9月6日午後10時50分頃、那覇空港発羽田行きのエアーニッポン(NH)140便:ボーイング737-700型機が、新島付近の高度約4万1千フィート(FL410)を飛行中、突然機体が急激に左に傾き、30秒間に約6千フィートあまり急降下した後、高度約3万5千フィート(FL350)で、かろうじて姿勢を回復するという重大インシデントが発生しました。
※画像はYou Tube動画より
※今回のテーマはインシデントの当事者を批判するものではありません。インシデントの考察を通して、航空安全への理解と意識を高めようとするのが目的です。●関連考察はこちら(別窓で開きます)
【重大インシデント報告(エアーニッポンB737急降下:その2)】【重大インシデント報告(エアーニッポンB737急降下:その3)】
▲インシデント発生と同型のエアーニッポン B737-700型機急降下による衝撃で乗務員2名が怪我をしましたが、他の乗客乗務員115名や機材に問題はなく※、140便は無事に羽田空港に着陸しています。
※着陸後、乗客数名が急降下による心理的ストレスと思われる体調不良を訴えた。(9月8日読売新聞)

このインシデントを受けて、9月8日、国土交通省の「運輸安全委員会」が、エアーニッポンのグループ親会社である全日空に、立ち入り調査に入っています。
【ANA機スイッチ間違え急降下 国交省立ち入り調査(11/09/08)】

インシデントの詳しい経過や原因については「運輸安全委員会」の事故調査を待つこととなりますが、例によって、foxtwoなりに、このインシデントを考察してみましょう。
<国土交通省:運輸安全委員会公式サイト>
http://www.mlit.go.jp/jtsb/index.html
【コクピット・ドア・スイッチ】報道によるとNH140便のトラブルの発端は、トイレから戻ってきた機長(64歳:総飛行時間一万6千時間)をコクピットに入れるため、副操縦士(38歳:総飛行時間2,400時間)がセンターペダステル(中央計器盤)にある、コクピット・ドアのロック・スイッチを回したつもりが、このノブのすぐ近くにある、ラダートリムのダイアルを誤って回してしまったためと言われています。
このラダートリムの誤操作により、ラダーが大きく左に動いて急激なヨーイング(偏揺れ)がNH140便に発生し、その結果、機体が左ロールに入って異常姿勢となり、急速に高度を失った※ものと推測されます。
※後の報道で、NH140便が急降下中に超過禁止速度(Vne)をわずかに超えていたことが判明しています。
▲同型機のセンターペダステルを後方から見た画像。向かって右側が副操縦士の座席で、画面奥にスロットルレバーがあります。赤丸が今回、誤操作してしまった「ラダートリム」ダイヤルで、黄色丸が「コクピットドア」のロックノブです。上の画像を見て驚かされるのは、B737-700型機ではコクピットのドアの開閉と機体の姿勢のコントロールという、まったく異なる操作系のスイッチが、類似の形状、そして同じ操作方法、かつ、極めて至近(約10センチ程度離れている)に設置されているということです。
※ただし、計器のレイアウトは同型機でも異なることがあるので、140便が上の画像とまったく同一のレイアウトだったかは不明です。
foxtwoの記憶ではコクピット・ドア・スイッチは、てっきり、押しボタン式だとばかり思っていたのですが、果たして他の機体はどうなのでしょうか?
以下の画像(You Tube動画より)では、赤丸がラダートリム、黄色丸がコクピット・ドア・スイッチを示しています。
▲B747-400型機のコクピットドア・スイッチは、四角い押しボタンタイプで、押すたびにロック、アンロックが切り替わるトグル式です。
▲B777型機のコクピットドア・スイッチ。画像はスイッチがインターホンのコードに半分隠れてしまっていますが、B747型機とまったく同じ、押しボタンタイプです。
▲エアバスA320のコクピットドア・スイッチは、小さなツマミが前後に倒れるトグルタイプで、スイッチの左右に誤操作防止のためにガードがついています。ラダートリム・スイッチは、737-700のドア・スイッチと同じ、ブレードタイプとなっています。
以上のように、同じボーイング・ファミリーでもB747やB777など、B737以外の機体のコクピット・ドア・スイッチは、皆、押しボタンタイプで、エアバスのトグル・スイッチを含め、B737-700型のようなロータリースイッチを採用している機体は、かなり珍しいことがわかりました。
不思議なことにB737も、クラシック737と呼ばれるダッシュ100~500シリーズまでは、コクピット・ドア・スイッチは押しボタンタイプを採用しており、ロータリータイプのスイッチに変わったのは、NGシリーズ(ダッシュ600~800シリーズ)以降になってからのようでした。
【事故発生のメカニズム】通常、センターペダステル後方のスイッチを操作するには、パイロットは身体を少しひねる必要があります。
しかも、インシデントが発生したのは午後10時で、当然、コクピットの中は闇につつまれていたものと思われます。(通常、夜間飛行中のコクピット内は、計器盤だけライティングされます。)
▲夜間、雲中飛行中のB737-400のコクピット。もし、この時、あまり身体をひねらず、暗闇の中、手探りだけでドア・スイッチを操作しようとすると、ロータリー・スイッチを装備している700シリーズのB737では、押しボタンタイプを採用している他の機体に比べ、誤ってラダートリムを操作してしまう可能性が、かなり高くなるものと推察されます。
どうやら、これが、140便のインシデント発生のメカニズムだったと考えて問題なさそうです。

しかし、問題の本質はもっと別のところにあるのではないかと、foxtwoは考えています。
なぜ、巡航中のB737が、副操縦士の“誤ったトリム操作だけ”で、実に6,000フィート(スカイツリーの三倍近い高さ)も高度を失う状況に追い込まれてしまったのでしょうか?
そこで次回はラダートリムを誤操作した後、NH140便が急降下に陥った経緯について考察してみたいと思います。
●続編はこちら(別窓で開きます)
【重大インシデント報告(エアーニッポンB737急降下:その2)】【重大インシデント報告(エアーニッポンB737急降下:その3)】【重大インシデント報告(エアーニッポンB737急降下:その4)】【重大インシデント報告(エアーニッポンB737急降下:その5)】