海外サッカー、フィジカル資料の翻訳③ | 【フィジカル強化】サッカーの筋トレ、ラグビーの筋トレのメニュー構築
Strength Training for Football Players
(サッカー選手のための筋力トレーニング)
http://www.brianmac.co.uk/football/strength.htm

サッカー選手にとってウェイトトレーニングが有益であることは、研究によって明らかになっている。例えばDeProftらは、ベルギーのプロ選手の1グループに対して、シーズン中に+αのウェイトトレーニングを行わせた。この結果、+αのトレーニングをしていないグループと比べて、キック力と足の力が改善された。さらに英国の研究者Thomas Reillyによって、ウェイトで強くしている選手は、ウェイトであまり強くしていない選手と比べて、チームの中で長くレギュラーで居続け、またケガの発生率も減らしていたと明らかになった。Thomasは脚の強化を推奨しており、それにより大腿四頭筋及びハムストリングス(太ももの裏)や、ヒザの関節部分を安定化させ、サッカーで最も怪我しやすい部位の故障リスクを減らせるとしている。PeterAporは、ハンガリーのプロチームを長期に渡って研究したのだが、ヒザを伸ばすときのねじりを試合での成功に結びつけ、強いハムストリングスの筋肉と大腿四頭筋を持つことは、ヒザのケガ予防に決定的に重要だと結論付けた。またサッカーでよくあるヘルニアについても、その予防には強い腹筋を持つことが重要だとした。

<筋力トレーニング>
この研究の観点から考えると、筋力と筋トレ(特に脚と体幹)は、キック力を上げてケガリスクを下げたいサッカー選手にとって、重要であると結論付けられる。基本的な筋力を向上させる場合、レッグプレス、レッグエクステンション、レッグカール、ベンチプレス、ラットプルダウン、腹筋、背筋を一通りやるのが理想的である。これはマルチジムマシンで行うことができ、それは安全で使いやすい。私の経験では、一部のプロ選手は公式練習の後、チームのジム器具を使って鍛えている。Reillyという研究者は、自主的に筋トレをする選手は、筋肉絡みのケガをするケースは最も少なかったことを発見した。それゆえ、クラブはチーム全体として基本的なウェイトトレーニングをチーム全体の練習として導入することは重要である。

<短距離走への効果>
Taianaらがフランスで行った研究によれば、10週間の脚部へのウェイトトレーニングプログラムによって、サッカー選手が10m走、30m走、垂直とびのいずれの種目でもパフォーマンスの改善が確認できた。

これらの一連の調査は、明らかに価値あるものである。しかしながら、この研究はMAX重量のアップに重きを置いたウェイトトレーニングであった。しかしこれらのトレーニングは疲労がかさみやすく、一定の回復期間を要すので、レギュラーシーズンのトレーニングには向いてはいない。

筋力トレーニングに関して、それがサッカーにおける短距離スピードに効果があるということは、研究で明らかになっている。Ekblomは、試合中の絶対的な最速スピード、優れた選手とそうでない選手を区別するうえで、重要な指標の1つであると見出した。このことはドイツのブンデスリーガー1部の選手たちを対象としたKollathとQuadeの研究が基となっている。彼らは、プロ選手はアマチュア選手と比べて10m走、20m走、30m走において、明確に速いと説明した。特に10mでのアクセル(トップスピードにいたるまでの速さ)の違いが大きかった。これにより、よい選手はトップスピードになるのが速いと考えられる。また興味深いことに、30m走においては、ドイツのプロ選手はポジションに関わらず大差はなかった。

それゆえ、サッカー選手のトレーニングの型は、トップスピードに至るまでの速さ向上を考慮したものにならなければならない。Peter Aporはサッカー選手のためのフィットネスを作るうえで、次の提案をしている。選手は短距離選手的な筋力を向上させる必要がある。私はこれで、脚部へのウェイトトレーニング(maxを上げる)によるスピードアップとトップスピード向上の効果について説明した。Taianaによれば、彼が脚部への最大筋力トレーニングを行わせた選手は、火曜日にウェイトを行えば、週末に何の問題もなくプレーできたと述べている。この週1で脚部へのウェイトを行うサイクルは、効果があった。しかしながら、このタイプのトレーニングを行うには注意が必要である。オフシーズンに週に2、3回のウェイトセッションを行えば、最大筋力向上の効果はもっと高くなるということである。それゆえTaianaは、オフシーズンは週2、3回で筋力アップ、レギュラーシーズンは週1でそれをキープするのを推奨している。

<一歩ずつ>
それとはまた別に留意しておくべきポイントとして、最大筋力を鍛えるウェイトトレーニングは、一般的な最大下運動(運動)のウェイトトレーニングから進んだものであるということである。MAX重量のウェイトトレーニングは、とても効果的である一方で、上級者向けのトレーニングでもある。Zatsiorskyは、重いウェイトをつかったトレーニングを行う場合は、十分に鍛えられた腹筋と腰の筋力が必要不可欠であり、それを備えた上で行うようにと推奨している。ゆえに、短距離スプリント的スピードを改善させるための第一ステップは、基本的なレベルの筋力を身につけることである。アメリカ人トレーナーのDintimanとRobert Wardは、アスリートならレッグプレスがMAXで、少なくとも体重の2.5倍できるのがいいと推奨している。またハムストリングスと大腿四頭筋の割合が75~80%あるといいとしている。これらの指標は、ジムの標準的なマシンで測定することができる。鍛えられた腹筋と腰周り(脊柱起立筋群)は、短距離スプリント的スピードに必要不可欠であり、このスプリント的動きを安定化させるには体幹の筋肉もまた求められるのである。

