今回はさまざまなコミュニティ活動を通して、人と社会に貢献するコミュニティカフェ「かがみの杜 okatte」を主宰する、平林佳子さんにお話をうかがいました。
知人の紹介で平林佳子さんの夫の平林寛さんにお会いする機会があり、そこで一緒にお会いしたのが佳子さんでした。お話をうかがうと、人と社会を幸せにするための興味深い活動をいろいろされているとのこと。個人事業主やフリーランスというのではないのですが、ぜひ、ゆっくりお話しをお伺いたいと思い、インタビューさせていただきました。お会いしたのは、ご自宅と併設のコミュニティカフェ「かがみの杜 okatte」です。
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佐々木: 今日はよろしくお願いします。平林さんはいろいろな活動をされていると思うのですが、お仕事は何をされているんですか。
平林佳子さん(以下「平林佳」敬称略): ライスワークは会社の事務をしていますが、ライフワークは、地球新時代の多世代コミュニティづくりで、大森と八ヶ岳の2拠点生活をしながら、コミュニティカフェの運営、ワークショップなど体験や学びの場を創ったり、社会貢献的な活動をしています。
今年始めたのは、NPO法人チルドリンが行っている「小さな暮らしの共同体」という活動です。チルドリンは10年くらい前から、主に企業から支援を受けて2000人とか5000人とかが集まる子育てママ支援のイベントなどを各地で行ってきた団体なのですが、このコロナで実際に集まる活動ができなくなってしまったのです。
それで2021年1月からは、日本各地でそれぞれの地域ごとに8人から10人くらいの規模の小さなコミュニティ「SDGsを暮らしの中に取り入れながら繋がっていく活動」を始めたのです。
「SDGs」って、生活のすべてが関係していますよね。そこで子育て中のママたちがSDGsを中心に、自分たちのペースで無理なくゆるやかに仲間や地域・社会との関わりを持ち、子育て時期をもっと「楽しみ・学び・安心して過ごせる場」をつくるための活動をするようになったのです。
もともとチルドリンは全国にネットワークがあるので、全国の小さなコミュニティがつながっていくことで影響力のあるグループになっていって、女性の声を社会に反映していきやすくなるのではとの考えもあります。ナチュリンメイトに登録することで「新月の会」「満月の会」と呼ばれる場を作ることができるのです。1ヶ所目が大阪で、私たち大森(東京都大田区)が2番目に立ち上がりました。
「小さな暮らしの共同体」に参加することで今までしてきた活動の発信力をあげることができるし、同じ方向を目指して活動している他の方々とも繋がっていきたいと思ったのです。
佐々木: 「小さな暮らしの共同体」にエントリーすると、どんな活動ができるのですか。
平林佳: 無料でLINEに登録して情報をもらうことは誰でもできますが、有料のナチュリンメイトにエントリーすると、「新月の会」とか「満月の会」というのを開くことができ、その告知等をチルドリンのサイトですることができるようになるのです。
「ナチュリン 新月の会」はプチ勉強会です。子どもたちは学校でSDGsの話を聞いたり学ぶ機会がありますよね。仕事をしているママやパパたちは、仕事を通していろいろな情報や知識を得るチャンスがあるのですが、一番情報が入りにくかったり遅くなってしまうのが子育て中のママになりがちだから、そんなママたちに情報や知識を届けたいというのがスタートです。「暮らしの中のSDGs」のテーマで毎回学びの時間を作り、チルドリンで作成してくれた資料を基にそのテーマで話し合ったりしています。
「満月の会」は内容は各地で自由です。大森では、自分を調整するための活動の場と意識していて、マッサージとかカード系のイベントとか機械を使った調整とか癒しなどを行ったり、自分の状況や方向性の確認など、自己メンテナンスできる機会にしています。
それぞれのエリアで、自分たちの個性を出して活動が始まってきていて、これからオンラインサロンも始まる予定です。
