守屋補佐が(騒動)と題名の付いた
映像を再生した。

406号室内の映像。
時計は11時半を指している。

渡邉さんがキッチンの電気を付けて
少ししたら悲鳴をあげた。
長濱さんも驚いて
プチパニックを起こしている。

あの時だ。
ヤモリ騒動の時。

あれっ!?

これってもしかしたら
シナリオになかったことなのかな。

二人ともテーブルの上にある資料を
慌てて隠してる。
僕らが406号室に向かってるという
連絡がいったんだろう。

長濱さんがベランダの扉を開けると、
僕が部屋の中に入った。

渡邉さんが玄関を開けると、
マナカが入ってきた。

(大丈夫ですか?すごい悲鳴でしたけど)

(・・・あっ・・・はい・・・大丈夫です)

あの時、長濱さんと渡邉さんが
ぽかんと口を開けて僕らのことを
見ていたのは、
ヤバいバレるかもって思ったからかな?

改めてみると、
ぽかんとした顔かわいいな。


<早送り>

渡邉さんが台所近くの壁を指さした。

はい"ヤモリ"登場!

<一時停止>

映像を一時停止させると
菅井課長が話し出した。

「この時は正直驚いた(笑)
 普段冷静な二人が突然悲鳴をあげるから
 何事かと思ったよ」

「本当に申し訳ありません。
 言い訳になってしまいますけど、
 私、爬虫類が苦手で思わず・・・」

「わたしも渡邉が爬虫類苦手なこと
 知っておきながら、
 上手くフォローできずに
 自分もパニックを起こしてしまって
 申し訳ありません」

長濱さんと渡邉さんが
顔を真っ赤にしている。

そういう顔もかわいい・・・

マナカを見ると、
渡邉さんに目が釘付けになっていた。


<早送り>

406号室の玄関前と廊下の映像が
映し出された。

405号室から、
グレーヘアの上品な老夫婦が出てきた。

<一時停止>

「前の映像を観て気が付いたと思うけど、
 あの老夫婦は、僕と渡辺部長です」

土生さんが説明を始めた。

「405号室は待機所だったんです。
 あの部屋には常に専従班の
 誰かしらが変装して待機してました。
 ヘルプ要員といった感じです。
 406号室とも頻繁に連絡を
 取っていました」

そんな直ぐそばに専従班がいたなんて・・・
でもなんで渡辺部長がいたんだろ?

「いちおう老夫婦が娘と孫と
 暮らしているという設定が
 あったんですが人員が足りなくて
 困っていたんです。
 他班は通常任務でしたから応援要員は
 頼めなくて。そうしたら、
 部長が助っ人に入ってくれる 
 ことになって、お願いしました」

ということは、
たまたまあの日に部長が405号室で
待機していたわけか。


<早送り>

(あなたヤモリですって。あーかわいいわ。
 飼ってもいいかしら?)

(言い出したら聞かないからな(笑)。
 好きにしなさい)


<早送り>

マナカがビニール袋ごとヤモリを渡すと
老婦人に扮した渡辺部長は
何の躊躇いもなくヤモリを袋から出し、
手の平に乗せた。


<早送り>

(私も詳しくは知らないのだけれど、
 たしかヤモリが部屋に現れるのは幸運が
 訪れる前兆なのよ。だから、お嬢さんたち
 にも、助けに来てくれたボーイフレンドた
 ちにもきっといいことがあるわ)

(へぇ、そうなんですか)

映像をよく見ると
土生さんと長濱さん、渡邉さんが
アイコンタクト取っていて、
時折スマホを操作していた。


<一時停止>

「この時直ぐに本部から連絡が
 入ったんですけど、
 なかなか応答できなくて
 渡辺部長が上手く時間稼ぎして
 くださったので本当に助かりました」

と、渡邉さんが言った。

あれ時間稼ぎだったんだ・・・

「その時の連絡が課長からで、
 計画を少し変更する事になったから、
 志田くんと平手くんをお礼を兼ねて
 明日の晩ご飯に招待するようにと
 言われたんです」

・・そういう流れだったんだ・・・


<早送り> 

(もしよかったらだけど、お礼させて
 くれないかな?迷惑かけちゃったし)

(晩ご飯食べにおいでよ。明日とかどう?)

これに僕もマナカも
浮かれていたわけか・・・

課長がいうところの隙を見せたんだ。
ハァァ・・・
ため息しか出てこなかった。

実は、
この僕らの隙を突くための
"お招ばれ作戦"!?
を実行したことでシナリオを
変更せざるを得なくなったらしい。


検証会はまだまだ続くみたいだ。





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