会議室を出るとやたらと肩が凝っていた。
どうやら僕はまだ作り物の拳銃を収めた
ホルスターを身につけていたようだ。
極度の緊張の中、
普段は身につけない物をつけていたせいか、
動きが少し変になっていたのだろう、
肩を回すとバキバキ音がした。
そんな僕を志田は笑ったが、
彼もまだホルスターを装着したままだった。
今頃になってホルスターを外している
僕らを鈴本が笑ったが、
彼の首にはまだヘッドホンが掛かっていて、
コードがぷらぷら揺れていた。
そんな僕ら三人を見て織田班長、小林さん、
今泉さんは呆れた顔で笑っていた。
帰り際、渡辺部長に声を掛けられ、
透明な飼育ケースに入ったヤモリを
渡された。
せっかくの幸運のシンボルだからと
訓練中は縁起を担いで飼っていたらしい。
無事に終わったから放してきて欲しいと
言われた。
寮への帰り道にある草木の多い公園で
志田と鈴本と一緒に放した。
「ヤモリが幸運の前兆ってやつ
やっぱ迷信だよなぁ」
志田が力なく言った。
「そうだよねぇ・・訓練だったわけだし」
僕がそう返すと、鈴本が聞いてきた。
「さては惚れたな」
「バレてたぁ?」
「いやぁ~バレバレでしょ(笑)
志田が渡邉さんで平手が長濱さんだろ」
「よくわかったな(笑)」
「何年の付き合いだと思ってんの。
でもさ、俺らの上司やっぱ優しいよなぁ」
「え、なにいきなり」
「だってさぁ、マンションで監視してる
時って話しくらいするだろ?」
「するけど、なんで?」
「さっきの検証会の映像、
お前らがプライベートな発言した部分
たぶん全部飛ばしたぞ!」
「あーそういやそうだなぁ・・・
あれじゃねっ、守屋補佐が
平手かわいさにカットさせたとか(笑)」
「またそれかよ(笑)志田のことだって
相当気にかけてると思うぞ」
「いやいや、俺かりゃ言わせれば、
二人とも溺愛されてる(笑)」
「そうか」「そうかなぁ~」
「課長も補佐も気付いてない
みたいだけど、
裏ではみんなに志田と平手の
パパとママって呼ばれてんの(笑)」
「マジ!?」「うぅっそっ!」
「いやぁ・・いくらなんでもそれは
課長と補佐に失礼でしょ(笑)」
とか言いつつ、
本当は自分でもお母さんとお父さんの
様な存在だと思っている。
「ああぁほんと、潤いが欲しい!!」
「またそれかよっ(笑)」
「鈴本は良いよなぁ、
彼女いるって言ってたよな」
「訓練生だっけ?」
「そうなの?
どうやって知り合ったの?」
「教えな~い(笑)」
「どんな子?」
「僕知ってる(笑)」
「えっ!?何で知ってんの?
俺だけ蚊帳の外」
「そうじゃねーよ(笑)
デート中に鉢合わせしたのっ」
「なんか、ほんわかした
可愛い子だったよ」
「え~、見せてっ見せてぇ」
志田にしつこくせがまれて
鈴本はスマホの自撮り写真を見せた。
「かわいいじゃん。
えー、いーなぁー」
「へへっ」
「あっ、照れてるし(笑)」
なんて会話をしながら寮に帰った。
たわいもない事を話すのは久しぶりだった。
寮の自室に帰った時は午前3時を過ぎて
いた。
長かった水曜日はとっくに過ぎて
木曜日になっていた。
スマホを充電した。
服を洗濯機に投げ入れて、
シャワーを浴びた。
部屋着に着替えて水を飲んだら
ベッドに倒れ込んだ。
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