月曜日になり久しぶりに案件にあたる事
になった。
とある代議士のご子息が頻繁に出入りして
いるダーツバーに探りを入れて欲しい
という依頼だ。
依頼主は、その代議士とは派閥の違う議員
からだった。
どうやらそのダーツバーには、
グレーゾーンの人間が多数出入りしている
ようだ。
場合によっては秘密情報部だけで
片づけられる案件ではないようだ。
少々きな臭さを感じた。
上司からは口々に深入りはしないように
と言われた。
今回は織田班長と小林さん、
志田と僕が営業時間中に交代で客として
ダーツバー店内に入る。
鈴本は後方支援で車に乗り、無線で
僕らに指示を出すことになった。
僕と志田は午前中にガスの点検作業員に
扮してダーツバーに入った。
従業員の目を盗み、入り口、裏口、
カウンター等に小型カメラを仕込んだ。
午後5時になると店が開店した。
僕らが先にダーツバー近くまで車で行き
仕込んだ小型カメラの映像や音声を確認
した。
確認が終わると鈴本が班長たちにサインを
送った。
織田班長と小林さんはカップルに扮して
いた。
腕を組んで本当のカップルの様に店に
入っていった。
「あの二人、あんなに自然に
腕組んで歩けるのに
なんでまだ付き合ってないんだ」
志田がこの場にいない二人にツッコミを
入れてきた。
「ほんと不思議だよなぁ、
さっさとしろって感じ(笑)」
鈴本も当然二人の関係を気にしていた。
「お似合いなのにねぇ・・・」
班長はどのタイミングで告白に踏み切る
つもりなのだろうか。
「平手が熱出したのも
ある意味あの二人のせいだろ(笑)」
「いやいや、
相談の内容が不向きなだけ(笑)」
「あーやっぱそうかぁ(笑)。
ごめんな、班長の飲みの誘い
俺パスしちゃって」
志田も鈴本も僕の体質をわかっていた。
僕はねるに言われるまで気が付かなかった
のに。
午後10時に班長たちと交代で、
今度は僕らが店に入った。
店内は閑散としていた。
会社帰りの人や、デート中の人、
大学生のグループがちらほら。
壁のコルクボードにイベントのチラシが
貼ってあった。
どうやら明日の火曜日夜10時半から
DJイベントが開催されるらしい。
混雑するのは明日のようだ。
しかも今日は、
代議士の息子は来ていない。
閉店時間の午前3時まで粘ったが
なんの収穫も得られなかった。
翌日の火曜日。
ダーツバー開店の時間になり
今日は僕と志田が先に店に入った。
店内は昨日より活気があった。
徐々に人が増えていき、
イベント開始1時間前には店内の
人口密度はかなり高くなっていた。
写真で見た代議士の息子が確認できた。
バーのカウンター席には見知った
"あの人たち"の顔があった。
向こうも僕らに気が付いた様だった。
志田が僕の耳元で小声で言った。
「この店ヤバいな」
「ヤバいね。
そういうイベントかぁ」
僕らは車で待機中の班長たちに
今の状況を無線で伝えた。
すぐに店を出るようにいわれ、
その指示に従い店を出て車に戻った。
戻った頃イベントが始まった。
織田班長はすぐさま課長に連絡し
指示を仰いだ。
数分後課長からの指示で店には入らず、
その場でしばらく待機することになった。
後は"あの人たち"に任せるということ
らしい。
僕らはしばらく車で待機した。
イベントが始まり1時間程経った頃
動きがあった。
店の周りに車が増え、スーツを着た人達が
降りてきた。
店からは手錠を掛けられた人が数名
今来た車で連行されていった。
店内にいた人も次々車に乗せられた。
訳が分からずおどおどする人、
突然の事に泣き出す人、
純粋にDJイベントを楽しみに
していた人は本当に気の毒だった。
ただ別のイベント目的の人も
少なからずいたようだ。
見知った顔の"あの人たち"が店から
出て来たので僕らは車を降りた。
向こうの一人が僕に気が付きこちらに
やってきた。
「パピーが動いてたって事は
あの議員の息子かぁ」
「ご明察。
はじめからきな臭かったから。
けっこう前から張ってたのか?」
「半年位前から。タレコミがあって。
政治家の息子が絡んでそうだから
パピーが動くって、
僕のとこの上司が言ってたよ」
「パピーが動いた時が
捕まえ時ってことか(笑)」
「そんなとこ(笑)。
久しぶりだな平手っ」
「おう、久しぶり森田」
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