佐々木: とっても大切な活動ですね。話は変わりますが、そもそも平林さんは何でコミュニティ活動をするようになったのですか。
平林佳: もともと私は地元の大田区育ちで、幼いころは父方の祖父母と同居していました。その祖父母が町会の活動を熱心にやっていたので、私にとって「地域」は身近な存在だったのです。
それが大人になるにしたがって、「地域」という呼び名はあっても、だんだんとそのつながりが希薄になってきていると感じていたのです。そんな時、1999年に大田区長期基本計画審議会の委員をさせて頂いて、そこで市民活動をされている人たちと出会い、大きなきっかけになりました。
初めてそういう世界に触れて。それで地域を知る機会になって、世の中は協働の方向に変わってきているのを感じ始めて、それから市民活動もするようになりました。その流れで、「大田文化の森 運営協議会」の第1期の運営委員で事務局長として採用していただきました。
運営協議会は、「大田文化の森」で何をするかを企画して実行するのですが、区は助成金は出しても、何をするか、会議のやり方から何からを全部自分たちで決める、という活動でした。運営協議会の最初の仕事には建物の名前を決めることもありました。「大田文化の森」はそこで開かれる催しの企画、立案、サポート、運営などを「文化プレーヤー」とよばれるボランティアが行う仕組みも作り、多くの区民が活動できるようにしました。
私が最初に企画をした講座は「まちづくりコーディネーター養成講座」というもので、その参加者の中から「NPO法人大森まちづくりカフェ」という団体が立ち上がり、今も地域情報誌を作っています。その頃に「大森まちづくり通信 2005年冬号」にインタビューしていただいた記事がインターネットにも掲載されているので、よろしかったら見てください。
http://www.oomori-cafe.com/papers/vol003/003-04-07.jpg
平林佳: 当時、私はホリスティックな健康観で人を扱う自然療法やホメオパシーとかバッチフラワーにも興味があって学んでたのです。そういうのはご存知ですか?
佐々木: あまりよくわかりません。
平林佳: ホリスティックな健康観では、従来の西洋医学のみにとらわれることなく「人間とは何か」「健康とは何か」を様々な角度から全体的にアプローチしようとする、 人間まるごとの癒しを考えていくものなのです。私はこれからは家庭でそういうのをもっと使えるようになったら健康に役立つ思って地域でもやっていきたかったのですが、当時はまだちょっと早すぎて、なかなか公の場での受け入れが難しかったです。メンタルケアにしても、今は一般的なことですが、当時はカウンセリングとかヒーリングっていうと「怪しい…」って思われるような時代でした。
佐々木: それは何年くらい前ですか。15年くらい前?
平林佳: もっと前ですね、20年くらい。公的な組織や私が関わっていたNPO法人ではそういった企画をするのにハードルがものすごく高く、もっと自由にしがらみがないところでやりたいと思っていました。
それに、たくさん企画をやっても、打ち上げ花火になりがちで。お祭り的なイベントをやるとたくさん人が集まります。でも企画が終わると、サーっと人がいなくなってしまうみたいな。
講習会をやっても、講習に参加するだけでみんな帰ってしまうので、参加者同士の交流も生まれづらく、地域って、そこに住んではいるんだけれど、なかなかつながりが生まれない。どうやったらつながりができるのか、暮らしに根差したものができるのかを模索してきて、そこで「やることを決めずにフリーに多世代で過ごせる安心安全な場が必要だ」と思って作ったのが「多世代お茶処」で、子どもやママたちが集まってちょっとお茶飲んで話す会をやってみたんです。でも、これもちょっと早かったみたいでした。
佐々木: 今だったら、たくさんありますよね。先見の明があるんですね。
