調査対象の二人はこのマンションの
406号室に住んでいる。
志田と僕はその隣の407号室。
今日から住み込みで調査・監視をする。
二人が帰宅するのを確認すると、
僕らもマンションに入った。
407号室に入ると、テーブルの上には
資料とパンが山ほど入った紙袋、
あと引っ越し挨拶用とメモ書きが載った
和菓子の包みがあった。
「なぁユリナ、和菓子ってどうよ?
しかもたぶん一口羊羹だよこれ」
「僕好きだけど、獅子屋の一口羊羹。
マナカも好きでしょ」
「そうじゃなくて。
洋菓子店でバイトしてる女の子って
やっぱクッキーとかの方が
いいんじゃない」
「あー、でもこれ小林さんセレクトでしょ?
なら大丈夫でしょ」
「班長セレクトかもよ(笑)」
こんなどうでもいいような会話だけれど、
みなさんお気づきだろうか。
僕らがお互いを苗字ではなく
下の名前で呼びあっていることを。
今回、調査の相方である志田マナカと
僕、平手ユリナは兄弟という設定だ。
しかも、異母兄弟。
まぁ、この設定はよくあることだから
僕らは慣れている。
僕らパピーは偽名を使うことはほとんど
ない。
任務中に誰と遭遇するかわからないからだ。
だから、別の班のパピーと遭遇したとき
僕らが声を掛け合うことはない。
場合によっては任務に支障をきたしたり、
命取りになるからだ。
異母兄弟という設定で近づく。
今回の調査では正直言ってずるい手だ。
調査対象者は本当の異母姉妹なのだから。
でも仕事だ。
兄弟モードに切り替えて引っ越しの
挨拶に行くとするか。
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