木曜日の日経新聞ですが、「投信で損失 個人の半数」という見出しの記事がありました。主旨としては、金融庁が今年3月末時点の運用損益を調べたら、46%の顧客が運用損を抱えていたとのことです。と、ここまでは調査に基づく事実。この後、記者の主観が入った内容が続きます。

 

「ここ数年は緩和マネーの流入で世界的に株価が堅調に推移する。本来なら個人が高い収益を得ていいはず」

と断言していますが、本当にそうでしょうか?

 

例えば、米国株式で運用する投資信託、当然ながら為替リスクがあります(ヘッジなしと仮定)。「ここ数年」に該当する2015年、米ドル/円は一時125円台でしたが、2016年10月には101円台をつけています。現在はおよそ110円、つまり、125円台の時に前述の投信で運用を始めた人は、大半が現在運用損を抱えているはずなのです。為替の影響を無視した新聞記事の前提は成り立ちませんキョロキョロ

 

そしてこの後の記述では、お決まりの毎月分配型や短期売買への批判。ステレオタイプにもほどがありますね。論点がずれています。


この金融庁調査では、「3月末時点」という調査時期に着目すべきなのです。3月末は金融機関にとって期末月かつ年度末。大半の金融機関が投資商品の販売、残高増強に力を注いでいたはずです。

 

その結果どうなるか。一部のノーロード商品などを除き、投信は販売時に数%の手数料を取られます。金融庁調査は手数料などを加味した「トータルリターン」で損益を算出していますから、例えば3月中に新規で投信を購入した顧客は、3月末時点ではまだ手数料を取り戻せるほどの運用益を得ていなくて当たり前です。

 

「損失率が10%以下の個人が全体の35%と最も多かった」 (同記事より)

 

というのも、上記理由を鑑みれば当然のことでしょう。

 

経済専門紙でありながら、結論ありきで記事を書いてしまうとこうなります。「過度な分配金や短期の売買あだ」、との中見出しもありましたが、これは原因の一部であって、全部ではありません。一部を切り出しているだけの、いわば恣意的な内容になってしまっていますね。投信のアセットクラスは様々ですから、その影響を加味するべきですし、金融機関が3月に集中して販売しようとする姿勢も問題にしていかなくてはいけません。

 

と、まあ批評はこのくらいにして、先ほどの「トータルリターン」は金融の課目での頻出項目ですので、おさらいしておきましょうねニコニコ