平林佳: 「大田文化の森」でもいろいろやり、そこの委員経験者たちが、これで終わってしまうのはもったいないし、ここでできなかったこともしていこう、という想いから、「NPO法人 文化活動支援機構 フォレスト」を立ち上げ、私も理事をさせて頂いています。
ここでも、「胎内記憶」の専門家の池川明先生の講演会や映画の上映会をやったりとか、イベントをいろいろやりましたが、気軽によれる場所を作りたいという思いはずっと持っていました。
そもそも、私も夫も大田区の出身なので、田舎がないのです。なので、災害が起こったときに食品を入手するルートを作っておきたい。食の安全を考えて無農薬の野菜を買いたいけれど、当時はとても高かったし、だれが作っているかも知らない。だったら無農薬で野菜を作っている農家さんから直接送ってもらって、ここでワークショップをしながら、その食材で作ったご飯を食べたりとか、野菜を購入したりして、そういう農家さんとの継続したかかわりを作っていこうと思い、「ままごとや」というワークショップを始めました。梅仕事、味噌づくり、塩麹作りなどもやりました。
佐々木: 今はすごく流行っていますけどね。
平林佳: そうなんですよね。最近は6月になるとあちこちで梅仕事されていますよね。「ままごとや」は2年くらいやり、ちょっとまたやり方を変えてみようかなと思ったときに生まれたのがコミュニティカフェでした。
その時には農家さんとのルートができていたので、無農薬のお米やお野菜を送ってもらって、それで作る旬のご飯を食べて、あとは私と一緒にやっている友達と、ここでモノづくりしてもいいし、おしゃべりしてもいいし、そんなところから始めたのです。食品衛生責任者の資格を取って、週1回自宅にコミュニティカフェ「かがみの杜 okatte」を開いたのです。
あと、その頃は「ママ寺子屋」という子ども向けの活動をやっていて、地域の人に講師に入ってもらい、読み書き、工作したり、お料理したり、大学生のお兄さんに来てもらってゲームをやってもらったりしていました。これも、子どもたちが小学生になってそれぞれが忙しくなってきて、活動が変わってきましたが、楽しい思い出になっています。どうやって地域の人と関わりながら、多世代、異年齢で活動できるかをずっと模索してきている感じです。
地域で活動をしていると、麻雀の卓をくださる人がいて健康麻雀をやってみたりとか、今はコロナでお休みになってしまいましたが、月1回大人の習字の会をやったりとか、コロナの時は家にあったガーゼ等を持ち寄ってマスク作りとか、ご飯食べたり何かすることで、ここの場が情報交換の場になっているのです。
一人暮らしのご年配の方は、ここに来ると普段聞けない新しく刺激のある話が聞けるとか、若い人とお話しできるとか、自分だけのお料理だと偏ってしまうけれど、ここでは旬の野菜を使った料理が食べられるとか、そういうのですごく喜んで来てくださる方もいます。
また、子どもたちにも声をかけてくださったりして、そういった少しすこしの小さな積み重ねが、地域というかコミュニティにつながっています。
佐々木: 何年くらいここでやっているんですか?
平林佳: 4年くらい。平成29年からコミュニティカフェを始めて、その頃は義理の母がここに住んでいて、私たちがここに住むようになったのが去年からなので、さらに本格化したのはそれからです。
そこまでの下積みがいろいろあって、ようやくここまできた感じです。タイミングもあったと思います。今までって「個」が便利だった時代でしたけど、最近はSNSを見ていても「コミュニティ」っていう言葉をよく目にするようになりました。「やっと時代が来たー」っていう感じです。
それと私たちがずっと気になっていたのが「水」なんです。今ここは水道水じゃないですか。井戸水が出る所とご縁が欲しいと思っていたら、ちょうど八ヶ岳で井戸を掘れるところと3年前にご縁がありました。
東京って自然に触れる機会って少ないし、電磁波のことを考えても、時々自然の中に行ってアーシング(裸足になって直接大地に触れること)したりとか、子どもの気持ちを整えるとかをできるとこが必要だとも思っていていたので、大森と八ヶ岳の2拠点で暮らしていくことを決めました。
