動物園にいってから数日後、
僕は織田班長からランチに誘われた。
飲みに誘われるよりはいいのだが、
なんとなく嫌な予感がした。
志田はまだ新婚旅行中だし、鈴本はマメに
弁当を作ってきて彼女と食べてるし、
おのずと僕が誘われる仕組みが出来上がって
いた。
ジャンバラヤが美味しいというエスニック風
のお店に連れていってくれた。
班長おすすめのジャンバラヤのランチセット
を注文した。
「ジャンバラヤって
どこの国の料理なんですかね、
スペインとかですか?」
「スペインはパエリアだろ。
これはアメリカが発祥だよ。
一時期アメリカのニューオーリンズ
がスペイン人に支配されてて
その時に出来た料理のはず。
だから起源はパエリアなんだろうな」
へぇ~そうなんだ。
班長けっこう雑学とか好きなのかな。
あっ、この前、動物園でもラクダの生態を
説明してたっていうし・・・
小林さんがそういうの好きなら問題ないと
思うけど・・・どうなんでしょ。
料理が運ばれてきた。
ケイジャンスパイスというのが効いた
ピリ辛なジャンバラヤは班長おすすめと
いうだけあって美味しかった。
半分程食べ進めていた時に班長が言った。
「この前な、小林と動物園に行ったんだ」
知ってます。
「そうなんですか、よかったですね」
それで、どうだったんですかぁ?
なんて聞きたくない・・・
聞いて欲しそうだけど、あえて聞かない。
「うん、まあな・・・
平手、おうちデートってどう思う?」
おうちデート・・・
おおっ、良いんじゃないですか、
僕はけっこう好きです、おうちデート。
「良いと思いますよ。
二人で映画観たり、雑誌見たり、
ゲームしたり、くだらない話したり、
二人なら何でも楽しいですし」
「そうか!!じゃあ次は
おうちデートにしてみるかな」
よかったぁ~、割とあっさり終わりそう。
織田班長は相談というよりは簡単な経過報告
をしてきた。
順調なら何よりだけど、
これ毎回報告されるのかな・・・
それから数日経ったある晩のこと。
僕はその日の夕方、渡辺部長に頼まれて
鈴本と一緒に部長室のテレビの設置を
手伝った。
手伝ってくれたお礼にと、部長は僕らに
小箱に入ったマカロンのセットをくれた。
妻と娘に思いがけず良いお土産が出来たと
気持ちも軽く家に帰ったのだが・・・
帰ったら奴らがいた。
何故か、織田班長と小林さんが来ていた。
ねるが小さく手招きして僕を呼んだ。
そして小声で、
「てっちゃん織田さんに
何か変なこと吹き込んだ?」
「えっっ、何で」
「こばがね、織田さんが
今日はおうちデートって言うから
普通な感じでいいなってついて来たら
ウチだったって」
「何でそうなるの!?
おうちデートって・・・
あっ・・・・・
言ったかも・・ってか言いました」
「え、言ったの!?」
「いやおうちデートってどう思うって
聞かれて、良いと思いますって
答えただけ」
それがどうして、
人のお宅でおうちデートになるわけっ!
お武家様、それってどんな解釈の仕方なの。
拡大解釈にも程があるっ!!
何してくれるんだそこの武士はっ!!!
落ち武者にしてやろうかっっ!!!!
娘は突然の二人の訪問に大喜びだが、
こちらは正直、焦っている。
班長が完全に間違っているとは
言えないけど・・・
いいや、これは間違っている。
なんとか軌道修正しないと小林さんが
可哀想だ。
小林さんごめんなさい。
伝え方を間違えました。
班長がド天然だとは知りませんでした。
当の小林さんは娘のお絵描きに付き合って
くれているが、正しい解釈なら今頃二人で
お酒を飲みながら映画でも観ていたんじゃな
いのか。
「ねる、ごめん・・・どうしたらいい?」
「どうしようね・・・」
僕ら夫婦は苦笑いをするしか出来なかった。
そんな時、インターフォンが鳴った。
モニターを確認すると、志田と理佐さんが
小さく手を振っていた。
班長たちが居る理由を始めに説明して、
志田たちも家に上がってもらった。
「これお土産な。みんなの分を
職場に持っていくの大変だから、
平手のとこだけ先に寄って
渡しちゃおうと思って」
「お、サンキュー。
どうだったサントリーニ島は」
「すげー良かった。
なんか、空も海も青くてさ
気持ち良かった。
ロバに乗って坂道上ったり、
楽しかったよ。
命の洗濯した感じ(笑)」
「よかったな(笑)」
そんなわけで、今7人でデリバリーの寿司を
食べている。
娘の欅は、またまた大好きなお姉さまと
お兄さんが来て喜んでいる。
理佐さんからお土産のロバのぬいぐるみ
をもらいテンションMAXだ。
みんなで寿司を囲んでワイワイと賑やかだ。
これはこれで良かったのかもしれない。
うん良かった。
・・・・・何がだ!?
おうちデートの件は何も解決していない。
ホントどうすりゃいいんだ!!!
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