワールドカップでベスト8になること、決勝トーナメントに進出を成し遂げたい。そのためには、選手の多大なコミットメントが必要だし、コーチ陣ももっと賢くならなくてはいけない。それができれば目標に必ず到達できると信じています」エディ談(村上晃一氏ブログより)

マンチェスター・ユナイテッド(ファーガソンと対談。チーム規律からベッカムなど中心・人気選手の扱い監督自らのハードワークスタイルを学ぶ)

ACミラン(選手の食事体調管理システムを学び、ラグビーに導入)

アーセナル(クラブハウスの美しいデザインから衛生管理体制を、ラグビーに導入)

スポルディング・リスボン(C.ロナウドを育成したチーム。4歳児の選手にも動かないコーン相手の練習はさせずに常に人間と対峙させる原則を、ラグビーに導入)

2002年W杯韓国代表監督のフース・ヒディンクの著書を読み漁る

エディ氏が、サッカー監督のようにピッチサイドから指示出し(ラグビーでは監督が観客席から無線で俯瞰的に指示を出すのが一般的)するのは、イングランドサッカーを真似たものだそう。観客席にはアシスタントコーチを置いている

サッカーのフォーメーションを観察し、ラグビーに生かす。コーチと直接話をかわし、選手と選手の連動性、ボールの継続性を高める技術、相手に対して数的優位を作るための戦術を考える

サッカー・スペイン代表(2010~2012)のパス成功率の改善データを参考に、ラグビー日本代表におけるパススキル向上の重要性を見出す

「(サッカーの)スペイン代表は平均で相手の6倍パスをします。日本ラグビーパシフィック・ネーションズ・カップで相手の3倍のパス回数でした。そのように相手を打ち破るのです。サッカーはラグビーと違うスポーツです。しかしスペインのパスを主体に動くスタイルは我々が目指すものと近い。いま日本ラグビーのパス成功率は60パーセントです。それを2015年には80パーセントにします。当然、ストレングスとスキルも重要です。これもまた3年間で大きく伸ばさなくてはなりません」エディ氏談(2012年)

「常にオプションがあり、どこにランすべきかを理解しているということが重要。サッカーのバルセロナのようなイメージ。日本の選手はこのことを身につけるのに100%適している~(中略)~ただ動くのではない。そこに判断の要素が加わる」エディ氏談(2012年)

「コーチがほとんどコンタクトのないスタイルを考えたとしても、試合でコンタクトを避けることはありえない」エディ氏談(2012年)

「最も重要なのは日本ラグビー界全体で代表チーム強化に取り組むこと。ニュージーランドでは国全体で全てのプロ選手のフィットネスを一括管理し、数値目標も明確に設定されている」エディ氏談(2012年)

女子サッカー日本代表、佐々木則夫監督にも学ぶ


ほか水泳の平井伯昌コーチ(北島康介を育成)、野球WBC原辰則監督、バレーボール女子日本代表眞鍋政義監督らからも、積極的に学びにいく

タックル強化のため、元総合格闘家の高阪剛氏をタックルコーチとして招聘、タックルポジションの改善を行う

「私は最近、フィギュアスケートのファンになりました。テレビでたくさん放送されるからです。なぜ放送されるのでしょう?日本人が勝つからです。やはり日本代表は勝たなくてはいけないのです」エディ氏談


■日本という国について


日本の教育は「正解」を旨とする傾向がある。正しい答え、正しい解き方、正しい走り方、正しい投げ方、正しいうち方。教育とはそれを教えることである、と。しかしその教育システムが「判断力」や「決断力」を遠ざけているように思える、とのこと

監督から授けられた戦術を前提にしながら、目の前で起きている現実に柔軟に対応していく状況判断力、決断力に乏しい

「ノーミス」という言葉は、悪い言葉である。試合中、ミスは必ず発生するもの。というかミスはミスですらない。事前に立てたプランどおりに全てが進むことはありえない

予想外のことが起きた後でどう行動するか、起こってしまったミスから何を学ぶかが大切。ノーミス」を意識したときの心理状態は、カチコチになって、余計にミスしやすい

しかしチームに「ミスは起きるもの」という共通認識があれば、ミスへのリカバリー、ミスへの反応の速さ、ミスで発生した新たな状況の活用法など、クリエイティブな展開が可能になる