私は西馬込に実家があるのですが、祖父の代まで農家をやっていたので、家庭菜園の畑が自宅の横に300坪位あり、柿、桃、栗、柚子、サクランボ、イチジク、びわ等の果樹や樹木があり、野菜や草もあり、虫もいる所を、毎日祖父について一緒に回っていました。それが、私の子ってほぼ何もないのです。土の上を歩く環境もほぼないです。
だからあえて自然の中にいられる場所をつくる、万一震災があった時にもそういう場所が必要なんじゃないかという思いもあったり。実際そういう場を作ってみると、うちだけじゃなくて都会の子どもたちが安全に遊べて自然を感じて過ごせる空間になるのではと思うようになりました。
ちょうど去年は、夫の仕事仲間の一級建築士の方にご協力頂いて、ログハウスのキットを購入して作りました。それって子どもにとっていい経験になるじゃないですか、普段、トンカチ一つ使う機会があまりないわけですから。屋根の上に登って子どもたちが釘を打ったりとか、みんなでやるとできるという体験になりました。
佐々木: 家を自分で建てるなんて、普通出来ないですもんね。
平林寛さん(以下、敬称略): 基礎をつくるための穴を掘るっていうところからやったんですよ。僕のYouTube「地球の達人 平林 寛」でも紹介しているんで、見てみてください。
平林佳: まずは伸び放題の草をどけます。そこに穴を掘り、砂利を引き、土台を作り、基礎をつくり、この時もワークショップにしたので、何人か参加してくれて、みんなで木材を組み上げて。
佐々木: これって、何日くらいでできるものなんですか?
平林佳: 1週間くらい、、、
佐々木: え、1週間でできるんですか
平林寛: 基礎は事前に2日間位でやって、次の週に1週間で組み上げました。それくらい頑張ってやらないと、建築士さんもお仕事があるから、帰っちゃう前にやらないと、、、。
平林佳: 実際に、やってみると大変さもよくわかりました。工務店さんてすごいなって思いました。
でもこの時にはウッドデッキの屋根まではできなかったから、冬までにそこまではやらなくちゃって、秋に何度か行って屋根をつけました。
佐々木: 焚火もいいですね。
平林佳:火の揺らぎを見るのって大事だと思うのです。都会では花火をするのもなかなかできなくなっていますが、何度もしていると子どもたちが火おこしや火の番をできるようになってきました。
ウッドデッキの屋根が出来上がり、こけら落としでクリスタルボウルの演奏会をしてもらったり、お隣の方がサバイバルゲームの練習をやらせてくれたり、ドローンを持っている人がドローンを子どもたちにやらせてくれたりとか、こういう「場」があることで体験できることが広がってきました。
今まで活動してきて、私の役割があるとすれば「場」を作ることのようです。八ヶ岳もその一つで。昨年は、場を作って、そこにどんなコミュニティが作れるのかということを学びたくて、コミュニティ作りの勉強にも行きました。ガイアエデュケーションっていうのをご存知ですか?
佐々木: いえ、存じ上げないです。
平林佳: 国際的なプログラムなんですけど、日本では鈴鹿の方で約半年間、月1回2泊3日くらいで開催され、海外との交流もしながらやっているプログラムなのです。そこに参加して、私が行き着いたのが、ここだったらこうしなきゃいけないとか、東京と地方の二拠点だったらこうしなきゃいけないとか、そういった決まりとかはなく、結局、自分や自分たちが心地よいと思えるものを作っていくのがいいのでは、ということでした。
これからは同じような暮らし方を目指している人たちがゆるく関わっていくのが、私が作りたいものに近いと思いました。多世代とか、子どもたちが育つ環境があったり。
人は、それぞれ得意なものが違うから。だから八ヶ岳も、うちは場を提供できる、建築士さんはそのスキルをもって一緒につくってくれる。専門家がいると素人だけではできないこともできるし、大人たちが作業をしているのを子どもたちが見たり時々参加しながら自然の中で過ごすことが生きた学びの場、これからの「学校」の一つの形でもあるかもしれないと感じています。
