試算結果に基づく離婚準備へ:2025年税法改正により所得税・住民税・社会保険の壁は今後こう変わる!
※はじめに本ブログの情報は、2025年6月末時点のものですので、ご注意ください。
103万の壁、小一の壁、ベルリンの壁など有名な壁は、多くあります。今回は、税・社会保険が創った壁と呼ばれるものを解説します。はじめに各壁のおさらいを致します。次に2025年の税法改正のポイントを示し、新たに生まれ変わる壁をご紹介いたします。更に壁の基準値ごとに法改正後の値で試算を行い、最後に自立へ向けた離婚準備のポイントをお伝えします。これにより離婚で悩む貴方が、各壁を知ることで、新たな生活へ向けた第1歩を踏み出すための準備を確実に進めることができます。
では、早速見ていきましょう。
(目次)
1 現行の壁(各種)おさらい
2 2025年税法改正点のまとめ
所得税 基礎控除
所得税・住民税 給与所得控除
所得税・住民税 人的控除の認定額
所得税・住民税 配偶者特別控除の設定(変更)
所得税・住民税 特定扶養親族控除の設定(変更)
3 変更後の新たな壁
4 試算結果;ケース例でみる変更後の所得税・住民税・社会保険料の考察
5 結びに(今回の一連の税制改正を踏まえ自立へ向けたアドバイス)
1 おさらい現行の壁と呼ばれるもの
税と社会保険の壁は、ご存じかもしれませんが、(100,103、106、130、150,180,201.6)と7つも実はあります。一つずつ見ていきましょう。
一 100万の壁とは、給与所得者が年収100万を超えた場合、住民税の課税対象となるラインのこと。
二A 103万の壁とは、給与所得者が年収103万を超えた場合、所得税の課税対象となるラインのこと。
二B 103万の壁のもう一つの意味は、配偶者控除や扶養控除の対象となる給与収入のラインを意味するもの。
三 106万の壁とは、従業員51人以上の事業所で週20時間以上勤務している非正規雇用の方が年収106万を超えた場合、自分で社会保険に加入しなければならなくなるラインのこと。
四 130万の壁とは、106万の壁以外でも同様に、働く企業の規模に関わらず、非正規雇用の方が年収130万を超えた場合、自分で社会保険に加入しなければならなくなるラインのこと。
五 150万の壁とは、非正規雇用の配偶者の年収が150万を超えると、扶養者(一般的に夫)の所得から控除できる配偶者特別控除の額(38万)が段階的に減り始める税制上のラインのこと。
六 180万の壁とは、106・130万の壁以外でも同様に非正規雇用の60歳以上の高齢者又は障害を有する方が年収180万を超えた場合、自分で社会保険に加入しなければならなくなるラインのこと。
七 201.6万の壁とは、非正規雇用の配偶者の年収が201.6万を超えると、配偶者特別控除が扶養者(一般的に夫)の所得から控除できなくなる税制上のラインのこと。
今の内容を図に表すと次の通りです。
・緑色棒グラフ=住民税
・オレンジ色棒グラフ=社会保険
・青色棒グラフ=所得税・住民税
税法改正は、数多にのぼりますが、離婚で悩む皆様に主に影響が出そうな5つに絞り、解説していきます。
1 ≪所得税≫ 基礎控除額 (大幅な拡充)
基礎控除とは、税額計算するための課税標準額を算出する際、原則として全ての納税義務者が無条件で適用できる控除のこと。
現行)合計所得金額が2400万以下は一律 48万
改正後)合計所得金額が2400万以下は、48万~95万に細分化
所得132万以下(給与年収200万以下) 95万
所得132万超~336万以下(給与年収200~475万) 88万 (2年間限定)
所得336万超~489万以下(給与年収475~665万) 68万 (2年間限定)
所得489万超~655万以下(給与年収665~850万) 63万 (2年間限定)
所得655万超~2,350万以下 58万
※注意※2年後年間所得132万~2,350万の方は、所得税においては58万の基礎控除額となる。
2 ≪所得税・住民税≫ 給与所得控除額 (拡充)
自営やフリーランスの方は、収入から経費を差し引き、税金計算を行いますが、会社員などサラリーマンの方は、そのようなことができません。そこで、国が給与所得者について給与収入から一定額を差し引き、税額計算することとしています。これを給与所得控除と言います。
現行)最低保証額55万
改正後)最低保証額65万
給与収入162.5万以下:55万 → 65万
給与収入162.5万超~180万以下(給与収入額×40%-10万円)→ 65万
給与収入180万超~190万以下:(給与収入額×30%+8万円)→ 65万
3 ≪所得税・住民税≫ 人的控除の認定額変更 (拡充)
税金を計算する際、個人的な必要経費として各種控除を認めています。人的控除は、特に納税者の個人的な事情を考慮して所得から差し引かれるものであり、税金の負担を軽減する役割を果たします。そして、控除には当然認められるには要件があります。その一部が今回改正されています。
具体には、対象者の所得要件が10万円ずつ引き上げられています。
現行)各種 48万以下
改正後)各種 58万以下
障害者、寡婦、ひとり親、配偶者、扶養控除 48万 → 58万以下
勤労学生控除 75万 → 85万以下
4 ≪所得税・住民税≫ 配偶者特別控除の設定変更 (範囲縮小)
上記3の改正(配偶者控除)に伴い、一部縮小となりました。ただ、令和7年8月1日時点で国から詳細な表の提示がありません。詳しく記述できませんが、概要としては、対象となる人の合計所得金額が「48万超133万以下」 → 「58万超133万以下」となります。
5 ≪所得税・住民税≫ 特定扶養親族控除の見直し (拡充と新設)
納税者が16歳以上の扶養親族を有する場合に、納税者の個人的な事情を考慮して所得から差し引くことが認められている人的控除の一つです。
現行)一律 63万
