裁判で相手の意に反しても離婚を認めてもらうためには,民法770条1項が定める離婚原因が必要です。
これはその最初です。
1 民法770条1項1号の「不貞行為」概説
① 配偶者の「不貞行為」は,民法770条1項1号により,離婚原因とされています。
離婚原因は,それが裁判所に認められれば,裁判所は判決で離婚を命ずることになります。
従って,裁判所が,「不貞行為」があると認定すれば,原則として離婚が認められます。
不貞行為の内容は,下記で詳しく説明しますが,簡単に言えば浮気のことです。
② 770条1項1号が定められた趣旨・理由
婚姻は夫婦の生活共同体であり,その一面としての性的共同体でもあります。
一夫一婦制のもと夫婦は相互に貞操義務を負っており,それに違反することは,夫婦間の信頼関係, 協力関係を破壊し,婚姻の破綻につながります。
つまり,『不貞行為』の存在は,『婚姻の破綻』の徴表(あかし)とみられます。
そこで,婚姻が破綻していれば離婚を認めるという破綻主義の見地から,民法上離婚原因とされました。
2 不貞行為の内容
『不貞行為』とは,夫婦の貞操義務に忠実でない一切の行動をいいます。不貞行為は,いわゆる姦通より広い概念であると解するのが一般的見解です。姦通とは一般的に,配偶者のある者、特に妻が、配偶者以外の異性とひそかに肉体関係をもつことと説明されます(広辞苑)。いわゆる浮気(性的関係にある浮気)です。姦通という言葉は,昔は,法律に規定されていた言葉で,昭和23年改正前の旧民法規定では,妻について姦通したこと,夫については姦通罪によって刑に処されることが離婚原因として規定されていました。現行法はこのような男女不平等な取扱いを改めて,姦通罪等は削除され,民法においても,従来あった離婚事由の「姦通」という用語を使わず,あえて「不貞行為」という用語を使用しました。このことからすれば,新民法は,姦通の代わりに不貞行為を規定したのだから,姦通という概念とは異なり,上記のように概念を広く解釈することは,文理的のみならず,歴史的にみても,理由があるといえましょう。
しかし一方で,このように広く解することは解釈の幅を広げ,概念があいまいになるおそれがあります。そこで,むしろ「不貞行為」の内容は姦通に限ると解すべきであるとする見解も有力に主張されており, 最高裁も,770条1項1号の不貞行為とは「配偶者ある者が,自由な意思にもとづいて,配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」をいうと述べております(最判昭48・11・15)ので,後者の考えに近いといえますが,下級審全てが実際本当にこのように限定するのか判断は難しいところです。
ただ,このように,不貞行為を,狭く介しても,姦通として不貞行為とまではいえない行為でも,770条1項5号に該当するとして,離婚が認められることがありますので,この概念を狭く考えてもあまり問題はすくないといえます。また,慰謝料請求する際の不貞行為は770条1項1号の不貞行為より広い概念であると思われます。