※foxtwoからのご注意※
今回のブログには航空機事故関連の動画へのリンクが含まれています。このような動画を見て不快に感じる方は、今回のブログの閲覧、またはリンクのクリックを遠慮されることをお勧めします。
-----------------------------------------------------------------
18日、香川県沖の瀬戸内海で海上保安庁のベル412型ヘリコプター「あきづる」(JA6796)が送電線に接触後、海上に墜落し、搭乗していたクルー5名全員が亡くなりました(合掌)。



なぜ送電線に接触するほどの低空(100m)を飛行していたかについては、当初、海上保安庁は廃船のパトロールのためと発表していましたが、その後、デモフライトを実施する合間に高度を下げていた可能性があると訂正されています。

【ワイヤー・ストライクとは】
今回の事故のように航空機が送電線など、線状の障害物に衝突することを、「Wire Strikes(ワイヤー・ストライク)」と呼び、航空界ではその防止策に何年も頭を痛めています。

【You Tube動画:The Invisible Threat: Flying Safely in the Electrical Wire Environment 】
※ワイヤー・ストライクに関するパイロット向け安全講習会ビデオ(英語)


空中から見た送電線など、細い線状の障害物はパイロットには視認しにくく、特にヘリコプターは運用上、低空を飛行することが多いうえに、飛行場以外の整備されていない場所で離着陸を行うことも少なくないため、ワイヤー・ストライクに遭遇する危険性が高いと言えます。

$foxtwoのブログ

ヘリコプターはその形状から送電線等に衝突した場合、当たったワイヤーがメインローター・マストやスキッド(ソリ)に引っかかってしまい、飛行姿勢が大きく崩れたり、マストやスキッドが破壊されたりして、致命的な墜落事故につながってしまいます。

飛行計画をどんなに慎重に立て、また送電線の鉄塔に航空障害灯を付けたとしても、見えないワイヤーに衝突する可能性は残ります。

どうすればワイヤー・ストライクから生還できるのでしょうか?

【ワイヤー・カッターを装備する】
実は決定的な防御策が既に実用化されています。

それは実に単純な発想で、ヘリに衝突したワイヤーを巨大なカッターナイフでブッタ切ってしまおうというアイデアから生まれた、ずばり「ワイヤー・カッター」と呼ばれる安全装備で、実際に事故を防いだ実績もあります。

$foxtwoのブログ

これは上の写真のように、頑丈なカッターを機体の上下に装備して、機種に衝突したワイヤーが上下にずれたところを切断して、メインローターやスキッドにワイヤーが衝突することを避けようという装置です。

欧米では軍用ヘリを始め、民間の事業用ヘリはもちろん、自家用へりでも装備するなど、広く普及していますが、残念なことに日本では陸上自衛隊の一部のヘリを除き、ほとんど装備されているのを見たことがありません。

もちろん100%の効果があるものではありませんが、もし海保の「あきづる」にこのワイヤー・カッターが装備されていたら、もしかしたら悲劇を防げたかもしれません。

【障害物衝突回避装置「OCAS」とは】
「ワイヤー・カッター」は効果的ではありますが、ワイヤーへの衝突姿勢によっては効果がなかったり、飛行速度やワイヤーの太さによっては切断できない場合もあります。

また、送電線を切断することによる停電被害を軽減することも出来ません。(今回の事故でも送電線が切れたため、事故現場周辺の5つの島で、数時間に渡り停電する騒ぎとなっています。)

そこで送電線など障害物への接近を事前に警告し、危険な障害物から航空機を回避させようという装置があります。

ワイヤー・ストライクで幾多の同僚パイロットを失った経験を持つ二人の軍用パイロットが、1999年、「OCAS Inc.」という会社を創設しました。

ノルウェーの「OCAS Inc.」が開発した「OCAS(Obstacle Collision Avoidance Systems)」というシステムは、送電線の鉄塔など障害物付近に電波発信器を置き、障害物への接近をあらかじめ警告して、航空機を危険から回避させようとする素晴らしい発明品です。

【You Tube動画:OCAS Wire Strike Avoidance 】
※「OCAS」の機能説明「OCAS Inc.」の公式ビデオ(英語)


このシステムは棒状の自立式(太陽電池で駆動)システムで、障害物に設置した警告ライトを作動させるリモートアンテナと接近する航空機を探知するレーダー、それに音声警告を行うためのVHF発信器を備えており、二組がセットで障害物をはさみ込むように設置され、障害物を中心とした警戒ゾーンを構成します。

この警戒ゾーンに航空機が接近すると、まず高照度ストロボライトによる発光信号で警告を与え、それでも航空機が障害物に接近した場合には、航空機に標準搭載されているVHF無線機に対して音声の警告(線状の障害物の場合「wire! wire!」、柱状の障害物の場合「mast! mast!」)を与えるようになっており、すでにFAA(アメリカ連邦航空機局)の認可を受けているようです。

飛行経験のある開発者らしく、費用を最低限に抑えるように工夫されており、特に航空機側になんの追加装備も必要としない点は高く評価されるべきだと思います。

今後、ワイヤー・ストライクの悲劇を繰り返さないためにも、foxtwoはヘリコプターへの「ワイヤー・カッター」の標準装備化と、「OCAS」の普及を強く望んでやみません。

そして安全策を尽くした時、ヘリコプターは素晴らしい性能を発揮します。軍用機のビデオではありますが、ヘリコプターの運動性を極限まで表現した動画をご覧下さい。

【You Tube動画:BO-105 - The Flying Tiger 】
※ユーロコプター製BO-105の公式宣伝ビデオ