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遺言文例などをみると,よく「○○に遺産○○を相続させる」という文言と,「○○に遺産○○を遺贈する」という文言を見かけると思います。これらの文例は「相続させる」と「遺贈する」とを区別していることになります。さて,この二つを区別するのはなぜでしょうか。
現在の遺言の実務上,例えば「長男Aには甲土地を、二男Bには乙土地を相続させる。」という遺言を「相続させる旨の遺言」と呼んで,これは原則として,遺言に関する908条に定める遺産分割方法の指定を指す文言であるとされているのです。
この遺産分割方法の指定とは何なのか?まず遺産分割から説明していきます。
 遺産分割とは,相続財産(遺産)が共同相続人の共有となっている場合に、これを各相続人の相続分に応じて具体的に分割して、個々の財産を各相続人の単独財産とすることをいいます。
例えば,長男A,二男B,長女Cの三人が相続人で,自宅,投資マンション,現金3000万が遺産としてあったとしましょう。
この場合,民法が定める法定相続分によると,ABCの三名は,遺産を1/3の割合で共有することになります。ですから,自宅,投資マンションについて,A,B,Cはそれぞれ1/3ずつの割合で共有し,現金については,三分割して,各1000万円をもらうことになります。
現金はいいとしても,不動産を共有でもつと処分がしにくくなり面倒です。そこで,遺産分割をして,自宅はAに,投資マンションはBに,現金3000万円はCにそれぞれ相続させるというように,共有状態を解消し,遺産を具体的に分けてそれぞれに帰属させるのです。
この遺産分割は,遺言がなければ,共同相続人全員で協議して決めます。もし協議が定まらない場合は,家庭裁判所に決定してもらいます。
なお,自宅を長男と二男の共有にするというように,一つの財産を共有する分割ももちろん有効です。
さて,遺産分割はこのようなものでした。遺産分割方法の指定は,この遺産分割を予め被相続人が遺言で決めてしまう場合をいいます。
例えば,先の例で,長女は自宅で同居しているから自宅は長女にわたし,投資マンションと現金1000万円を長男に,残り現金2000万円を二男に相続させる,というように予め具体的に指定してしまうのです。そうすると,遺産は遺言で指定されたとおり分割されるのが原則となります(これを変更するには全員の協議での合意が必要)。
 実は,「相続させる」という文言の遺言がされたとき、この遺言文言は、遺産分割方法の指定をしたものか、遺贈と解釈するのか裁判例や学説に見解の相違がありました。しかし、最高裁判所平成3年4月19日判決(裁判長の名を取って香川判決とも呼びます)で、原則として遺産分割方法の指定と解釈するべきであるとの判断を出したので,現在の実務はこれに従っています。
この判決の要旨は次のとおりです。 
 ①特定の遺産を特定の相続人に相続させる趣旨の遺言は、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか、又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り、当該遺産を当該相続人をして単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたものであること。
②この遺言があった場合には、特段の事情がない限り、何らの行為を要しないで、当該遺産は被相続人の死亡の時に直ちに当該相続人に承継されること。
 この判断により実務的に次のことが導かれます。
 ・この遺言があれば、相続人は遺産分割協議や家庭裁判所の遺産分割審判を経ないで、指定された遺産を確定的に取得できる(これを変更するには当該相続人をふくめた共同相続人全員の同意が必要)。
・次に,重要なのは,不動産移転登記の登録免許税率が,遺贈の場合1000分の20(2%)であるが,相続であれば1000分の4(0.4%)であるため,相続させる旨の遺言により不動産を取得した者は,相続として1000分の4の登録免許税率を利用することができるのです。
・そして,登記実務を司る法務省は「相続登記」である場合,不動産を単独承継したことを示す書面を添付して登記申請する相続人は,他の共同相続人と無関係に単独名義の相続登記をすることができるとしているため,この判決によれば,遺言書の遺産分割方法の指定は不動産の単独承継を示すので,単独登記ができることになるのです。遺贈の場合,他の相続人全員か遺言執行者との共同登記が必要。
※相続させる旨の文言は,分割方法の指定ですから,これによって遺産をもらう人は共同相続であることが前提です。共同相続人でない者の対し,遺産を渡すには遺贈するか生前に死因贈与契約をしておく必要があります。
※相続させる旨の文言は,解釈問題ですので将来最高裁の判断が変更されるかもしれません。ですから,明確に遺産分割方法を次の様に指定する,と記載する方がいいと思っています。
※民法908条 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。


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