その日、三班は久しぶりに全員本部にいた。

「昨日はお疲れ!
 今日のランチは俺がおごるぞ!
 みんな何が食べたい?」


織田班長の太っ腹発言で、
班のみんなが沸き立っていた。

ちなみに僕の所属する
秘密情報部調査執行課三班のメンバーは、
織田班長、小林さん、今泉さん、鈴本、志田
そして僕、平手の6人だ。


ランチの話題で盛り上がっていると、
守屋課長補佐が小走りにやってきて言った。


「盛り上がってるところ悪いんだけど、
 三班全員至急会議室まで来てくれない」


明らかにテンションがた落ちな顔をしている
鈴本と志田と僕を見て、小林さんが

「ほら、行くよ」と発破をかけるように
僕ら三人の背中を叩いた。



会議室に入ると、渡辺部長と菅井課長がいて
何やら話し込んでいる。

全員が席に着くと、菅井課長が話し始めた。


「えー、昨日までの案件は無事片づいた
 みたいだな。みんなご苦労様。
 大臣直々にお礼の電話がきた。
 副大臣としては優秀な人材だから
 このまま登用するようだ」


それは、めでたし、めでたし、
でよかったですこと、
と僕は心の中で棒読みしていた。


「みんな本当によくやってくれた。
 休み無しで三ヶ月働かせてしまって
 本当にすまん」


この職場に働き方改革なんて
あったもんじゃない。

だけど、人の良い菅井課長は
本当に申し訳なさそうに謝る。
謝られたこっちが恐縮してしまう程に。

あー、でも僕やっぱり寝不足気味です課長。
欠伸(あくび)を噛み殺して話を聞いた。


「それで、えーと・・・」

課長の言葉が詰まった。

なんか悪い予感がする。


「立て続けで悪いんだが、
 また三班に頼みたい案件がある」


承知していたことだけど、
やはり全員なんとなく顔がひきつっている。
そりゃそうだ。ほんと、休みをください。

それを察してか、
また申し訳なさそうに菅井課長が
話をつづける。


「今回の依頼主は、衆議院議員の
 坂尾登議員だ。
 みんなも知っていると思うが、
 時期首相候補の人物だ」


坂尾登は、元は父親である
坂尾登太郎(さかお とうたろう)議員の
秘書だったが、父親が病気で急逝すると
その地盤を引き継いで議員になった。
典型的な二世議員だ。

故人である父親の登太郎氏は、
英国紳士風のジェントルマンで
物腰柔らかく、政治家としても人間としても
清潔感のある人物だったらしい。

そのためか、スキャンダルとはほとんど
無縁だったようだ。

息子の登氏も、父親に負けず劣らすクリーン
なイメージを売りにしているが、
秘密情報部に依頼するということは、
そうではないらしい。


依頼の詳細は、今日の午前10時に
こちらが坂尾邸に出向いて聞くことになって
いる。


みんなでランチはお預けとなった。


坂尾邸には、
織田班長、小林さん、志田、僕の4人で
行くことになった。





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