佐々木: 無理してでも、目標達成するためにやるぞというのではなくて。
平林佳: ビジネスとかならそういうことも必要な時もあると思うのですが、「暮らし」なので日常にどうできるかが大事かと思っています。うちのコミュニティカフェも「okatte」で。昔、私が祖父母と住んでいるときには、みんな「お勝手(台所)」にごちゃごちゃといたのです。そんな普段着で来れるような場所、みたいなイメージがあります。
子どもって、かしこまって何かを教えてもらったというのではなくても、人と話している中で、ああそうなんだって思ったり、わからないことを聞いたりして、学んでいくじゃないですか。誰々さんがこう言ってたとか、これはおもしろそうだとか。でも今は「お稽古」になるのが多く、何かを教えてもらうために行くみたいな。そうじゃない「暮らしの場」の中で学べるような場をゆるやかに作りたいなと、色々試している最中です。
佐々木: 平林さんのお子様は幸せですね、ご自宅にいろんな人がいらしてくれて、いろんなことをやってくれて、刺激ももらえるでしょうし。家を建てる経験もできたりね。
平林佳: そうですね、彼らにとってはそれが日常だから、あとでそうだったよねって気づくのはもっと後だと思いますけど。でも、最近、頼もしいと思うことがありました。子ども同士で「僕はキャンピングカーを作ってあちこち行く」「ぼくはここにドームハウスを作る」とか子ども同士で話しているのです。
大人たちが「みんなで創る」のを何度も見たり体験しているから、望んだものを作れる、というベースができているようです。
今、周りで起こっているキーワードは「大地の再生」なんです。「人が自然に関わることで環境が良くなっていく」方法を学び、暮らしに取り入れていこうと実践している方々と繋がりが増えてきました。単に楽しい趣味とかではなくて、私たちはどうやって暮らしたいのかというのを作りだしているのです。
移住された方もいれば、二拠点の方もいるし、いずれ土地を購入したいという方や、都市部で応用したいという方々もいらっしゃいます。
ヴィレッジを作りたいという方々ともご縁ができてきて、それぞれのフィールドは違っても心強さがあります。これからのコミュニティは小さいほうが動きやすく、方向性に共感する人たちがお互いお手伝いに入ったり協力し合って新しい暮らし方を作り出しているような感じがしています。
うちの場の役割っていうのは、普段着で来れるところと「出会いの場、繋ぎの場」の役割ときっかけ作りというのもあるようです。
以前、マンションを借りてヒーリングサロンをやっていたこともあるのですが、ここのような普通のおうちでも子育てしながらでも活動できるんだったら、なんか私もやってみようかなと、ご自身の活動を始められた方が何人もいらっしゃるのです。
平林佳: うちはまだ子どもの手がかかりますからね。今末っ子が小学校1年ですから、その子が中学生になるくらいまでは、自分の役割も見えてきたし、ここの場での交流も楽しんでいきたいと思っています。
一緒にやってくれている友人は、とっても保守的なのです。だから最初の頃は私が何か始めたっていうと、「何か変なことしている」って思っていたと思うのですけど、だんだんと「あ、佳子のところで聞いていたことを、周りでも言い出してる」とか、世の中もそうなってきて、ここに来ると、新しい情報が知れたり、いろんな人に会えるということが最近浸透してきたように感じています。
佐々木: 「継続は力なり」ですね。
平林佳: ようやくですね。今は「依存ではなく、自立した人同士のゆるやかなコミュニティ」っていうのが大切になってきています。
もう一つのキーワードは「子ども」です。うちに子どもがいるからというのもありますが、いろんな意味で「次の時代にどうつなげていくか」っていうのが、私の中ではとても大事なことです。「多世代の人たちに来てほしい」というのも、子どもたちにもそれを見せたい、経験してほしいからっていうのもあります。
