今年も寮に新入生が入る時期が来た。

今日は入寮式が行われる。
式典というような堅苦しさはなく
わいわいと賑やかな歓迎会の様なものだ。

現在、午前10時を回ったところだ。

ここは欅寮。
三つある寮のなかで一番建物が古い。

大きめのボストンバックを持ったり、
スーツケースを引いた新入生たちが
ぞくぞくと寮に入り、
各自部屋で荷物の整理を始めている。

その間に、3年生と2年生は
歓迎会の準備を行う。

今朝から食堂がやたらと賑やかだ。

毎度の恒例行事で、
この学園の風物詩でもある。

歓迎会のスタイルは各寮ごとに
若干異なるらしいが、
欅寮のことしかよくわからない。

それにしても賑やかだ。

人間って、
なんだかんだ好きだよね、行事が。

なんて思いながら
ボクは新入生たちを見て回る。

みんな初々しい。

緊張気味の子もいれば、
すでに打ち解けて楽しそうに
おしゃべりしている子もいる。

さっきから志田がボクにちょっかいを
出してくる。

今はちょっと鬱陶しかったので
逃げてきた。

あ、今度は鈴本とじゃれてる。

仕事しろよ。

ほら女子寮長の守屋さんとか、
男子寮長の菅井さんとか見て見ろよ。

お前等じゃれてる場合かっ。
イスでも運べよ。


寮の管理人さん兼食堂のおじさんの
声が聞こえた。

さっきから美味しそうな
良い匂いがしている。

もう少しで歓迎会が始まるみたいだ。

その前に寮長達が新入生を引き連れて
寮の説明をするみたいだ。

ボクも男子寮について行った。

まあ、毎年同じ説明なので
覚えてしまった。

新入生は時折ボクをチラチラ見るが
ボクは気にしない。

だってボク先輩だもんね。
新入生には先輩の威厳を見せねば。

一通り説明を終えると、
欅寮生は全員談話室に集まった。

談話室には少し古ぼけた
大きめのソファーが三つ置いてあり、
スツールとイスも数脚ある。

暖炉もあるのだけど、
今は使われず、塞がれている。
薪のお値段が少々お高くなったらしい。
ボクは結構この暖炉が好きなので残念だ。

みんなそれぞれ思い思いの場所に
腰掛けている。

ボクは三つあるソファーの
一番端に座った。

これから名簿順に自己紹介をしていく。

これも毎年同じ。

最初は新入生から挨拶をしていった。

ボクは新入生の顔が見たくて、
今いた場所より前の方に行って
座り直した。

そうしたら渡邉さんと目があって
少し嬉しかった。



新入生の自己紹介が
中盤に差し掛かった時、

ボクは一人の新入生と目が合った。

向こうがなかなか目を反らしてくれない
から、ボクは固まってしまった。

その子に挨拶の番が回ってきた。

かわいい顔立ちだけど、
眼光するどく、少し声が低かった。

こっちを見据えながら挨拶するので、
さっきからボクは
ずっと固まったままだ。

怖いよ。
そんなに見るなよ。

というより睨まれてる?

え、ほんと怖い・・・やめてくれよ。



新入生の挨拶が終わると
2年生、3年生の順で挨拶していった。

最後に食堂のおじさんが挨拶すると、
生徒会で遅くなったヤツが急いで
駆け込んできた。

一通り形式的な事が済むと、
場所を食堂に移した。

食堂は美味しそうな良い匂いに
包まれていた。

この匂いを感じるといつもお腹が空く。

昼ご飯を兼ねた歓迎会が始まった。

いただきま~す。






新入生もけっこうみんな楽しそうで
なによりだ。

楽しい歓迎会も終わり、
みんなそれぞれの部屋に帰ったり、
談話室に残っておしゃべりしたり
している。

フウ~・・・やっと終わった。

談話室はまだ少し賑やかだけど
食堂はだいぶ静かになった。

ようやく落ち着ける。



と思っていたら、
さっきボクを見ていた?睨んでた?
新入生がボクのところに来て
言ったんだ。


「君さぁ僕のこと
 怖いって言っただろ。
 聞こえたよ。
 そういえば君の自己紹介
 まだ聞いてないな」





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