「久しぶりだな平手っ」
「おう、久しぶり森田」
この森田は僕の中学、高校の同級生で
マトリつまりは麻薬取締官をしている。
パピーは依頼された案件が麻薬絡みの
場合はそれ以上手は出さない。
調査もそこで打ち切る決まりがある。
餅は餅屋でってことらしい。
数年に1度くらいの頻度で
実は麻薬が絡んでた、という案件に
出くわす。
今回の案件がまさにそれだった。
なのでマトリにも顔見知りが数人いる。
もう一人の顔見知りもこちらに来た。
「松田さんもお久しぶりです」
「久しぶりー、
さっき私たちの顔見て
ギョッとしたでしょ(笑)」
「バレてました(笑)。
驚きましたけど、
こっちも予感はしてましたよ。
上司から深入り禁物って」
「そうよね、あの議員の息子
けっこう前からマークしてたから」
「そうですか、
これから事情聴取ですよね」
「そう。この時間から最悪(笑)」
松田さんはため息をつきながら苦笑いをし、
同僚に呼ばれまた店に入っていった。
「平手、実はさぁ・・・」
森田が何か言いかけたが、松田さんが
呼んでいたため言葉を飲み込んだ。
「なんか言ったか?」
「ああ、なんでもない」
「松田さん呼んでるぞ」
「うん。じゃあまたな」
「またな。
仕事じゃない時に会いたいな(笑)」
「それ同感(笑)」
森田は走って店内へと戻って行った。
織田班長、小林さん、志田、鈴本も
それぞれ見知ったマトリと短時間で
情報交換していた。
久しぶりの案件はものの二日で呆気なく
終わった。
いずれにせよ報告書は書かなければなら
ない。
それもマトリがやってくれないかなぁ、
なんて思いながら家路についた。
それからまたしばらく事務仕事だけの
平穏な日々が続いた。
そんなある日、喫茶店ポリスで遅い昼食を
摂っていた。
午前中に、暇を持て余し休憩室でお茶を
飲んでいたら、訓練校時代の後輩で
資料課の武元につかまり、資料室の片づけ
を手伝わされる羽目になった。
片づけは思いの外、時間が掛かり
気が付いたらお昼をとっくに過ぎていた。
武元と一緒に喫茶店ポリスに行き、
カツサンドを注文し食べていた。
「織田班長と小林さんて
付き合ってるんですか?」
と武元がいきなり聞いてきた。
「いやぁ~どうだろう・・・」
とりあえず、わからない振りをした。
「噂になってますよ。
同棲してるとか、結婚間近とか」
「えっっ、そうなの・・・」
「三班だからわかると思ったんですけど、
先輩そういうの疎そうですもんね(笑)」
「ははっ、疎いね」
二人から予期せぬ相談をされて、
挙げ句、熱を出して寝込みました、
何てとても言えない。
「資料課でも小林さん
狙ってる人いるんですよ」
「ん、"でもっ"てことは、
他の課にもいるってこと?」
「はい、いますね。
僕が知ってるだけでも3人はいます」
「マジ!?」
班長ホントにおちおちしてらんないよ、
早くアクション起こせよ。
「藤吉さん狙ってる人もいるんですけど、
藤吉さんのことは鈴本さんが、
がっちりガードしてるから
誰も近づけないって」
鈴本の彼女へのマメマメしい行動は、
出会いが少なく餓えている人が
それなりにいるこの職場では、
正解なのかもしれない。
「織田班長がどっしり構えてるのは
小林さんは俺のだっ!!っていう
余裕の現れなのかと思って」
それ、全然違うから!!!
余裕の欠片もないと思う。
「武元もまさか小林さん狙い?」
「違いますよ。
僕は課の先輩から三班の誰かに
聞いてくれって頼まれただけです」
「それで僕をつかまえたと(笑)」
「そういうことです(笑)。
それに僕は年下が好みなので」
「へぇーそうなんだ。
ごめんな、有益な情報を
与えられなくて(笑)」
「あはっ、本当ですよ(笑)。
僕そろそろ行きますね、
資料室の片づけ手伝ってくれて
ありがとうございました。
ここは僕がおごるんで!」
「じゃあ遠慮なく
ごちそうになります」
武元は伝票をもってレジカウンターに行き、
支払いを済ませると、
にこりと笑い本部へ戻って行った。
武元には申し訳ない事をした。
でも、今は余計なことは言わない方が
いいと判断した。
武士の恋が成就する事を願うしかない。
喫茶店のエアコンの風が心地よく
眠気を誘った。
僕は眠気に負ける前に本部に
戻ることにした。
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