例えば一般的な習い事に行くと学年で別れるじゃないですか。でもここでは、理科の先生に来ていただいて理科実験教室をやるのですが、そこは異年齢が一緒に参加できるのです。うちの子も3人一緒にできし、ほかの方も兄弟で参加してもらえる。
佐々木: そうすると、子どもどうして年上の子が年下の子を助けたりとかもできますよね。
平林佳: お兄ちゃんたちがしているのを下の子がみたりとか。あと子どもたちが赤ちゃんの頃から来てくれている書道の先生、披講の先生、理科の先生とかも、何年間も一緒に関わってくださっていると子どもの成長も感じてくれるし。子どもたちも、どんな時も受け入れてくれている大人がいることへの安心感、信頼感が自分たちのベースにしっかり培われているようです。
一言では言えないのですけれど、「次の時代の暮らし方」には、子どもたちに繋げていくことを意識しながら、子どもたちにいつもの学校とは違ったリアルな体験の場を、いろんな方々に関わってもらいながら、作るようにしています。
これを言うと長女には怒られるのですけれど、本人が望むのだったら結婚して、子どもを産める身体をどう作っていくかは、私が親がとしてしなければいけないことだと思っています。最近不妊も多いじゃないですか。それの原因として、食べ物や冷え、ストレスとかも言われています。そしてその治療のために、膨大なエネルギーを使うわけじゃないですか。そうならないために、何ができるだろうと考えます。
人生の後半になってきて、老後の暮らし方も考えるようになってきました。お一人の方だってサポートや協力してくれる仲間がいれば安心して暮らしやすいのではと思います。以前NPOで地域の高齢者の方の介護のことも取り上げたのですが、いろんな充実したサービスがあってお金があれば解決できることも多いけれども、普段からちゃんとした関わりができていれば、気持ちで助け合うこともたくさんあるように思います。
「子どもたちに繋げていきたいこと」って、お金には換算しづらいこともあります。モノのやり取りはお金払ってやればいいことだけど、心の部分は難しいけれど作っていかなければならない時代なんじゃないかと思って。
佐々木: 最近国がやることを見ていても、何かというと「自己責任だ」って突き放すことが多いですし、高齢者のコロナのワクチンの予約でも、まだご家族がいれば代わりにスマホでできるけれど、スマホのない一人暮らしの方なんて、予約する術がないわけですよね、電話してもつながらないから。学生さんたちがお手伝いしますってやっていても、そのことすら知らないわけですよ。
平林佳: 情報弱者ですよね。そしてまたどんどん仕組みも変わるわけじゃないですか。ガラ携がなくなるとか、スマホだっていつまでこの形かわからないですよね。Windows10がまた変わると聞くと、私だって「ようやく使い方がわかってきたのに」って思うし、子どもたちも学校にタブレットが入ってきて、時代の変化を感じますが、高齢者の方々は変化についていくのがより大変だと思います。
私が20年くらい前に損保の代理店をしていたころから2025年問題(西暦2025年以降、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、我が国が超高齢化社会になること)のことを聞いていて、当時ははるかかなたの話だと思っていたのですが、もうすぐじゃないですか。
佐々木: もう4年後ですね。
平林佳: 高齢者を支えるための若者の負担は増えるし、医療費の自己負担額割合も上がる計画があるとか、子どもたちがどれだけ背負うことになるのだろうと思ってしまいます。
そんなご時世だからこそ、同じような方向性を目指している人が集まりやすい場を作って、緩やかなコミュニティを作り、複数のコミュニティに関わっていたりすることがセーフティネットになるのではと思っています。
佐々木: コミュニティカフェの開催は、何曜日の何時と決まっているんですか?
