このブログは弁護士&FP(お金の専門家)で,がんとうつ,高齢化問題に興味があるFPBが書いています。
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追記1:意外と一般の方からの反響があってびっくりしております。
追記2:たいへん意義のあるコメントがなされていますので,どうぞ本文の後コメントもご覧ください。
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この記事は,私が書いたニュースレターをそのまま転載しています。

なので,画像がなく,文章だけの見た目が超平板な記事ですのでご了承ください。



鬼ごっこをしていて怪我をした場合の幼稚園・保育園の責任

□事例 


 Aちゃんと同じクラスの友達が幼稚園内遊戯実で鬼ごっこをして遊んでいました。
 
 おにから逃げていたAちやんの前に,Bちゃんがいました。
 
 そこで,AちゃんはBちゃんに「背負って」と頼みました。

 Bちゃんは,Aちゃんを背負って走り出そうとしました。
 
 しかし,そのとたん,Bちゃんは,Aちゃんを背負ったまま前のめりに転倒し,骨折してしまいました。

      加害者A 6歳 男児
      被害者B 6歳 女児
      事故現場 私立幼稚園の遊戯室


本事例では,幼稚園は,怪我をした園児の親から,法的には次のような責任追及を受ける可能性があります。

園児Aの監督者としての不法行為責任(民法714条)
  
 このほかに,法律上は保育契約に伴う身体安全への配慮義務を怠ったとして債務不履行責任(民法415条)も追求される可能性があります。
 
 しかし,どちらの責任についても,園児Aの行為が違法・有責なものであるか,幼稚園はAの監督者として適切な監督をしていたかが問題となります。
 
 そのため,検討する事実は共通で,①の責任があれば②も認められるし,②が認められれば①も認められるという関係にあります。
 
 そこで,以下では,民法714条の監督責任についてのみ述べます。

1 民法714条の監督者責任とは


民法第709条(不法行為による損害賠償)
 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法第712条 (責任能力) 
 未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。

民法第714条 (責任無能力者の監督義務者等の責任) 
1項 712条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合においてその責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。 │
 ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2項 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。



(1)わざと又は不注意によって自らの行為によって他人に損害をあたえた場合,不法行為責任として損害賠償義務を負います(民法709条)。

(2)しかし,自らの行為によってどのような責任が発生するか理解判断する能力のない小さな子供は,他人に損害を与えた場合,責任能力がないものとして損害賠償義務を負いません(民法712条)。

(3)民法712条によって,子供が賠償義務を負わない場合,その子供の監督義務者が代わりに賠償責任を負います(民法714条1項)。この監督義務者は,親であったり,幼稚園であったり,事案によって異なります。実際にその子供を監督すべきであったといえる者が監督義務者とされます。

 714条2項は,監督者が幼稚園である場合に,園長や教諭など幼稚園という組織にかわって具体的に園児を監督する人と考えてもらっていいです。 

2 幼稚園・保育園の責任の考え方

 本事例で,幼稚園・保育園に責任が認めらる場合次のように検討します。


 (1)Aの行為が不法行為となる
     ↓
 (2)Aは責任能力無し
     ↓
 (3)Aを監督する幼稚園は監督者として責任を負う。


 そこで,(1)から(3)を検討していきましょう。

 3 責任無能力者の行為 (2)の問題

 民法709条は,「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は,その損害を賠償する責任を負う」としています。

 しかし,他方で,民法712条は,未成年者で,自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは,賠償責任を負わないものとされています

