次に(技官)と(同僚)という題名のついた
映像を立て続けに観た。


<再生>

本部の時計は午後3時を回っていた。
課長室の映像だった。

菅井課長、守屋補佐、小林さんが
打ち合わせをしていた。

(もう少ししたら報告書を書き終えて
 課長室に来ると思いますよ)

(いくら訓練でもこういう事を
 伝えるのは気が引けるなぁ・・・)

(あの二人一見タフに見えて
 けっこう繊細だからちょっと心配ね)

(鈴本、いつも通り振る舞ってますけど、
 昨日伝えた時は相当ショック受けて
 ましたよ)

(まあ、そういうこと含めての
 訓練だからな)

(そうね・・)

(おっ、そろそろ来るなっ)


マナカが課長室をノックした。


<早送り>

(実はね、今回の坂尾議員の案件が片づい
 たら今泉はここを辞めるのよ)

(えっ、なんでですか?)

(あとで本人から話があると思うんだけど、
 民間の科学捜査研究所に前々から誘われて
 いたの)

(そうなんですか・・・)


<一時停止>

いきなり菅井課長が謝ってきた。

「すまん。これは訓練上の嘘だ。
 今泉が民間から誘われたのは事実だが、
 本人がきっぱり断った。
 まあ、これも訓練だからな。
 でも人が入れ替わるのには
 寂しいが慣れて行かなきゃならない。
 ここはそういう組織だ」

そういう組織、か・・・

「(笑)ごねんね。
 まだまだ心配な後輩がいるから
 やめられないなぁ~って」

今泉さんが笑顔でイタズラっぽく言った。
その笑顔をみたら
安心している自分がいた。

それと同時に、
僕はこの先どのくらいこの組織で
働いていられるのだろうかと
少し不安な気持ちも抱いていた。


<早送り>

(志田は平手がその女子大生に
 言い寄られないように見張ってなさい!
 平手もなびいちゃダメよ!)

(えっ、なんで平手だけ(笑)。
 俺はいいんですか?)

(あなたは言い寄る方でしょ(笑))

(そんなことしませんよ!)

(平手に悪い虫がついたら困るでしょ)


<早送り>

(志田っ!ちゃんとお願いね!!)

(わかってますよ、大事なユリナちゃんに
 女は近づけませんよ(笑))

(ユリナちゃんて・・・馬鹿にし過ぎだろっ)

(ほら、行くぞ、ユ・リ・ナ ちゃん)


会議室で笑いが起きていた。
菅井課長も笑いながら言った。

「これは守屋が、
 平手かわいさに言ったことで
 こうなった(笑)
 訓練には関係なかったな(笑)
 顔が良いからって安易に近づくと、
 後ろに守屋が待ち構えてるからなぁ~
 気を付けろよ(笑)」

課長誰に言ってるの・・
完全にからかわれてる
恥ずかし~


<早送り>

課長室を出た僕らが
廊下で渡辺部長と話しをしていた。

(今日、お招ばれされてるでしょ。
 これ持っていってね)

(・・・なんですか? この植物)

(ペペロミア)

あっ、そうそうペペロミア。
あれからそんなに日が経ってないのに
ものすごく前に感じてしまう。


長濱さんが話し始めた。

「あのペペロミアにも実は
 SDカードが入ってたんです」

うっそ・・・もうやめて
好きですねSDカード。

「でも資料とかではなくて・・・
 渡辺部長が動画のお手紙を
 下さったんです。
 ヤモリ騒動は気にしなくて
 いいからって、
 励ましてくれたんです。
 なんか嬉しくて・・・」

「あれから少し心細くなっていたので
 とても嬉しかったんです」

長濱さんと渡邉さんはそう言い
渡辺部長にお辞儀をした。

渡辺部長を見るとにこにこしている。
まあ、いつもかなりの確率で
にこにこしているのだけれども。

なんとなくだけれど、
あの方が部長に抜擢された理由が
わかる気がした。
パピーとしても上司としても
優れた人なんだと。


と、この時の僕は思ったのだけれど・・・

この後、
渡辺部長は"優れた"なんて
在り来たりな言葉じゃ収まらない人だと
会議室にいる全員が思い知ることになる。





ーーーーーーーーーーーーーーーーー