先月の続きです。
2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発の為の2030アジェンダ」(2030年までに達成すべき世界共通の目標)の中核となっているのがSDGs(持続可能な開発目標)です。

<SDGs17の目標>
目標1:あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ 【貧困をなくそう】
目標2:飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続
          可能な農業を推進する 【飢餓をゼロ】
目標3:あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する
         【すべての人に健康と福祉を】
目標4:すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進
          する 【質の高い教育をみんなに】
目標5:ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
         【ジェンダー平等を実現しよう】
目標6:すべての人に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する
         【安全な水とトイレを世界中に】
目標7:すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセス
          を確保する 【エネルギーをみんなに そしてクリーンに】
目標8:すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用
          およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する
        【働きがいも経済成長も】
目標9:強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新
          の拡大を図る【産業と技術革新の基盤をつくろう】
目標10:国内および国家間の格差を是正する 【人や国の不平等をなくそう】
目標11:都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする
         【住み続けられるまちづくりを】
目標12:持続可能な消費と生産のパターンを確保する 【つくる責任 つかう責任】
目標13:気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
         【気候変動に具体的な対策を】
目標14:海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する
         【海の豊かさを守ろう】
目標15:陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、
           砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を
           図る 【陸の豊かさも守ろう】
目標16:持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法への
           アクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な
           制度を構築する 【平和と公正をすべての人に】
目標17:持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化
           する  【パートナーシップで目標を達成しよう】

 私が創業したアバンセコーポレーションが35年も前から手掛けている海外人材の呼び寄せは、目標1の「貧困をなくそう」(1日1.25ドル未満で生活する極度の貧困をなくす)に該当する事業です。アバンセの事業で救われた人(進学出来た、結婚できた、土地や農機具を買って農業を始めた等、人生を立て直した人たち)が数えきれないほど沢山おられます。

 小牧営業所が行っているフードバンク活動は、目標12の「つくる責任 つかう責任」(世界全体の食料廃棄を半減させ、食品ロスを減らす)に当たります。日本の食料廃棄物等の量は年間約2,531万トン、このうち本来食べられるのに捨てられる食品「食品ロス(フードロス)」の量は年間約600万トンもあります(農林水産省より、2018年度推計値)。少ない量であっても積もれば莫大な量になります。日常においてみなさんで意識していただくだけで社会が変わるのです。
 

 目標17の「パートナーシップで目標を達成しよう」(先進国は国民総所得比0.7%の資金を政府開発援助(ODA)に向ける)、まさに私たちの仕事はODAそのものなのです。現在ブラジルの邦字新聞社との連携を模索中で、日本の日系コミュニティー向けの媒体とも協働し、ブラジルと日本の日系社会を連動させ、SDGsの一番の眼目「誰一人取り残さない」を目指しています。アマゾンの奥深いジャングルに住む老いた母親も、日本で失業して路頭に迷う親子も、日伯双方のメディアを通じ、網の目の救済、そしてチャンスの場を提供していきたいと考えています。


 SDGsを考えていると、国家とは何なのかを考えさせられます。政府が出入国管理及び難民認定法改正案を今国会で取り下げることになりましたが、スリランカ人女性が入管収容中に亡くなったことが一番大きな原因のようですね。彼女はなぜスリランカに帰国しなかったのか、彼女の事情は分かりかねますが、この国はいくつかの民族に分かれ、多数派の「シンハラ人」は仏教徒、次いで多い「タミル人」はヒンドゥー教徒で、どちらかに所属している限り迫害されることはありません。問題は、シンハラ人とタミル人が結婚したり、縁戚関係ができると迫害等トラブルが起きるようです。「同じ町に住んでいるのだからよくある話だね」とはいかず、シンハラ人からもタミル人からも迫害を受け、スリランカに居場所がなくなっていきます。国境より厳しい民族差別、正義も自由もない中、難民を選択するケースが多いようです。日本人には理解しづらいのかもしれません。SDGsで掲げられている貧困、人権侵害、戦争、難民、平和……国家や民族のカテゴリー分けがある限り難しいのかもしれませんね。アメリカは民主主義という旗印のもとそれを目指しています。ヨーロッパは多民族が経済だけでも統合し、次にヨーロッパ合衆国を期待させる社会実験を行おうとしています。アジアもアフリカも30~50年先には社会実験が始まるかもしれません。SDGsは国家の枠組みを見直し、幸せとは何かを世界が見直す大きな可能性を秘めています。