リチャード2世 (シェイクスピアの史劇) | 東海雜記

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主に読書日記

うわあ。

久しぶりにこんな深夜までパソコンいじってます。

深夜。というより深深夜。明け方まであと2時間ほど。

こんな時間には、アレが出るんですよね~。



窓を閉めてあるはずなのに背中に冷気を感じたそのとき、かすかな人の声をはっきりと聞きました。



「おい」

へ?

「お前か。フーシェてのは。ボクのことさんざ悪く書いた奴やな」

そおいうあなたはどちら様ですか?

「アホか、お前は。ついきのう自分がさんざ茶化した人物を忘れたか」

ま、まさか

「イングランド王にしてフランス王、そしてアイルランドの支配者リチャードとはボクのことや」

(こんなエセ関西弁しゃべる外人がリチャード2世↓だって?)

リチャード君

「コラ、心の中で思ってることも聞こえるんやぞ」

す、すみません。日本語がおじょうずだなあ、と思っただけです。

「最近の翻訳エンジンはなかなかのモンやからな。でもこんな寒い日にはちと調子狂うで」

だから、エセ関西弁なんですね?



「ところでキミ、誰に断ってボクの名前を使ってたんや?」

ええ? 許可が要るんですか?

「当たり前やないか。この↑画像(ボクが10歳で即位したときのやつ)も無断借用やないやろな?」

一応、フリーのところからとったんですけど。。。

「ま、ええわ。でも名前だけは許せんな。ロイヤリティ(royalty)を払ってもらおか」

私、陛下には常日頃からロイヤリティ(loyalty)を払っておりますが。

「アホ。ホンマに日本人はエルとアールの発音が区別できんな~。忠誠(loyalty)ちゃうで、著作権料(royalty)や。忠誠なんて口先だけや、糊口をしのげへんわ」

えええ? イングランド王ともあろう人がえらくけちんぼですね~。



「そうや、ボクはお金にはうるさいで。それもこれも皆おじいちゃん(エドワード3世)やお父ちゃん(黒太子エドワード)が戦争ばかりやって、使い果たしたせいや」

そんなにお金がかかるんですか?

「当たり前やろ。軍隊や戦争の規模は大きくなる一方、お金はかかる一方。イングランドはからっけつになってしもたんや」

それで前半優勢だったイングランドが中期になると押されっぱなしになるんですね。

「うん。毎年毎年フランスくんだりまで出向いてられへんやろ。お金ないんやから」

しかもフランスには賢明王シャルル5世大元帥ベルトラン・デュ・ゲクランがいた。

「で、どんどんウチの領地を取られていったんや」


お金を集めようとはしなかったんですか?

「したよ。あらたに人頭税を取り立てた。ボクかて本当は戦争はしたくないんや。でもスコットランドやらアイルランドやらがフランスと手え組んで、ボクに逆らいよるから。

それでも我が民はちっともわかってくれへん。屋根屋のおっちゃんが坊主と組んで一揆を起こしよった」

ワット・タイラーの乱(1381年)ですね。司祭ジョン・ボールと瓦師ワット・タイラーを指導者と仰いで反乱を起こしたんでしたっけ。確かにペストで人口が激減した(一説には2分の1に減ったという)中で人頭税をとれば、頭にきますよ。

「ボクとしては『やりすぎたかな~』思って、そのワットちう奴と話し合いしようとしたんやけどな」

でも陛下は彼らを殺してしまった。

「あれはボクやない! ロンドン市長がやったんや」


「ボクのやってないことも何でもボクのせいにされよる」

81年といえば陛下はまだ

「14歳や。叔父さんが政治をやってた」

ジョン・オブ・ゴーント(ランカスター公)とエドマンド・オブ・ラングリー(ヨーク公)ですね。

「うん。ランカスターの叔父さんはおじいちゃんがぼけて若い女(アリス)にうつつを抜かし始めた頃から権力をにぎっとった。嫁はんの実家、ランカスターの領地をバックに、ボクよりもお金持ちになりよった*

シェイクスピアの劇では陛下をいさめる常識人として描かれてますが?

「あれはフィクションやで。第一、劇の時代でも叔父さんたちはまだ50代。劇で言ってるようなひからびた老人ちゃうかったで。一揆が起こる前からランカスターの叔父は国民に人気がなかったんや」

それでも息子ヘンリーを追放し、ジョンが病死すると財産没収、なんてひどくないですか?

