皆さん、新年あけましておめでとうございます。
お久しぶりですねぇ!
M2のYAWです。2026年林研究室初ブログいただきましたよぉ!
今回は、11月に開催した雑誌会の報告を行います。
紹介する論文は、こちらになります。
「ちぎれにくいのに、勝手に治る」ポリウレタンエラストマーは作れるのか?
ポリウレタンエラストマーの材料研究界隈では、昔から大きなジレンマがあります。
それは――
「材料を強くすると、自己修復しにくくなる」
「自己修復させると、強度が落ちる」
「強くて、しなやかで、しかも常温で勝手に治る」
そんな都合の良い材料を作成するのは、非常に困難とされています。
今回紹介する論文は、巧みな分子設計でこのジレンマを解消する研究です。
カギは「タンニン酸」と「ハイパーブランチ構造」
研究者たちが目を付けたのが、**タンニン酸(Tannic Acid, TA)**という天然由来の分子です。
タンニン酸は、
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フェノール性OH基を大量に持つ
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芳香環を多く含む剛直な分子
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水素結合を作りやすい
という、ポリウレタン改質において“おいしい特徴”を複数持つ分子です。
このタンニン酸を、
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分岐点(ブランチング剤)
として使い、ハイパーブランチ型ポリウレタンを合成しました。
なぜちぎれにくくなるのか? ―― 水素結合の“階層構造”
この材料の機械的強度が高い理由は、とても面白いポイントです。
タンニン酸由来のフェノールと、ウレタン結合・ウレア結合が組み合わさることで、
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弱い水素結合
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中くらいの水素結合
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非常に強い水素結合
が同時に存在する「階層的水素結合ネットワーク」が形成されます。
この構造のおかげで、
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弱い結合 → 伸びるときに切れてエネルギーを逃がす
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強い結合 → 構造全体をがっちり支える
という役割分担が生まれ、自己修復材料としては異例の高強度を達成しています。
それでも「常温で自己修復」できる理由
普通なら、ここまで強いと分子は動きません。
しかしこの材料は、室温・無刺激で100%自己修復します。
その秘密は3つあります。
① ハイパーブランチ構造
水素結合ネットワークの向上(再構築可能な水素結合数の増大)
② 動的な水素結合
切れても、時間が経つと自然に組み直される
③ ジスルフィド結合(S–S結合)
壊れても再結合できる「化学的な自己修復スイッチ」
これらが協調して働くことで、
切れて → 動いて → くっついて → 元通り
という流れが、何もしなくても進行します。
実は「超強力接着剤」にもなる
さらに驚きなのが、接着性能です。
タンニン酸に含まれるカテコール/ピロガロール構造は、金属や樹脂表面と非常に相性が良く、
接着剤としても異常に高性能な結果を示しています。
しかも、
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加熱すれば剥がせる
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再接着できる
という「可逆接着」まで可能です。
まとめ:この研究のすごいところ
この論文は、ポリウレタンエラストマーの
「強度・自己修復・接着性を、全部“分子構造設計”で両立させた」
という点が非常に優れている部分だと感じました。
P.S. 卒業までには、破損器具の報告を行うので、これが最後のブログにはならない予定です。
