僕達はしばらく呆然として
その場から動けなかった。
さっきまでは
蓋を"されてない"状態で、
脇には避雷針が
縛り付けられていた井戸が、
何故か今は
しかっりと木の蓋がされ
完全に塞がれていた。
いくら探しても
避雷針は見つからず、
猛暑の中
ただ時間だけが過ぎて行った・・・・・
蝉の鳴き声に混じって
工事作業員の掛け声が聞こえた。
どうやら今日の工事が
終わったらしかった。
ん!?
今日って工事してたっけ?
あまりの暑さで頭が回らなかった。
井戸から寮までの短い距離を
だらだらと歩いた。
寮の玄関前には、
水を張ったバケツの中に
消火された花火が
数十本と入っていたはずなのに、
バケツには
使用済みの花火は無く、
水すら張られていなかった。
長濱さんがバケツを覗きながら、
「昨日みんなで花火したよね・・・」
と不安そうに聞いてきた。
「確かにしました。
ちゃんと覚えてます・・・」
僕はそう言って、
バケツの底を見つめた。
寮の中へ戻ろうとした時、
ガタガタと音がしたので
振り返ると、
寮の前の道路を工事車両が
通過していった。
「今日って工事
休みじゃなかった・・・?」
渡邉さんが首を傾げ
独り言を言っていた。
不可解なことが次々に起こり、
僕達はぼんやりとした状態で
寮の中に戻った。
食堂に行きコップを4個出すと
冷蔵庫から麦茶を取り出し注いだ。
それを飲み干すと
銘々に椅子に腰掛けた。
さっきの工事車両は
何だったのだろう・・・
この寮の近くで
もう一カ所工事している場所が
あるのだろうか・・・?
でも作業員の声は
近くで聞こえてたし・・・
それにしても
鈴本さんと織田先輩と小林さんは
何処に行ったのだろう。
そう思っていたら
玄関ホールから鈴本さんの
慌てた声が聞こえた。
「これ一体どうなってるんだ!?」
鈴本さんは食堂まで来ると
狐に摘まれた様な顔をしていた。
「目開けたらさ、
俺、自分とこの定食屋にいて
テーブル拭いてたんたけど・・・」
僕達のぼーっとした顔を見ると、
「もしかしたらお前等もか・・・?」
と聞いてきた。
それに対して志田先輩が、
「俺ら、みんなそれぞれ
自分の部屋に居たんすよ・・・」
と若干、
心ここにあらず状態で答えた。
鈴本さんが僕達全員の顔を
見てきたので、
みんなでコクコクと頷いて答えた。
それを確認すると
鈴本さんは話を続けた。
「なんか訳わからないよなぁ・・・
今朝めっくったはずの
厨房の日めくりが、
何故か月曜日まで戻っててさ・・・
お袋に今日って水曜日だよなって
聞いたら、
何言ってるの、月曜日よって・・・」
へっ・・・・・・・・・・
月曜日って!?
えええっっ!?
え・・・でも、もしそうだとすると
長濱さんからもらったお土産が
僕の部屋の冷蔵庫から
消えていたのも、
志田先輩の部屋に
花火セットが封を切らずに
置いてあったのも、
工事車両が
寮の前を通っていったのも、
全部説明が付く・・・・・
って、説明なんてできないけど、
どういうわけか
月曜日に戻っているらしかった。
僕達はしばらく
食堂の椅子にぐったり腰掛けたまま
動けなくなっていた。
本当に、
何がどうなっているのやら・・・・・
食堂に沈黙が流れてから
どれくらい立っただろう・・・
そんな時、
長濱さんが突如沈黙を破った。
「もし・・・・・もしね、
今日が本当に月曜日なら、
もう少しで、
織田さんと小林さんが
ゼミ合宿から帰ってくるはずだよね」
食堂の時計は丁度
午後6時00分を指していた。
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