夜が明けた。
僕たちは交代でシャワーを浴び
服を着替えた。
冷蔵庫から普段はあまり飲まない
エナジードリンクを2本取り出し、
その1本をマナカに投げ渡した。
僕もマナカも食欲がなかったが、
いざというとき動けなければ困るので、
エネルギー系のパウチゼリー飲料と
バナナを無理矢理口に運んだ。
エナジードリンクでバナナを流し込むと
微妙な味がした。
調査対象者二人が出かける時刻になった。
盗聴マイクで聞いた情報をまとめると、
今日の午後は休講になったため、
昼食はマンションに戻ってきて食べる
らしい。
夕方はいつも通りバイトみたいだ。
僕らは怪しまれないよう、
午後はマンション正面向かいの駐車場に
駐めてある車から様子を伺うことに
なりそうだ。
外は薄曇りで、時折小雨が降っている。
二人が玄関を出ると、
僕たちは傘を手に持ち、
少しタイミングをずらして廊下に出た。
マンションの階段ではすでに清掃員が
掃除をしていた。
初めて見る人だった。
朝の挨拶をすると、気持ちの良いくらい
爽やかな挨拶が返ってきた。
一応、織田班長に初めて見る清掃員がいるこ
とを報告した。直ぐに既読がついた。
管理人室に目をやると班長が片手を挙げて
答えてくれた。
僕らは会釈をしてマンションを出た。
先日のことがあるから、今日も大学図書館の
自習スペースにいた。
神経を尖らせ警戒していたが、
調査対象者二人に接触してくる不振人物は
おらず、
大学構内にも周辺にも坂尾上は現れなかっ
た。
昼になると雨が本降りになった。
2時限目の講義が終わると二人はスーパーに
立ち寄り、短時間で買い物を済ませると
真っ直ぐマンションに帰った。
僕らはマンション正面向かいの駐車場に
駐めてある車に乗り込んだ。
車にいることを班長に伝えるため
メッセージを送ったが、今朝の様に
直ぐ既読はつかなかった。
念のため小林さんにもメッセージを送った。
(向かいの駐車場にいます。
班長管理人室にいますよね?)
直ぐ既読がつき、小林さんから電話が来た。
かなり慌てた様子だった。
「もしもし、志田、平手。
さっきから班長と連絡が取れないのよ。
無線も繋がらないし、既読もつかなけ
れば電話にも出ないの」
「えっ!?そうなんですか」
「それに昼過ぎから監視映像のノイズが
酷くて、まともに見れないのよ。
わるいんだけど、
管理人室確認してくれる」
「了解しました」
雨雲は勢いを増し、雨足が強くなった。
さほど遠くない空に稲光が見えた。
僕たちは車を降りて走ってマンションの
エントランスに入った。
管理人室に向かうとどうも様子がおかしい。
ブラインドが降ろされている。
警戒しながら管理人室のドアノブを
押し下げると、鍵はかかっていなかった。
そのまま管理人室のドアを開けると、
ドアが何かに当たった。
その何かが、もがくような声を出し、
床でくねりだした。
織田班長だった。
両手、両足を結束バンドで縛られ、
口にはガムテープが貼られていた。
「班長!?いま剥がします!」
マナカが力任せにガムテープを剥がした。
かなり痛そうだった。
「ぅぅう゛わっ ハァハァ 痛ぇぇ~
もう少し優しく剥がせよっ志田!!」
僕はその間に、もしもの時用に持っていた
ポケットナイフで結束バンドを切った。
「あーすいません。痛かったすか。
それよりどうしたんですか!?」
「あの清掃員だ!!
お前たち早く406号室に行け!!!」
班長がそう言うよりも早く、
僕らは管理人室を勢いよく出ていた。
階段や廊下がやたらと長く感じた。
4階に着くと同時にエレベーターの扉が
閉じ、降下した。
下には班長がいる。大丈夫だ。
それにエレベーターに乗ったのは
住人かもしれない。
今は406号室に向かおう。
マナカの目を見た。
同じ考えのようだ。
406号室の玄関は開いていた。
背中に冷や汗が伝い、
手がじっとりと湿っていた。
息を押し殺しながら玄関に足を踏み入れた。
長濱さんと渡邉さんの姿はなかった。
清掃員の姿もなかった。
さっきスーパーで買った食材がエコバック
から飛び出していた。
「ユリナっ、地下駐車場!!」
「クソッ!!さっきのエレベーターかっ」
僕らは非常階段で地下に駆け降りた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー