仕事柄、子ども(つまり生徒様)をほめることが多いです。指導方針を「ほめる」に重きを置いている教育産業が昨今ほとんどだと思います。
保護者様も、お子さまが伸びるためにしっかりほめられることを希望される方が圧倒的多数という実感があります。
「ほめて伸ばす子育て」はもう長い間当たり前のように語られてきました。
わたしが気をつけているというか、モットーにしているのは
「思わず心からほめるようなことをしているから伸びるんであって、伸ばそうとして心にもなく世辞を言ったところで伸びやしない」
です。
でも、心からほめるには、こっちもよくアンテナを張っていないといけません。同じものを見てどう心が動くか、です。
見えにくいがんばりや苦労が、子ども側からアピールされなくても見えているのか。素通りしてしまうような「小さな素敵」にどれくらい気づくのか。本人も思っていなかったようなほめポイントを見いだせるのか。
ご家庭によっては「ほめなきゃいけないと思うんですけど、家庭だとついできないところが目についてイライラしてしまって…。」「わたしがほめてもあんまり喜ばないんです…。」と、プロである他人がたくさんほめることを期待される場合もあります。(学習産業あるある話)
もちろん、ご期待に沿うべく多くの先生方はそうされると思いますし、わたしもその場合はそうします。いまどきの家庭教師はとにかくほめ慣れています。
しかし、個人的には、ご家庭にはあんまり推奨したい作戦でもないのです…。
「勉強教えるの上手でたくさんほめてくれる」
「教え方のプロじゃないのにいっつも怒る」
では、前者の方が断然有利ですから、ますます子どもが家庭で言うことをきかなくなるリスクがあります。
そもそも勉強をしたくないお子さんだから個別指導というケースもあるので(ちなみにそうでないケースももちろんあります。)、子ども側もこれ幸いとばかりに、個別指導ならできるが家ではできない、やる気がおきない、などと言い訳を始めたりします。指導者を盾にとって、学習から逃げる。指導側にも不本意なので避けたい事態です
24時間住み込みでもない限り、基本は家庭になるので、やはり家庭内でうまくいくのが大前提にあり、そのサポートにつとめられるのが一番幸せですね
個別指導なんて、たいがい週に2時間です。ピンポイントで強化、ペース配分の確認、学習のアドバイスが関の山なのです。えっ?それだけ??家庭教師ってなんの役に立ってるの???と思われた方は、多分個別指導は不要で済みます。
たった2時間で、魔法のようにあと一週間分の学習が達成できるわけではありません。残りの時間をどう過ごすかのほうが、大きく学習に影響します。
そのためには家より個別指導のほうがいい!保護者より家庭教師のほうがいい!と子どもに思わせてはいけないのです。
わたし自身、生徒様には保護者様のありがたさを、折に触れ自然に自覚できるよう働きかけています。
「先生から叱ってやってください」(学校の先生には多いですよね)もどうかと思うけど、「代わりにほめてください」もちょっと違うような…
意のままに子どもを操ろうとしておだてる作戦は、あっさり見破られ、ほめても案外喜ばないものですよね……がんばってほめたのに…と、たいしてほめたくもないのに、気を引き立てようとほめても無理があります。
「ほめて伸ばす」というより「認めて伸びる」が近いのかな。伸ばすってなんだかおこがましい。わたしが操って伸ばすのではなく、生徒様が伸びているのだと思います。
「ほめて伸ばす子育て」から「認めて伸びる子育て」へ。ちょっと理想を語ってみました。
また載せられたらと思います