ノーミスを意識するのではなく、サムライのように「無心(Clear Mind)」になればいい

ちなみにオーストラリアの教育現場では、生徒に対し「これが正しい」「どこが間違っている」という指摘するのではなく、「何が起きているのか」と問いかけるのが基本であるという

エディ氏のチームでは、よくミスする選手には、個人的にその試合プレーの映像をじっくり見せて「なぜこのミスが起きたのか?」、「その原因を自分でよく考えて発見させる」、「トレーナーと一緒にそれを解決するトレーニングを発案・構築・実施する」というプロセスを通じ、ミスの数を減らすとのこと



■その他のポイント、名言など

「前に進んでいくためには、一つの哲学を持たなくてはならない。それは、世界一のフィットネスです」

代表選手には「スーパーフィットネス」を求める(世界一のハードトレーニング)。ワークキャパシティが必要。良いプレーを何度も繰り返すことができる能力。世界で最もフィットネスのレベルの高い代表にする。合宿では1日3回、4回のトレーニングセッションを行う。かつてないハードな練習。

「オールブラックスのキャプテン、リッチー・マコウは、練習のドリルが終わると、次のポイントへ常にスプリントで移動する、と聞きました。最高の選手が常にそういうお手本を見せる。練習に無駄がない。日本もそうなっていかないといけない」

「プロ野球・楽天の田中将大(現NYヤンキース)は素晴らしいね。常に勝つことだけ考えている。ああいう選手が欲しいね。たくさん欲しい」


「(代表合宿は)めちゃくちゃにハードでした。人間、ここまで追い詰められるのかと」(WTB山田章仁談)

「代表の練習がきつくて自信がついた。ゲーム終了前、78分(後半38分)くらいの疲労状況を想定して実戦に近い練習をしている」(HO堀江翔太談)

「31歳になって、前よりも足が速くなりました」(SO広瀬俊朗談)

「練習より試合の方がラク」(選手談)

「スポーツの中で最もタフなラグビーで勝てば、日本のスポーツ全体を変えられるのではないか」(FB五郎丸歩談)

体が小さいことを言い訳とせず、激しいコンタクトを伴うスポーツで勝つ。それが日本スポーツ全体の自信につながるという

・日本の選手は指示の言葉を鵜呑みにする傾向がある。試合中、相手の動きに何らかの弱点パターンを見出せば、選手が監督指示から外れてその弱点を攻めれば良い

・チームラウンジにおける携帯電話の使用禁止(チーム内コミュニケーションの阻害。試合中に携帯は使えない)

「深呼吸は肩を上下させないで、お腹で。疲れてることを相手に見せないように!」
(これは格闘家・高阪氏の言葉。サッカーでも、明日から使えるテクニック!


※そのほかにエディ氏関連の資料で参考になりそうな話を見つけましたら、今後もアップデートしていきます

■参考資料

月刊フットボリスタ第27号掲載『ウォッチング・グアルディオラ』より
「前進のためのバックパス。エディー・ジョーンズとの会話」

⇒記事リンク(↑)あります

『ラグビー日本代表はタフになったのか?』(ラグビーリパブリック)2015.08
⇒代表選手名鑑つき

『ラグビー日本代表監督エディー・ジョーンズの言葉~世界で勝つための思想と戦略』(柴谷晋)2015.05
⇒ラグビーに詳しくなくとも読みやすく、大事なポイントを数多く抑えてある

『エディー・ジョーンズの監督学~日本ラグビー再建を託される理由』(大友信彦)2012.09
⇒エディー監督の人間形成に至るまでのプロセスを詳しく紹介。教員時代のエピソードもあり、学校でサッカー部の顧問をされている方にもおススメ

『ラグビーの情景~コラムインタビュー集』(藤島大)2012.08
⇒エディ氏に関するインタビュー記事箇所が参考になる

エディ・ジョーンズの日本ラグビー改造日記』(大友信彦)2015.09
⇒格闘家・高阪剛氏によるタックル解説に関するが詳しい


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