もうずいぶん前、私はこの動画の沿線のところで働いていました。父が末期ガンで闘病中で、母と交代で病院に通っていたので、正社員として働くことができず、私は派遣社員で経理の仕事をしていました。
 その部署では正社員たちはPCをタイプがわりにしか使っていなかったのですが、めんどくさがりな私は、煩雑な仕事を出来るだけ簡単にしようとせっせとパソコンの前に座ってあれこれ作業していました。でも正社員たちにとって重宝でありながらも、自分たちよりも知識があるという、いけ好かない存在だったのだろうと思います。名前ではなく『派遣さん』と呼ばれて、私はよく業務以外のことで叱られていました。
 とうとう父があと数日だと医師から言われ、しばらくお休みしたい旨を伝えたところ、私より20歳も年下の上司はそんなことくらいで会社を休まれては困ると怒鳴り1時間以上も説教されました。彼の若さでは、自分の両親の死などまだ現実味もなく、きっと彼なりの正義感があったのだろうと思います。
どうお願いしても休むことを拒否され、私は派遣会社に電話したところ、営業の男性が駆けつけて『こんなところ、止めましょう、働く必要なんてありませんよ!!』と私より先に啖呵をきって、そのまま一緒に帰りました。

 あの頃毎日眺めていた車窓の風景は辛くて苦しくて、私はヨーロッパの大きな空のある風景に思いを馳せていたのですが、今この風景を見ているとたまらなく帰りたくなってきます。
私はどうして無い物ねだりばかりしてしまうんだろうな‥。

 あの頃はまだビルも少なかったけど、ずいぶん増えましたね。