[水曜日、午前9時00分]
織田先輩は、
ボックスティッシュ程のサイズがある
木箱を食堂のテーブルに置いた。
「それなあに?」
「お中元・・とかですか?」
「ああ、お中元のハム?」
「あっ、コーヒー?」
「それとも素麺?」
「素麺とは涼やかでよいのう」
「そうですね」
「え、でもなんでわざわざ
桜さんお中元くれたの?」
僕らがお中元の中身を想像していると、
「お前等、とりあえず
お中元から一度離れろよ。
しかも、もうお中元シーズン
終わってるから・・・」
と織田先輩が言った。
「俺らは何を取りに
子猫屋まで行ったんでしょうか?」
志田先輩が
わかりきった事を聞いてきた。
「避雷針でしょ」
「それで、避雷針は?
外に置いたんですか?」
僕らが外に避雷針を
確認しに行こうとすると、
先輩達がそれを制止した。
「何かあったの?」
「いや、何もないよ」
「なんか変ですよ」
「そうかぁ・・・
強いてい言うなら
かなり拍子抜けした・・かな(笑)」
「拍子抜け?何に?」
「避雷針に(笑)」
「だから避雷針はどこ?」
「目の前にあるだろ」
「ん?」
「だから、これだよ」
はぁ?
「これが避雷針なんだと・・・」
鈴本さんが
木箱を指さして言った。
えっ・・・・・小さっ!?
「この箱の中に
避雷針が入ってるんですかぁ?」
「そうらしい・・・」
「それがさぁ、
桜さんもクロも
大切な預かり物だからって
今まで一度も箱の中を
見たことがないんだって・・・」
「え・・・じゃあなんで
桜さんは箱の中身が
避雷針だってわかったの?」
「箱、よく見てみろよ」
志田先輩がそう言って
手招きしたので、
僕らは全員、木箱の近くに集まった。
箱をよく見てみると、
中央に小さく和紙が貼られていて
そこには"避雷針"と書いてあった。
この箱、たぶん
よく贈答品の江戸切子とか
茶器なんかが入っている桐箱だ。
桜さんはこの箱を
家宝のように大事に
とっておいてくれたのだろう。
桐箱には傷ひとつ見当たらなかった。
桐箱は四方に和紙が貼られ
封がされていた。
何年越しの開封になるのだろうか。
時の経過を感じ取れるくらい
和紙が所々かなり黄ばんでいた。
この箱は、これまでに
開けられた事はなさそうだ。
そんな形跡は素人目からは
一切確認できなかった。
織田先輩が慎重に桐箱の封を切った。
箱を開けると中には
和紙に包まれた"何か"が入っていた。
たぶん避雷針なのだろうけど、
この目で見るまで断定はできない。
包みを解くと
錆びたような金属の棒が
一本入っていた。
カラオケマイクの柄よりも
いくらか太い感じの棒だった。
「え・・・何これ・・・」
「この短い棒切れが避雷針!?」
「マジで・・・」
「どうやって使うの、これ?」
僕達は、おそらく避雷針であろう
棒を見て呆然とした。
「桜さんかクロ、
何か他に言ってなかったの?
使い方とか」
と、小林さんが聞くと、
「いや、何も・・・・・
コンパクトな箱よねぇ、
って言って笑ってた」
と織田先輩が力なく答えた。
確かにコンパクトだ。
これを井戸に取り付けるより、
木の枝のほうが
遥かに避雷針の役割を果たすのでは
ないかと思ってしまった。
この棒、
銅で出来ているのだろうか。
所々、錆びた十円玉のように
緑青が付着していた。
手に取ってみると、
想像していたよりも重みがあった。
「これ見た目より
結構重たいですよ」
「どれどれ、
あ、本当だ。
でもこれ、どうやって使うの」
「まさか手に持って使うとか?」
「いくら何でも
それは危なすぎるだろ。
下手したら死ぬぞ」
「だよなぁ・・・
じゃあ、地面に突き刺すとか?」
「それだと短すぎるよね」
「周りの木の方が
ずっと高いわけだし・・・」
これ本当に避雷針なのだろうか?
取扱説明書が
同封されていたわけではない。
僕達は使用法の見当すら
付かないでいた。
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