生命保険に限らず,一般的に保険制度を定義すると次のようにいえます。
 保険制度は,一般的には,多くの者が,金銭を出し合って蓄積しておき,一定の偶発的な事故を被った者に一定の給付を行う制度である。

 皆さんがすぐに想像される典型的な生命保険もこのようなものではないでしょうか。
 つまり,一家の大黒柱である夫が死亡した場合に,残された妻子の生活を保障するために,生命保険に入る。           
 また,自動車事故に備える自賠責やいわゆる任意保険と呼ばれる自動車保険は,万が一事故を起こした場合に,被害者に対して支払う,ときには億となる多額の損害賠償支払義務に備えて自動車保険に入る,というものです。

 このように,保険制度は,多くの保険加入者から集めた保険料を蓄積しておいて,万が一生じる偶発的な事故によって多額の金銭的支出の必要性が出た場合に,その保険事故にあった人に蓄積した保険料を使って支払ってあげるという制度です。このように,多くの保険加入者から保険料を集めることで,万が一生じる多額の支出に備えることが出来る。これにより,通常は個人ひとりでは負担できない多額の支出に耐えられる。このようなメリットを保険加入者全員が受けられる。これが保険制度の典型的なメリット・効用ですね。

 保険制度がどのようにして成り立っているか,保険料のことも合わせて見ましょう(なお,単純化するために数字は適当です。)
 仮に,40歳台の男性の死亡率が1000人あたり1人だったとします※。
 そして仮に,40歳台の人の遺族に必要な金額が4000万円だとします。
 一般の人で,40歳台に4000万円を貯蓄しておくことは非常に難しいですね。一家の大黒柱を失った遺族は大変です。
 しかし,保険制度を作っておけばこうなります。
 1000人の加入者がいれば,ひとり4万の掛け金を集めておく。そうすると,4万円×1000人で4000万円貯まる。そうして,保険加入者からでる死亡者(の遺族)に対して,集めておいた4000万円を支払う。こうすることで,みんな4万円という少額の掛け金で,4000万円の保障(安心)を得られる。もちろん,死ななければ保険金はもらえませんが,入らなければ保障を受けられる可能性は0で,安い掛け金で安心を買っているのですからいいのです。
 ところで,集めた保険金4000万円はただただ保管しているだけ,なんて状態にはしません。普通は運用します。銀行に預けて利子をもらうという運用でも,株式でも何でもいいのですが運用します。
 仮に年5%運用出来るとします。5%で運用して1年後に4000万円にするには,38,095,238円あれば足ります。そうだとすれば,1000人から集める保険料は,38,095,238円÷1000人=38,095円です。
 こうして,年5%の運用益を見込む場合,保険料は38,095円になります。
 1000人の加入者は,年間38,095円の保険料で4000万円の保障を買うのです。これが保険の保障機能です。

 これが,典型的な保険と保険料の仕組みです。
 さて,貯蓄は三角,保険は四角という言葉があります。次の図を見てください。次の図は,1000万円を貯蓄した場合と保険で保障を買う場合の図です。

FPB(FPベンゴシ)-貯金は三角保険は四角
 貯蓄は,少しずつ貯めていくので時間軸を横に取り,積立額を縦軸に取ると,徐々に積み立てられるので三角になるのです。
 これに対して,保険は,加入したときからすぐ保障が保険契約で決めた保障がすぐに得ら,時間に関係なく,期間中ずっと同じ保証が続くので四角になります。
 このように保険はすぐに必要額を得られるので,期間中の万が一のリスクに対する有効な備えとなるのです。
 
 以上が私が典型的と考える保険の仕組みです。
 この典型的な保険の仕組みでできあがっている生命保険商品は,「定期保険」と呼ばれています。
 定期保険は,一定期間中,掛け捨ての保険料を払って,一定額の保障を得られる保険商品です。
 上記の図の右図のように,10年間,月額1328円の掛け捨て掛け金で,1000万円の保障を得る,というような保険です。
 
 さて,定期保険は,期間がくれば終了します。掛け金は掛け捨てですから,お金は戻ってきません。
 しかし,しつこいですが,典型的な保険商品である定期保険は,「万が一に備えて,安心を低価格で購入するもの」ですから,これでいいのです。掛け捨てはもったいないというのは,警備会社に警備をしてもらって何も起きなかった後で,何も起きなかったから警備は無だったからお金を返してくれとか,検査入院して何も悪くなかったら検査は無駄だったから費用を返してくれ,というのと同じくらい図々しいことです(なお,この警備会社のたとえは,後田亨氏「生命保険の「罠」 (講談社+α新書)」


 保険と貯蓄は全く異なるものであると考える。
 さて,死亡保険で,終身保険という保険というのがあります。
 これは,定期保険と異なり,保険期間が終身,つまり一生涯です。
 この終身保険は,定期保険と保険としての性質がよっと異なると思います。終身保険ということは,死ぬまで保障ということです。保険加入者は全員いつかは死ぬわけですから,時期はずれますが,いつかは加入者全員に保険金が支払われることになります。この加入者全員に保険金が必ず支払われるという点が,定期保険と異なる点です。いつ死ぬか分からないので,一応偶発的な事故に備えるという性質は維持していると思いますが,しかし時期が分からないだけで必ず保険事故*(=死亡のこと)が生じるということが違います。
 定期保険は,死ななかったら保険金が支払われず,保険料は掛け捨てです。終身保険は必ず保険金がもらえます。つまり掛け捨てになりません。では,終身保険の保険料はどうやって決まるのか。定期保険は,先ほどの例ですと,1000人のうち,1人だけが保険金がもらえて,のこり999人はもらえない仕組みになっています。だから,低額な保険料で高額な保険金を保障できるのです。しかし,終身保険は,全員保険金もらえるのですから,結局自分の保険金を自分の掛け金で用意しなければならないのです。
 前述の,単純化した例で説明すると,仮に1000人の加入者がいて,保険金を4000万円とすると,1000人全員が4000万円をもらえるので,最終的には40,000,000,000円(400億)必要なはずなのです。このため,自分の保険金は自分の掛け金の積み立てでまかなうことになります。そうすると,保険金4000万円もらうためには,4000万円の掛け金を支払う必要がある。しかし,実際そんな掛け金を支払えないので,保険金の額を低額にせざるを得ない。実際に終身保険商品の保険金は100万とか500万円とか,定額保険の保険金と比べて低額です。
 結局,終身保険は,わたしが云うところの典型的保険ではなないと思うんです。むしろ貯蓄商品です。そうすると,終身保険は,貯蓄として,合理的か,という判断で購入を検討するべきはずなのです。ちなみに,先ほど紹介した後田氏は先の本や生命保険のウラ側 (朝日新書)
で保険に貯蓄性を求めるのは不合理として定期保険を勧めています。

 ※平成20年厚生労働省簡易生命表では,40歳台の人の死亡率は,1000人あたり,男性1.34人,女性0.73人です
 *保険事故=保険契約において,死亡,病気など,保険金(及び保険給付金)の支払いが約束された出来事。                               

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