<ホップ、バウンド、ジャンプ>
プライオメトリックスもまた、脚の最大出力と短距離スピードを高めるトレーニングであるということが証明されている。McNaughtonは、サッカーでは、短く、爆発的なパワーが必要とされる競技であり、プライオメトリックスが非常に有効であると述べている。これは通常のウェイトトレーニングを補完したり、または取って代るほどのものであるという。一旦選手がそれに慣れてしまえば、プライオメトリックスはウェイトよりも手軽に、シーズン中でもスピードを上げることができるだろう。

プライオメトリックスは、ホップしたりバウンドしたりジャンプしたりするタイプの運動である。これらのエクササイズは、急激な筋肉の伸張と、強い筋肉の収縮が求められる。このため、プライオメトリックスは「リバース運動」とか「バウンド運動」と呼んだ方が、意味としてはより正確である。このトレーニングの効果はパワー(最大筋力)をアップさせるが、通常のウェイトトレーニングより速い動きになる。このリバウンド運動は、サッカーにおいて、特に短距離ダッシュのスピードやジャンプ力の強化するためのものである。片足ずつそれぞれ8回×3~5セットくらいで行うのが適切である。またセット間のインターバル休憩は、少なくとも1分以上は取るべきである。このとき大事なのは、動きの質とスピードである。

もう一つ走るスピードを上げるためのエクササイズは、走ることそのものである。これは30~60mを全力で走るものである。これも同様に、セット間のインターバルは1分以上取るべきである。なぜなら少なくともそれくらい時間を空けて休憩・集中しないと、そのトレーニングの質を保てないからである。

覚えておいて欲しい事は、これらのトレーニングの目標は、最速スピードを上げることである。この場合、持久力は特に重視したトレーニングではない。坂道を、ウェイトジャケット着用したり、負荷をかけて登ってダッシュすることもまた有益である。なぜならこれらはダッシュの動きで使う筋肉そのものに負荷を与えてるからである。

繰り返しになるが、短距離で、長めのインターバル休憩するのをおススメする。

①基礎的な筋力トレーニングは、ケガを防ぎ、キック力を向上させ、短距離走的なスピードのための基礎筋力が鍛えられる
②脚部へのMAX重量を扱う筋トレは、基本の①の基礎的筋力トレーニングからのステップアップ段階のトレーニングであり、中上級者向けである。これによりスピードとパワーが格段にアップする
③プライオメトリックスは、筋力トレーニングを補助し、またそれと同じくらいの効果がある
④短い距離での全力疾走は、負荷をかけたり(タイヤやゴムチューブ、パラシュートなどで後ろから引っ張る)かけなかったりする

ここで考えなければならないことは、どうすればこれらの効果的なトレーニングを、現在自分が行っている日々のメニューに上手く組み込み、競争に勝てるメニューを構築できるかということである。

プライオメトリックスとスプリント(短距離)トレーニングは、大抵は体の状態がフレッシュなときに行う。しかしながら、サッカーではヘトヘトに疲労したときにこそ、そのようなタイプの運動が求められるというのも事実。そのため、こういうトレーニングは、練習後にこそやった方がいい、という考えも出てくるかもしれない。この件に関して、一つの答えは技術練習(skill session)のあとに、ホップ、ジャンプ、短距離用のトレーニングを行うというやり方である。例えば、8回×3セットのスクワットジャンプ、8回×3セットの高いスキップ、8回×3セットの片足ホップ、30走×3本のつま先走り、40m×5本のダッシュが、シーズン中に週2回ペースで行なえる、短時間だが効果のあるトレーニングである。

しかしこのトレーニングのスケジューリングを考えることは、トレーニングを行うことよりも難しい。もし週末に試合だけある場合は、選手は基本的なウェイトトレーニングを月曜と水曜の午後に行い、あとは家に帰って週末の試合の疲れを取る時間を取れる。しかしもし週の半ばに固定があるならば、筋力維持のためのウェイトトレーニングは無駄になるか、もしくは軽めのものにすることになる。

選手にとって筋力を上げるためにベストのやり方は、オフシーズンにウェイトトレーニングを行うことである。週3日やるのが、フィジカルを改善するのにベストである。

一旦、プレシーズンのトレーニングが始まってしまうと選手は週2回に減らし、その後シーズン中になればやれるときに行うことができる。このやり方で、夏季に作られた筋力をキープすることができる。

最大筋力のトレーニングは、オフシーズンにのみ行うべきである。その後、シーズン中は週1回のトレーニングで筋力維持をすべきである。最大筋力は、集中して行った場合にのみ得られるものであり、そのためのトレーニングは、そのほかの重要な練習と両立するのは干渉して難しいからである。

追加練習を行うということは、選手のトレーニング状態が敏感で影響力が大きい。しかしトレーニング方法を入念に注意深く計画・選別することで、トレーニング時間を短く、しかもハイクオリティに保つことができ、別の追加練習を行うことも可能になるのである。

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ほかにも英語のサッカー向け筋力トレーニングについて書かれた資料はいろいろあるのですが、ヒマ見つけながらの翻訳なので、多少時間がかかります。コツコツ訳していきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。