[Re:月曜日、午後8時30分]


僕達は今、
駄菓子屋子猫屋に向かっている。


桜さんとクロにまだお礼を
ちゃんと言っていなかった。


クロが不思議な雷の前兆を
感じ取り、

桜さんが避雷針を
長年大事に保管しておいてくれた
おかげで、

てちさんを
(たぶん)送り返す事が出来た。


本当はすぐにでも
お礼を言いに行くべき
だったのだろう。


だけど、僕達は
正直それどころではなかった。


どういうわけか知らないけど、
時間が巻き戻っていたのだ。


水曜日を過ごしていたはずなのに、
落雷以降どうやら
月曜日に戻っているらしい・・・・・



まだ少し、
頭と心が混乱している。


だけど、みんなで食事をしたら
いくらか落ち着きを取り戻せた。


その分、お礼に伺うまでの
タイムロスが増えてしまった。


だから、お宅に伺うのには
少し遅い時間だけど、

てちさんを
何とか送り返せたお礼を
今日(?)のうちに
言いたかった。



こんな時間に伺っては
迷惑かとも思った。

だけれども、桜さんとクロも
このタイムスリップに関わった
人と猫なのだから、

避雷針は機能したのか、

落雷は井戸にあったのか、

てちさんは
タイムスリップしたのか、

気になる所だと思う。


僕だったら気になって仕方ない。


みんなもそう思ったのか、
僕達は迷い無く
桜さんの自宅まで行くことにした。





なるべく早歩きで向かった。

桜さんには
事前に連絡を入れていなかったので、
もしかすると自宅にいない
かもしれない。

その時はその時だ。
また明日伺えばいい。





鈴本亭の前を通ると、
酒を引っかけたらしい
サラリーマン風の人が
ほろ酔いの状態で店から出てきた。


この人はきっと
今日の午後3時までは
水曜日だったことを知らないはずだ。


駄菓子屋までの道中
すれ違う人がいる度に
そんなことを思った。





ふと見上げると、
見慣れない街灯が目に付いた。





え!?





駄菓子屋子猫屋は
鈴本亭から歩いて数分の
距離のはずなのに見当たらない。



僕達はまるで
迷子の子供のように、
キョロキョロと周りを見回した。



通り過ぎてしまったのだろうか?



そんなはずはない・・・・・



大学に入学し
欅寮に入ってから
月に数回は、駄菓子屋子猫屋に
行っていた。


つい最近・・・そう一度目の月曜日に
鈴本亭で昼を食べた後、
志田先輩と一緒に花火を
買いに行って、その時
店先のベンチでアイスを食べた。


だから、いくら夜だからって
場所を間違えるはずはない。


しかも今ここには、
社会人が1人、大学生が6人いる。

いくらなんでも
間違えようがないじゃないか。


なのにどんなに見回しても
見つけられない。



駄菓子屋があるべき場所には
雑草が鬱蒼と生え、
空き地になっている。





どうなってるの、これ・・・・・





僕達は訳が分からなくなり、
寮に引き返すことにした。





[Re:月曜日、午後9時05分]


寮に戻った僕達は
またまた混乱と動揺の中にいた。



一度目の月曜日も驚きだったけど、

二度目の月曜日は
どこか寒気がするような
恐怖さえ感じていた。



もうこれ以上
何も考えられない状態だった。



今日は一度解散することになった。



みんな疲れきった表情をしていて
口数が少なかった。

そういう僕も
さっさとシャワーを浴びて
ベッドに倒れ込みたかった。


「じゃあ明日」


と、言葉を交わし
鈴本さんは自宅へ、
僕達寮生はそれぞれの自室へと
戻った。





部屋に戻ると確認のため
冷蔵庫を覗いてみたが、
やはりカステラは入っていなかった。



僕は、長濱さんから
"再度"もらった封の切られていない
カステラの真新しい包みを
ぼーっと見つめていた。





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