朝から少し憂鬱だ。



職場の上司が
午後から急遽出張になった。


その為、
今日の午後に予定していた会議が
前倒しで今日の朝一に
変更になってしまった。


なので、
いつもより40分程早く起きた。


昨日、寝た時間は
いつもと同じだったから、

40分睡眠時間を削ってしまった。


もう少しだけ、
早くベッドに入るべきだったと
今更ながら後悔していた。


そんなわけで朝から
憂鬱な気分になっていた。



カーテンを開けると空は青く、
太陽の光が気持ち良かった。


私は軽く伸びをすると
準備を始めた。





今はこんなに天気が良いのに、
夕方から雨が降るらしかった。


私は傘を持つと玄関を出た。



外に出ると小学生の一団や
自転車通学の中学生、

部活の遠征にでも行くかのような
荷物を持った高校生等々、

学生さんが多かった。


いつもとは違った時間帯に
家を出ただけで、
随分と景色が変わるものだ。



賑やかな小学生の一団の
後ろを歩いた。


ランドセルを見るだけで
懐かしい気持ちになった。


ランドセルから視線を上げると
小学生の一団よりも前方に
"あの人"がいた。


"あの人"とは、
わたしが少し気になっている
男性だ。


ひょろっとしていて
濃紺の傘を持っている。


顔はまだ見たことがない。


後ろ姿だけ。


でも、その後ろ姿が
わたしの大好きな"彼"に
そっくりで、

つい"あの人"を
"彼"と重ね合わせてしまう。



"あの人"とは普段
全くといっていいほど出会えない。


生活時間が違うようだ。


でも、どうやらこの時間帯に
出勤しているらしかった。


少しだけ胸が高鳴った。


案外、会議が前倒しになって
良かったのかもしれない。


後ろ姿だけしかわからない
"あの人"の情報をゲット出来た
わけだから。



憂鬱な気分が
一気に晴れていくのがわかった。


わたしって結構単純だ。



明るい気分で
"あの人"の後ろ姿を見ていたら、
すぐ前を歩いている
二人組の小学生のうち一人が、


「猫だぁ~ かわいい~」


と歓声を上げた。



鈴の音がして、
赤い首輪をした黒猫が
横切って行った。



するともう一人の小学生が、


「黒猫って縁起悪いらしいよ」


と言った。


可愛いと歓声を上げた子が、


「ええーそうなのぉ。
 何か嫌だぁ」


と残念そうな顔をした。



その黒猫は花屋の前で止まると
器用に毛繕いを始めた。





黒猫かぁ・・・・・



大学生の時に出会った
不思議な黒猫を思い出していた。


名前はクロだった。


何故かそのクロとは人間のように
会話をすることが出来た。


わたしの大好きな"彼"も
クロと会話が出来た。


そういえばクロも
赤い首輪をしてたな。



わたしにとって黒猫は
不思議で素敵な現象の前触れだ。


だから全然、
縁起が悪いなんて思えない。


そういうのは迷信だよ、って
前を歩く小学生に教えて上げたい。





今日は朝から"あの人"が見れた。
(また後ろ姿だけだけど・・・)


そして、黒猫が前を横切った。



何か良いことが起こりそうな
そんな予感がして
わたしは一人ワクワクしていた。





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