平林佳: 水曜日です。コロナ前は11時~16時でやっていたんですけれど、コロナ禍になってからは緊急事態宣言等の状況にもより、不定期に13時~15時で、お茶しながら情報交換する場にしています。
去年の緊急事態宣言の時にいったん4月から8月くらいまでは、まったく休みにしたのです。それまで毎週1回やっていたから、お休みにした当初はすごい解放感ですよね、毎週水曜日はすごく忙しかったけど楽になったって。でも8月にはたと気が付いたのですが、私しょっちゅう買い物に行くようになったんですね。それまではカフェやっているから、自宅で購入する分も考えて少し多めに野菜を農家さんからとっていたので買い物もそんなに行く必要がなかったのです。
それから、カフェにいつも来てくれる人がお惣菜の差し入れを作ってきてくれたり、個人だけなら見落としているような地域の情報交換もしていたのに、カフェをやらないと何にもなくなるんです。結局コミュニティカフェやって、なんだかんだって一番享受していたのはうちだったと気が付いたのです。
コミュニティカフェをしていると忙しいけれど自分発信で色んな循環が起こせていて、カフェをしていないと、購買活動しかできていないとなりがちな自分の状況がわかり、意識を変えて再開したくなりました。
一時は、自分がしてきたコミュニティの作り方に行き詰まりを感じ、どうしたら継続してできるかとか、どうしたらコミュニティが作れるか学びたくなりました。しかし、誰かがやっている方法は参考になったり気づきはあっても、その方のやり方であり、その方が作りたいコミュニティで、結局、自分が作りたいものを作っていると、その人自身が楽しんでいるからそこに合った人が集まっている、と感じたのです。
私は自分で実践してきている時に、自分の心地いい規模、やり方を模索して創り続けてきたので、私に合った人とのつながりや、本心で話し合える家族も仲間たちもいて。「青い鳥はここにいた」と思えたのでした。
そして、私は、自分が作ってきた場にもっと感謝して意識を変えて9月から再開しようと決めました。そうしたら、その月に「小さな暮らしの共同体」構想に出会ったのです。
佐々木: そういうタイミングが合うことってあるんですよね。
平林佳: 「小さな暮らしの共同体」の理事長とは10年以上前から私も夫も知っていたのですが、一緒に活動する機会はなかったのです。それが、私がカフェを再開しようと思ったときに、たまたま理事長のFacebookの書き込みが流れてきて、「今までの活動をリセットして、小さな共同体の活動を始めていきます」とあったものですから、お話ししてみたくなり連絡したのです。それで、その構想を聞いて、方向性に共感し、2月に活動をスタートしました。
これからは暮らし方自体が変わってくる時代ですよね。そして制度も変わってくる。今まで安心や保障としてあったものがなくなる時代。水道だってそうですよね、民営化されてきているし。コロナもそうですし、どうなっていくかわからないっていう時に、変えることを決めた人が少しずつでも暮らし方を変えていかなければならないところにきていると思うのです。
都会は便利ですし、地元だし、そして子どもたちは今の学校が好きなので、東京に比重を置きながら、2拠点生活するのが今はいいと決めましたが、次世代に何をどうつなげていくか日々模索しながら生活しています。
私もファイナンシャルプランニングを学んだことがあって、CFPまで取得したのです。それで学んだのは、いろんな分野の情報から何が一番いいライフプランかというのを総合的に判断していくということでした。今やっていることに、その学びは繋がっていて、色々な情報の必要な所を選び取って、自分たちに合ったライフスタイルを何年がかりかで作る過程にあります。
今は、このコミュニティカフェがいいけれど、この先変わってくるかもしれない。まだ自分の子どもを教育しなきゃっていうのがあるし、それが安心な老後の近道でもあると思って(笑)。
ナチュリンの活動では、今度、親子で「八百万の神カード」のワークショップというのをやるのですが、日本の神様カードというとちょっと癒し系というかスピリチュアル系っぽい感じがしませんか。でもそれを「親子のコミュニケーション」で活用できると考えていているのです。
イギリスの歴史学者アーノルド・J・トインビー氏が「12・13歳までに民族の神話を学ばなかった民族は必ず滅びる!」 と言われていたのを知り、日本の神様のことを子どもたちに伝えていこうという思いがあり、古事記の話を伝える機会や、「八百万の神カード」を使って遊びながら神々の名前や特徴を知っていける機会も作っています。