 この「自己の行為の責任を弁識するに足りる能力」のことを「責任能力」といいます。

 「責任能力」が認められるかどうかは,その行為者の知能発育の程度・環境・地位・身分などを具体的に考慮して,個々の事案に応じて判断されるものです。

そのため,「○歳であれば認められる」というように断定できないものです。

 ただ,過去の裁判例を参照しますとおおよそ11歳前後の児童には,自分の行為の是非を判断する能力があるとして責任能力が認められています

他方,6歳の子どもに責任能力を認めた事例はありません。

このような裁判例から考えますと,本設例のAちゃんには責任能力は認められません。

4 不法行為の成立 (1)の問題 

(1)責任無能力者である園児の行為につき監督者が責任を負うのは,園児(責任無能力者)の行為が不法行為(民法709条)の要件を満たす場合です。
  
本事例では,AちゃんがBちゃんに背負ってもらった行為に不法行為の成立要件の一つである違法性が認められるかが問題となります。

(2)例えば,緊急避難を考えてみるとわかりますが,やむを得ず他人様に損害を与えてしまう場合というのがあります。

 また,消防隊員が消火のため家を破壊するということがあるように,職業上,他人の財産に損害を与える場合があります。

さらにボクシングのように、スポーツなどで相手にけがをさせる場合があります。

 これらの場合に一律に損害賠償義務を負わせるのは不当です。

 そこで,不法行為では,「違法性」という要件が必要とされているのです。

(3)この点,遊戯に関して裁判例を見ますと,社会の倫理概念ないし条理(社会通念)によって認められる行為は違法性を欠くものと解されています。
 
 つまり条理(社会通念)上認められる遊びは,その遊びをしたこと自体で違法と評価されることはないということです。
   
 例えば,ガスバーナーを使った火炎放射遊び,などというものがあれば,それは社会通念上,遊戯として認められないでしょう。

 これに対して、鬼ごっこ、相撲などは条理によって認められるものといえましょう。

(4)本事例においては,AちゃんとBちゃんが行っていた鬼ごっこという遊戯は,それ自体をみると特別に危険な遊びとはいえません。

 ですから,条理(社会通念)上認められるものということができます。

 Aちゃんの行為には違法性がなく,不法行為の成立要件を満たさないと考えられます。
 
 そこで,不法行為の要件が満たされることを前提とする幼稚園の責任も認められません。

5 責任無能力者の監督義務者の責任 
 
(1)上記のとおり,本事例では,そもそも園児Aに不法行為が成立しないため,幼稚園は責任を負わないと考えられます。

(2)しかし,仮に本事例と異なって,危険な遊びであったなどとして園児の行為に「違法性」が認められた場合においては,不法行為成立→園児に責任能力なし→監督義務者の責任が問題,というふうになります。

 そこで,ここでは,どの範囲で幼稚園や担当教諭,園長の責任が認められるか検討しておきましょう
 
(3)幼稚園が監督義務者である場合,担当教諭や園長は,「監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者」として,損害賠償責任を負うとされていることから(民714条2項),この監督義務の範囲が問題となります。

 この点について,和歌山地裁昭和48年8月10日判決という裁判例がありますので,これをみます。
 この判決は,保育園の園長の監督義務の範囲につき,次の様に述べています。
 
「地位,権限,義務等に照し,当該行為を全く予期しえない等の特別な事情がないかぎり保育園における保育およびこれに随伴する生活関係におよぶものというべきであるから,右生活関係について監督義務を怠らなかったことを立証しないかぎり,責任を免れないと解される。」

「この点は,小学校あるいは中学校において,学校教育活動およびこれと密接不離の関係にある生活関係に限定される監督義務の範囲とは,広狭自ら異るといわなければならない。」(これは,小学校,中学校より責任が広い事を示唆しております)

このように,保育園長の監督義務の範囲をかなり広い範囲で認めています。 

 本事例では,Aちゃんの行為に違法性が認められないため,幼稚園側の代理監督者責任も認められませんが,違法性が認められるような事案においては,幼稚園の担当教諭や園長の責任が認められる可能性があります。

 つまり,子供が条理に反する危険な遊びをしていた場合,それを阻止しえなかった場合には,幼稚園側が,危険な遊びを適切に注意・指導・監視・監督していたことを立証しない限り,まず監督者としての責任が認められるでしょう。

 現実には,園児同士の遊戯中の事故は,その予想が困難な場合も多く,完全に防ぐことが難しいのが現状ですが,監督者の責任は広範に認められるということです。

 子ども同士の通常の遊戯による事故については施設側が賠償責任を負うリスクは低いですが,子どもの行為が危険なものとして違法性が認められた場合には監督責任が広く認められるといえます。

 そこで,担当教諭としてはできる限り子どもたちの状況によく目を配り,危険な遊戯行為に及んでいた場合には,指導し,中止させることが後のトラブル防止のためには重要でしょう。

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