※過去の話です。

 

前回の続き

 

 

私の悪い予感が的中

 

家に戻ると、

K子さんがカバンから

包丁を取り出そうと

していました。

 

K子さんは

「私はここで死ぬ!!」

と泣いていました。

 

父が一生懸命

止めていましたが、

 

引っかかれたのか、

目の横から血が出ていました。

 

Y子さんは

じっとK子さんを睨んで

微動だにしません。

 

いつもの心配性で

優しいY子さんでは

ありませんでした。

 

 

私は、

父と彼女たちを見て

すぐに状況を理解しました。

 


このままだと

誰かが刺される!!

 


とっさに

大きな声を出して

泣きながら突進し、

 

無我夢中でK子さんから

包丁を奪い取り、

家の外に飛び出しました。

 

(どういう状態で取り上げたのか、

危険はなかったのかなど、

実はよく覚えていないのですが、

 

とにかく私が包丁を取り上げて

家の外に捨てた?隠した?のは事実です)

 

 

その後、数時間、

私もその場に留まり

話し合いを続けました。

 

しかし、父は弱っていて

とにかく謝るばかり、、、

 

Y子さんとK子さんは

最後は呆れ果てて

帰っていきました。

 

 

夜に3番目の彼女である

Tのおばちゃんがうちにやってきて

私や弟妹たちをなぐさめてくれていたことを

覚えています。

 

 

結局、この争いの後、

父の心の病はひどくなり

 

さらに

別の内臓系の病気も

患ってしまい、

仕事も休職してしまいました。

 

Y子さんもK子さんも

痩せて老け込み

魅力のなくなった父から

さっさと離れていきました。

 

 

それから数年後、

父は自宅で倒れ、

そのまま亡くなりました。


私は既に結婚して

遠方に住んでいたため

父の死に目には会えませんでした。

 

 

そんな父のお葬式にきてくれたのは

Tのおばちゃんだけでした。

 

過去の彼女たちは

お線香の一つもあげにこない。

まあ、当たり前だけど。

 

あれだけ父の取り合いを

していたのになあ…

 

彼女なんて

所詮そんなものなんだ…


と悟った二十代の私でした。

 

 

 

(父の恋人シリーズ 終わり)