佐々木: おもしろそうですね。
平林佳: 活動のお知らせが色々掲載されてもいるので、「小さな暮らしの共同体のLINE公式アカウント」から登録してみてください。
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平林佳: その「八百万の神カード」の講師の いとうひさの さんには、子どものための披講教室をやってもらっているんですが、「披講」ってご存知ですか? 和歌に節をつけて歌うことなんですが。
佐々木: お正月に皇室の方々が行われる歌会始みたいなものですか。
平林佳: そうです、そうです。
戦後にGHQが「なんで日本人がこんなに強いのか」っていう研究をした時に、「歌の力」と「道(剣道とか柔道とかの道)の力」が関係していることが分かったそうです。日本人と外国人で脳の働きが違うところがあって、日本人は虫の音とかを心地よく感じるのですが、多くの外国の方には雑音にしか聞こえないみたいなんですよ。また、披講で歌って伸ばす音に、自分を整える何かがあるらしくって、そういうのが見直されてきていると思います。
うちの子どもたちは、かれこれ4~5年くらい披講をやっていて、2年前には初めて神社の社務所をお借りして発表会もやりました。披講を始めたころ、家で遊んでいる時に子どもたちが披講で歌った歌を口ずさんだり鼻歌で歌ったりするのを何度も聞いたり、披講は辞めると言わずに続けているのを見ていて、何か、DNAに訴えるものがあるんだと思えてならないのでした。
平林佳: そして、私が4年ほどやっているもう一つのことが、子どもの算数教室です。
長男が1年生の時に、「絵で解く算数教室 どんぐり倶楽部」というのを知ったのです。これはと思ったのですがサイト見だけではよくわからず、運よく考案者で九州在住の糸山泰造先生講演会が東京であったので先生の話をリアルに聞くことができ、腑に落ちたので、子ども達の学習に取り入れ、私も「絵で解く算数教室 どんぐりタイム 大森山王」 を始めました。
佐々木: 絵で解く算数教室って、どなたがおしえるんですか?
平林佳: 私が指導をしています。問題の解き方を教えるのではなくて、子どもたちが問題を聞いてそれを絵に描きながら答えを出していくのです。要は読解力と思考力をつけるのです。数をこなすのではなくて、じっくり考えるっていうやり方です。本人が考えて、本人が答えを出して、苦手なものはこれからできるためのお宝だから印をつけておいて、また後日やるのです。
続けていると、いつの間にか以前はできなかった問題も解けるようになっています。「できた体験」を積み重ねていくことにもなり、テストで知らない問題が出た時も、取り組めるようです。いつも教わらないで自分で解くことをずっとやってきているから。
年長から6年生まで各学年で100の問題があり、その700題をやっていきます。最近は、コロナ禍で学ぶ環境作りを考えて、オンラインで自習室のようにして取り組んでいます。
糸山先生が伝えてくださる、12歳の時に脳の「シナプスの刈り込み」があって、それまでに何にどれくらい時間を使ったかで刈り込みが行われるから、12歳までに思考力をしっかり使っておくと思考力が残されていくというのを意識するようにしています。
平林寛: 結果論でいえば、okatteの場づくりも、子どもの頭脳作りも、うちは「場づくり」なんです。子どもの教育環境も多世代の環境も場づくりなんですよ。いろんな人がここを通って卒業していったりとか、ここを見てサロンを始めた人もいるし、いろんなことの可能性を提供しているのが、佳子さんの生き方なんですよ。ただ時々、最先端をいきすぎているんですね。
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お二人でインタビューに参加してくださった平林ご夫婦。パートナーというのがぴったり合う、素敵なお二人でした。平林さんがやられている「場づくり」。他人のためだけではなく、もちろん自分のためだけでもなく、自分と周りの人の役に立つ「場」や「コミュニティ」を、ゆるやかに、そして爽やかに作っていらっしゃるのが印象的でした。
この記事を読んで、平林さんやその活動に興味を持った方がいたら、ぜひご連絡してみてください。
平林佳子さん Facebook: https://www.facebook.com/yoshiko.hirabayashi





















