僕と志田は大手ファストフード店の2階席で
双眼鏡片手にポテトを食べている。
向かい側にあるパティスリー・セゾンという
洋菓子店で調査対象者2人がそろって
アルバイトをしている。
今いるファストフード店は、どの席にも
不透明な仕切りが取り付けられていて、
営業途中に立ち寄ったビジネスマンや
ノマドワーカー風の人がぼちぼちいる。
僕らのような職業の人間にも、
こういう店はありがたい。
僕らは警察組織の人間ではあるけれど、
普通の警察官とは少々かけ離れた仕事をして
いる。
よく映画やドラマにでてくるMI6やCIA
は、軍事工作をしたり殺しのライセンスを
持っていたりする。
警察内部でも秘密情報部をよく知らない人
は多い。
その人たちの中には、
僕らが特殊工作をしたり、
時には殺しもいとわない
と思っている人も少なくない。
はっきり言っておくけど、
そんな物騒なライセンスは持っていない。
殺しなんてとんでもない。
しかも僕、血を見るの苦手だし。
僕ら秘密情報部、通称パピーは簡単に
説明すると、一部の人しか依頼できない
国営の探偵社みたいなものだ。
だから殺しは絶対にやらない。
けれど、裏工作や世間的には違法な方法での
調査は行う。
秘密情報部に依頼できるのは、
政界や財界の大物、官僚などの
一部特権階級の人たちだ。
だから、"火消し屋"、"掃除屋"、"国の子犬"
なんて嫌味たっぷりな呼び方をされることが
よくある。
それで、自虐的に<子犬=パピー>という通称
を使うことになったらしい。
ただでさえ不祥事が連発している世の中、
火消しが動き回らないと、どこもかしこも
大炎上してしまう。
ほんの一部しか消火できていないのは
悲しいけれど事実だ。
けれど、僕らが動くことで
依頼主の秘書や側近、部下などの自殺や降格
を阻止できることはあるし、大事件に発展す
るのを防いでいたりする。
"娘を守ってほしい"
坂尾議員の依頼は
隠し子である娘二人の身辺警護だった。
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