「叔父さんは王位をねらっとったんや。おじいちゃんの七王子、なんちゅうけど、たくさん叔父がおってみい、幼いボクをないがしろにして、野心むき出しやったで」

う~ん、陛下はそうお思いかもしれませんが。

「い~や、皆そう言うてるで」

この図式はまさに20数年後の幼王ヘンリー6世をめぐる争いに似てますな。

*ドン・ペドロの娘はジョンの後妻。その娘も死んでしまうと、長年愛人にしていた女性を妻としました。



でもなぜ従兄弟のヘンリーは陛下から王冠を奪ったんでしょう?

「そうやな。ボクも反省すべき点はある。取り巻きの連中のおだてに乗って、政策に一貫性がなかった。ボリングブルック(ヘンリー)はボクと同い年。ボクは奴のあの颯爽とした騎士然としたそぶりが気に食わんかった。いつか王位を奪われるならこいつや、思ってた。しかも奴には息子がいた。ボクにはいなかった」

ええと。陛下に子供さんがいなかったのは陛下がゲイ。。。

「誰や! そんなこと言うのは。名誉毀損で訴えるで! 金払わんかい!」

相変わらずお金に固執してますね~。でも最初の奥さんを離縁し、次に迎えたのがいくら政略結婚とはいえ、7歳の幼女。ゲイじゃなかったらロリ。。。

「何か言うたか?」

いえ。こっちのことで。

「ともかく、奴には息子がおった。しかも見所のある奴やった。ボクの宮廷に呼び寄せてやったで」

それは人質、という意味ですか? まさか夜伽の。。。

「くどい! そっち方面から離れんかい!」


ヘンリーの息子っていったらハル(ヘンリー5世)ですよね。彼は陛下の宮殿にいたんですか? 居酒屋を飲み歩いてたんじゃなくて。

「キミ、だいぶシェイクスピアのおっさんに毒されとるなあ。史実とフィクションを区別せんかい。あの当時奴の息子はまだ11歳やで」

そういえば、そうですね。

「ボクの宮殿で、礼儀作法とフランス語をみっちり仕込んでやったわ」

お子さんがいなくって、跡継ぎは大丈夫だったんですか?

「ふん。ランカスターやヨーク、グロスター(グロスター公トマス:エドワード3世の末子)、叔父さんたちの野心は見え見えやったからな。早くに死んだクラレンスの叔父さん(クラレンス公ライオネル:エドワード3世の次男)の娘の子どもを後継者にした」

ずいぶんややこしいですね。明日系図を書いてみよっと。



でもね、シェイクスピアのおかげで陛下の人気はなかなかのものなんですよ。

「そうか? キミはえらくこき下ろしていたようやが」

そ、それは誤解ですよう。王権を失った陛下は悲劇のヒーローとして詩神が降臨したかと思われるほど格調高いセリフをはなった。

「それもこれもシェイクスピアのおっちゃんの作ったもんや。本来のボクやない」

それでも正統な王権を失った陛下に人々は限りない悲しみを感じているんですよ。

「そうか?」

われわれ庶民は権力者には反感や僻みを抱きやすいですが、滅び行くものには限りない愛着を感じるんです。

「そうかー。ボクも生きてる間はさんざ言われたけど、死んでよかったかもな」

いや、そんなにあっさりと死を賛美されても困りますが。陛下はどうしてなくなったんですか?

「それが、聞いてくれ。ボリングブルックの奴、ボクを幽閉して」

ま、まさかひいおじいさん(エドワード2世)のようにお尻の穴から焼けた火箸を突っ込まれたんですか!?

「アホ! いいかげん、ゲイネタから離れんかい! 食事をろくにもらえなかっただけや」

ああ、餓死したんでしたっけ。



「食われへんのはきっついわ。過度なダイエットは体に悪いで~」

そうですねえ。飽食の時代といわれる一方で無理なダイエットで体を壊す方も多いですね。

「ダイエット中はお茶をとったらあかん」

??? どうしてですか?

「ダイエット(Diet)からティー(T)をとったらDie、死ぬやんか」

あなた、本当にイングランド王ですか?

「昨今はお笑い芸人の方が王より稼ぎがいいんや。カワイイ嫁はんも貰えるしな」

最後までお金とロリの話でしたね~。

「ほなサイナラ~」