晴れ女とか、晴れ男とか、そういう迷信の
ようなものはあまり当てにしないが、
家族で出掛ける時は、いつも晴れる。

今日は動物園に来ている。
動物園に行くのは、娘の欅がまだ
ベビーカーに乗っている時以来だった。

親子連れや、カップル、中高生のグループ
など、かなり賑わっていた。

娘は動物たちに興味津々の様で、
目力ハンパない顔で動物たちをガン見
している。

レッサーパンダの展示室の前に来ると、
娘は何度もねるの顔を見ていた。

「欅、どうしたの?」

「なんかおかーさんににてるぅ」

あ~確かに似ている。

「ははっ、似てるって(笑)」

「もー、けっこう子どもの頃から
 気にしてるんだからっ(笑)」

近くの展示室に行くと今度は僕の顔を
何度も覗いてくる。

「これおとーさん!!」

娘が指をさした先には、コツメカワウソの
親子がいた。

「あはっ(笑)てっちゃんそっくり~」

「子どもの頃に志田に
 散々言われたぁ~(笑)」

「じゃあ自覚あり(笑)」

「自覚って(笑)
 たぬきみたいなレッサーパンダに
 なんか言われたぁ(笑)」

「ひどっ(笑)
 でも欅の顔はてっちゃんに似てるから、
 欅はあの小さいコツメカワウソだね」

「うふぅ~かわいいっ」

娘よ、かわいいって、
それ自画自賛ってやつだよ。
まあ、かわいいけど。カワウソだよ。

娘はしばらくコツメカワウソの展示室から
動かなかった。
なんかず~っと見ていると親近感が湧いて
きた。
前世はコツメカワウソだったのだろうか?


猛禽類や霊長類の展示スペースを抜けると、
アルパカやリャマ等の動物がいた。
その向かいにはラクダがいて、
ちょうど餌の時間だった。

娘はラクダが口を動かす仕草が面白い様で
釘付けになっている。

しばらくすると娘がラクダを見ながら
「おださんだー」と言った。

おださん・・・ああ、織田班長の事ね。

娘は三班のメンバーには懐いているので
班長の顔もちゃんとわかる。

「おださ~ん」と言って
娘はラクダを指さした。

確かに似ているけど・・・
班長はもっとハンサムなラクダだよ。

ん・・・・・

娘が指をさした方向は僅かにラクダから
ずれていた。

あれっ・・・

娘が指さす方向を目で辿った。

おっっ

そこには、
織田班長と小林さんの姿があった。

ああっっ

娘が小林さんに手を振り
大声で「こばさ~ん」
なんて呼ぶ前に、
抱っこして近くのベンチまで下がった。

僕は小声で、

「ねる、ねるっ
 織田班長と小林さんがいる」

ねるもそれに気がついたようで、

「わぁー・・・
 二人がわたしたちに気が付いたら
 絶対よそよそしくなるよね」

そう!それは困る。
ふたりのデートを邪魔してはいけない。

「欅、今日は、こばさんとおださんに
 近づいたらダメだよ」

「なんでー」

そうだよね。なんでーだよね。
でもダメなんです。

「欅も動物さん一生懸命見てる時に
 いきなり話しかけられたら嫌でしょ」

「うん、ちょっといや」

「今、こばさんもおださんも
 一生懸命見てるから話しかけちゃ
 ダメなの」

「わかったぁー」

なんとかわかってもらえた・・・

のは束の間。

二人が歩き出すと娘が声を出し
手を振ろうとしたので、
班長たちとは反対方向を向いて
僕は娘を肩車した。

「よし、じゃあ向こうのキリンさん
 見に行こう!」

「欅、キリンさんだってぇ、
 ほらっ、象さんもいるよ」

「わーきりんさんとぞうさ~ん」

僕たちはその場から離れることに成功した。

よし!!!
何とかミッションをクリアした。
 
僕とねるは目配せをし頷きあった。

いやいや、これ任務じゃないから。
ホント何してんだか(笑)

お昼の時間になり僕たちは、動物園に隣接し
ている公園に行き、レジャーシートを広げ
お弁当を食べた。

俵型のおにぎり、卵焼き、唐揚げ、
ミニトマト、カットパインなんかを
適当に詰めてきただけのお弁当なのに
家族みんなで外で食べるとご馳走のように
感じた。
僕の握ったおにぎりは少し不格好だった
けど、娘はおいしそうに食べていた。
それだけで嬉しかった。

大切な時間を気づかせてくれた
守屋補佐には感謝しなくては。

僕が唐揚げにパクついていると、
ねるのスマホにメッセージが入ったようだ。

「こばからだっ。あはは(笑)。
 さっきは気を使ってくれて
 ありがとう!!だって」

小林さんは僕たちに気が付いていたみたい
だけど、
班長はどうやら気が付いていないらしく、
あの時ラクダの生態をずっと小林さんに
説明していたらしい。班長~・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーー