昨日は書評をお休みし、失礼しました。
心配してくださったみなさん、ありがとう。
一日おくれですが、みなさんにおすすめの本のしょうかいをしたいと思います。

著者: 岡田 淳
タイトル: 雨やどりはすべり台の下で
私はふだん、じゅくで国語や社会を教えています。ですから、色々な学校で使っている教科書や色々な問題集を読みます。市や県がちがうと、教科書もちがう場合があるのです。
そして何よりうれしいのは、そういった教科書や問題集で様々なすばらしい物語や説明文を読めることです。
国語の教科書や問題集は、本好きの人にはたまらない、ステキな物語の宝箱なんです。学校の授業で読むだけなんて、すごくもったいないです。
特に心をひかれたものは作者や出版社を調べて本を買います。以前は本屋さんや図書館、出版社に電話したものですが、今はインターネットで色々調べられるので、さらに便利になりました。
この『雨やどりはすべり台の下で』も、教科書にのっていたものです(光村図書「中学国語1」平成5年~平成8年)。もっとも、教科書にのっていたのは最初の一編「スカイハイツオーケストラ」だけですが。
また問題集にも一編の一部(「真夜中のコンニチワ」)がでていました。
街中の大きな本屋さんで探したら、なんと「店員さんのおすすめ」という手書きのカードがたなにはってありました。
「この本を読むと優しい気持ちになれます」
茶色のペンで書かれたその字も優しい感じがしました。
「夏休みちゅうに、最低いちどは、グループ登校のメンバーで遊ぶこと」
という変わった宿題を出された一郎君。同じ「スカイハイツマンション」に住んでいる、いつもいっしょに班を組んで登校している子供たちと遊ばなければなりません。
去年の班長、中1の照男君のアドバイスもあって、照男君を入れた10人で三角ベースをやることになりました。
それなりに盛り上がっているところへ一人暮らしのおじいさん、雨森さんが通りかかります。雨森さんがかさを差すと激しいにわか雨が降ってきました。
急いで大きなすべり台の、かべの中にうめこまれた土管のトンネルに雨やどりした10人。
「見ただろ、みんな。この雨、雨森さんがふらせたんだ」
一郎の言葉にびっくりするみんな。
しかしみんなにも雨森さんに関する不思議な体験があるのでした。
雨宿りの土管の中で10人がそれぞれに体験を話していきます。
それは子供たちがさびしかったり、悲しかったり、退くつだったりした時に経験した不思議な、心温まるお話です。
雨森さんは本当に魔法(まほう)つかいなんでしょうか。
なぜ一人で暮らして、人とあうこともなく、動物も飼わず、ベランダに花もかざらないのでしょうか。
なぜ雨森さんは
「お礼をいったりいわれたり、ほめたりほめられたりするのが、おじさん、きらいなんだ」
と言ったのでしょうか。
子供たちから見たらずっと変わることがないように見えるおとなたちにも「むかし」
と「これから」があります。
子供たちの不思議な話を通じて雨森さんとその優しさがわたしたちの心に静かに広がっていきます。
そして。
その雨やどりの日の晩に雨森さんが引っこすことを知った子供たちは、感謝とお別れを言うためにステキなことを考え付きます。
「お礼をいったりいわれたり」するのがきらいな雨森さんに、どんなことをしてありがとうとさようならを伝えるんでしょうね。
それはこの物語を最後まで読んだ人だけがわかるステキなプレゼントです。
名古屋は今日も雨。
雨にぬれる窓から外をながめながら、何度読んでもステキなこの物語の余いんにひたっています。