脅迫文が言葉遊びかもしれないなんて、
正直冗談であって欲しい。

そんなことは、テレビドラマや映画の世界だ
けにしてくれ。

本当にあるんだなこういうのって・・・

調査官歴の浅い僕にとっては、
こういう脅迫文ははじめてだった。



「たぶんなんだけど、この脅迫文を
 作成した人は自分だけのルールを
 持っていると思うの」


今泉さんがそう言って脅迫文を読み易くまと
めた用紙を見せてきた。


「1通目と2通目の書き出しが平仮名で 
 ”わたし ”なの。
 新聞なんかの切り抜きだと平仮名で、
 わ・た・し って切り取るより、
 漢字の ”私 ”を見つけて切り取る
 方がよっぽど楽なのに」


自分のルールであえて平仮名のわたし・・・


「だから、ただ単純に最初の文の 
  ”わたし ”だけは
 縦読みの ”わ ”ではなくて、
 ”わたし ”って読むんだと思うのよ」


そのルールで読んでいくと、


1通目

 わたしは知っている  → わたし
 
 誰もが知ることになる → だ
 
 汚らわしい奴め    → け
 
 愛人の子たちを殺す  → あ
  
 いい気味だ      → い
 
 死ぬほど苦しめ    → し
 
 天罰だ        → て

 < わたしだけあいして >


2通目

 わたしが貴様の隠し子 → わたし

 を殺す        → を

 見せ物にしてやる   → み

 天罰だ        → て 

 < わたしをみて >



  私だけ愛して

  私を見て




うわぁ、マジかぁ・・・



「この脅迫文の ”わたし ”って
 もしかして、坂尾議員のアメリカに
 留学中っていう娘さんなんでしょうか?」


僕は恐る恐る聞いた。


「たぶん・・ そうね・・・
 んん~ たぶんとしか言えないのよ・・・
 実はね行方不明なの、坂尾上さん」



へっ・・・行方不明?





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