改正後)対象者の所得要件を10万円引き上げ(48万 → 58万以下)としつつ、子の年間所得額に応じ、新たに「特定扶養親族特別控除」を設け、細分化設定。仕組み的には、上記4の配偶者特別控除と同様。
所得58万以下(給与年収123万以下) 63万円
所得58万超~85万以下(給与年収123~150万) 63万
所得85万超~90万以下(給与年収150~155万) 61万
所得90万超~95万以下(給与年収155~160万) 51万
所得95万超~100万以下(給与年収160~165万) 41万
所得100万超~105万以下(給与年収165~170万) 31万
所得105万超~110万以下(給与年収170~175万) 21万
所得110万超~115万以下(給与年収175~180万) 11万
所得115万超~120万以下(給与年収180~185万) 6万
所得120万超~123万以下(給与年収185~188万) 3万
ではいよいよ本題に入ります。今回の税法改正の影響により、一部壁の基準額に変更が生じています。上記1で解説した壁の順にお伝えします。
よって、新しい壁は106万、110(←100)万、123(←103)万、130万、160(←150&103)万、180万、201.6万の7種です。
今回の税法改正により、一番有名な103万の壁は123万と160万の壁に生まれ変わりました。また、結果として一番低い壁は住民税の100万の壁から社会保険の106万の壁へ推移しています。
イメージ図は次の通りです。
改正後
給与収入106、110、123,130、160、180、201、201超万の方が、2025年の税法改正によりいくらの税金・社会保険料・年金保険料がかかってくるのか試算いたしました。
試算にあたり条件を次の通り設定しています。
≪試算仮定条件≫
・夫婦二人(妻は、パートで離婚に悩んでいる)
・妻は、40歳未満で介護保険第2号非該当
・社会保険料と厚生年金保険料は、協会けんぽ大阪の令和7年度表を適用し、算出
・配偶者特別控除額は、2025年税法改正前を適用(現時点で詳細不明な点があるため)
・本人(=妻を想定)は、大企業の事業所勤務(収入106万超で社会保険等加入)。賞与無し待遇を想定。
・税額計算において基礎控除と社会保険料控除のみ適用
・2025年1月から12月末まで働くことを前提に試算。社会保険料等は現実と違い、1月から令和7年度の額の天引きを実施としています。
結果は下の表で示しています。
【FPからの図表の解説とポイント】
1 給与収入106万以下であっても、2025年税法改正前と違い住民税と所得税が発生しなくなった。
2 給与収入106万超から130万以下のゾーンは利益率が低いので、避けた方が良い。
(以下理由)
・図表給与収入110万は、106万から4万の増だが、それ以上に社会保険と年金保険料が引かれるので、106万の方がお得。
・給与収入123万以下も同様。更に住民税が課せられ、106万から17万収入として増だが、194,580円支出が生じるので、106万の方がお得。
・給与収入130万以下も同様。106万から24万収入として増だが、211,864円支出が生じるので、実質3万程度しか手取りが増えない。
3 配偶者控除・配偶者特別控除の満額適用の範囲は、給与収入160万まで拡がった。
4 給与収入160万超となると、所得税が新たに賦課されるが、社会保険と年金保険料が高額のため、以下の式を満たす限り所得税非課税が続く。
(給与収入ー給与所得控除=)所得 ー (基礎控除95万+社会保険料額+年金保険料額)<=0 ならば所得税非課税
今回の改正は税に限定されています。
今一度まとめを記します。
(変更無し)
・106・130・180万の社会保険の扶養の壁は変わらない
(税制とはそもそも別制度の為、変更無し)
・住民税の基礎控除額は変わらない(地方収入が大幅に減少するため改正に至らず)
(変更有り)
・基礎控除額の大幅な変更(所得税のみ)
・基礎控除の見直しにより人的控除の認定額の変更(所得税)
・基礎控除の見直しは無いが、所得税同様、人的控除の認定額の変更(住民税)
・特定扶養親族控除額の変更・新設(所得税・住民税)
以上を踏まえ、現時点での離婚を見据えたお金と生活力の準備をする場合、FPからのアドバイスは、ズバリ!
夫婦間に子どもがいない場合は、
第1位 いざというときに離婚可能とするためにも、パートでなく正社員となりガッツリ稼ぐ
第2位 配偶者(特別)控除の満額適用の範囲内である「年間給与収入160万以下」で離婚準備金を貯める。
第3位 社会保険料が掛からない範囲の「年間給与収入106万以下」で離婚準備金を貯める。
となります。今一度試算表を確認したうえで、今後の準備を進めるか、今のプランを見直してください。
なお、今回の税法改正を踏まえ、社会保険の基準の見直しが引き続きなされています。
これが現実のものとなれば、また壁も変わってくるでしょう。それらの情報を正確につかみながら、離婚準備を怠りなく進める必要があります。困ったとき、悩んだときは専門家にお聞きしましょう。何も1人で悩み、抱え込む必要はありません。
自分の話を友達の相談として周りや専門家に持っていくのも手の一つです。
いかがでしたか?
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
お力になれれば、幸いです。
なお、今回も「離婚マネーアドバイザーFP.Daiki」のX(旧Twitter)(リンク有)の補足です。
月に一度は、お金の勉強に関する情報を更新予定です。
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【執筆者】離婚マネーアドバイザーFP.Daiki
・AFP
・社会保険労務士有資格者
・年金アドバイザー2級
・離婚カウンセラー
産後クライシスを乗り切れず、離婚。離婚を機に「同じ苦しみを味わう人を救いたい」という思いで再起。
現在は、家計診断・勉強会・個別サポートでお客様の離婚×お金の問題を二人三脚で解決しています。