[水曜日、午前10時50分]


避雷針と思われる金属の棒は、
先端が緑青で錆び付いていたけれど、
キャップらしき物を
何とか確認することができた。


マイナスドライバーでこじ開けると、
五百円玉サイズのキャップが外れた。


中を覗き込むと、
金属が幾重にも
重なっているように見えた。


棒を下に傾けてみると、


"シャリン シャリン"


という金属音と共に
次々に折り重なるようにして
メタリックブラウン色の棒が
伸びていった。


最後まで完全に伸ばしきると、


"カチッ"


と音がして
固定されたようだった。



金属の棒は、
食堂を抜け、玄関ホールの
中央付近まで伸びた。

何と釣り竿の
3倍強程の長さになった。


これまで、この棒には
散々なことを言ってしまったけど、
どうやら本当に避雷針のようだ。


ごめんよ、避雷針。


まあ、実物の避雷針を
目の当たりにしたことがないので
なんともいえないけど、

今は有無を言わさず
これが避雷針だと言いたい。


僕達は嬉しさのあまり
ハイタッチをして喜び合った。



この伸縮釣り竿式避雷針は、
右に回すと伸びて、
左に回すと縮むように出来ていた。


誰が作ったものなのだろうか?


避雷針の入っていた
桐箱の蓋の裏を何気なく見てみた。


するとそこには、

たぶん、この避雷針を作成したと
思われる人の焼き印が入っていた。

その焼き印は
何と"益千"だった。


「ちょっと、これ見て下さい」


僕はみんなに
桐箱の蓋の裏を見せた。


「え・・・・・えっ、待って・・・
 "益千"って、 もしかして、
 てちさんの話に出てくる
 益千先生のこと!?」
 
「マジでぇ!?」

「これって何なの!?
 偶然?それとも必然?」

「この状況だと
 偶然とは思えないよね・・・」


てちさんを除いた6人が
コクリと頷いた。


てちさんも蓋の裏側を
じっくりと見ていた。


「ほう、益千先生は
 異国に親しい友でも
 いるのだろうか?」

「あ・・・
 そう・・なのかも
 しれませんね・・・」


としか言えなかった。 



これはあくまでも僕の憶測だけど、

この避雷針は、
益千先生本人、もしくは
益千先生のお弟子さんが
桜さんのご先祖に託した物なのでは
ないだろうか。

てちさんの
本来いるべき時代(江戸時代)でも
不思議な雷を見た人がいて、

それを見た人が、
落雷と共にてちさんが
井戸に突き落とされた事を
益千先生もしくは
益千先生に近しい人に
伝えたのではないか。

益千先生はきっと
漫画や映画やドラマなんかに出てくる
科学者のような人なんじゃないか。

昔々の人だって
SFチックな発想が出来る人は
それなりにいたと思うし・・・

だって、"竹取物語"なんて
平安時代のモロSFじゃないか!!

人の想像することは
時代こそ違えど実はあまり
変わらないんじゃないだろうか・・・

だから、
この避雷針は、
未来に行ってしまった
てちさんが戻ってこられるように
作られた物で、

製作者が、
未来の善良な誰かしらに
渡るように
知り合いに託したんだ、

それが、
たまたま僕達だったんだ・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ろうか?



何と都合のいい考え方なのだろう・・・


自分でも呆れてしまった。



だけど、
そう憶測することで
もし、今日の午後3時
てちさんが江戸時代に帰れたら

その後、誰かが井戸から
救出してくれるのではないか、

そんな淡い希望を抱いていた。



「なんか不思議なことが
 起こりすぎて、
 全然頭がついていかない」

「ホントそれなぁ・・・」

「でも避雷針が
 本物みたいで少し安心したぁ」

「そうね、
 このままどうなるかと
 思ったけど・・・」

「後はこれを
 井戸に縛り付ければ準備完了かぁ」



僕達は一度避雷針を縮めた。


井戸への取り付けは
昼食後にする事にした。



てちさんは微笑んでいたけど、
目に少しだけ寂しさの色が
滲んでいるように見えた。





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