投資話被害者、再び狙われる 「お金取り戻せる」うたい詐取 名簿悪用の可能性
過去に高利回りをうたった投資話で損失を被った被害者が「投資金を取り戻
す方法がある」などと勧誘され、お金を振り込んだ後に業者と連絡が付かな
くなる「２次被害」が相次いでいる。過去にあった投資詐欺事件の被害者の
名簿が出回っている可能性があり、相談を受けている国民生活センターは
「実際に取り戻したケースは聞いたことがない」と注意を呼びかけている。
「新幹線が通る予定で中国人が土地を欲しがっており、２年以内に売却でき
る」。昨年秋、80代の女性にある業者から電話が入った。この女性は30年ほ
ど前、ほとんど価値のない山林を高値で売りつける「原野商法」の被害にあ
った経験があり、購入した山林は持ち続けていた。業者は「売却のため山林
の測量などで28万円が必要」と持ちかけてきた。
女性は業者と契約を結んだが、入金をせかされたことを不審に感じ、山林の
所在地の自治体に問い合わせたところ、新幹線が通る計画はなく業者の説明
はウソと分かった。
健康食品の代理店になれば高配当が得られるとして1999年から２年余りで
1500億円を集めた「全国八葉物流事件」の被害者も２次被害の標的にされて
いる。
同事件で300万円の被害を受けた70代の男性には、投資ファンドを名乗る電
話があり「500億円の隠し財産が見つかった。１割の手数料でお金を取り戻
せる」との勧誘を受けた。勧誘の中で男性は別の会社の社債も進められ、
400万円で購入。ところが返還金を持ってくると約束した日に業者は現れな
かった。
一方、東日本大震災以降、注目を集める自然エネルギーへの投資を悪用する
事例も目立つ。社会的に関心の高い出来事を材料に、まっとうな投資を装い
被害者を信じ込ませるのが特徴だ。
80代の女性は今年１月「金融商品の被害者を救済している。そのためには風
力発電会社の社債を購入してほしい」と持ちかけられた。１口20万円で計38
口を買うよう求められたが高額なため断ったところ「３口でも構わない」と
言われ60万円を振り込んだ。入金の翌日から業者と連絡が取れなくなった。
国民生活センターのまとめでは、同種の２次被害の相談は昨年４月から今年
２月末までの11カ月間で１万5431件寄せられ、前年同期を4991件上回ってい
る。同センターは「過去の被害を少しでも取り戻したいとの心理につけ込ん
でいる。信用しないでほしい」と話している。
日経新聞 2012.3.12 夕刊