■目に見えぬ「縁」信じて
人生とは旅をしているようなもの。そう言う彼の旅は今年、節目の60年を迎える。「人生60歳から。今までは準備期間です。これから、良い旅をたくさんしたい。帰る場所があるから、旅は楽しいんですね」
帰る場所=家。
そんな家族の絆をテーマにした主演映画「HOME 愛しの座敷わらし」(和泉聖治監督)が28日、公開される。作家、荻原浩氏の小説が原作だ。
《晃一(水谷豊)の転勤で、高橋一家は東京から岩手の田舎町へ引っ越すことに。新居は築200年の古民家。慣れない田舎暮らしに家族はすれ違うが、ある不思議な現象をきっかけに絆を取り戻し始める》
「ずっとホームドラマに出たかったんです」。日米のテレビドラマに夢中だった少年時代。ドラマの中の平凡な家庭の日常で起こる劇的な事柄が魅力だった。
特にこの10年で、ホームドラマへ出演したいという思いが強まった。「世の中が家族を考える時期に来ていたし、僕は(『相棒』シリーズで)毎週、犯人を逮捕していたんで…」
演じるときは常に、自分ならどう思うかを考える。今回は、平凡な会社員の父親役。ポイントは「正直さ」だった。終盤、会社の上司に対し、あるセリフを言う。
「僕が、彼を信頼できると思ったシーンです。普段、空回りしている彼を、あんなキレイな奥さんが好きになった理由はそこだろうなと」
役柄と重なるものがあった。妻で女優の伊藤蘭との間に、女優となった一人娘の趣里がいる。映画同様、思春期の娘の対応は難しかった。映画の中で、不思議な現象に驚いた娘が父に抱きつく場面がある。「子供はこわがっているのに、父はスキンシップができて少しうれしい。あの気持ちはすごくわかる」と笑った。
映画に出てくる座敷わらしを含め、目に見えないものの存在を信じている。「縁や人間の心もそうでしょ」。あるエピソードを教えてくれた。夜、良いことが起こる気配を感じるというのだ。「思わず飛び起き、うれしくて笑ってしまう。で、蘭さんに報告に行くんです」。そんな夫に妻は「うらやましいわ」と言ってくれるとか。
テレビの世界にあこがれ、近所の人に勧められ、児童劇団に入団。高校時代、一時、芸能界から離れるが、大学受験に失敗。アルバイトを探していたとき、知り合いのプロデューサーから声をかけられた。「人の縁によって、いまここにいます」
歌手でもある。
「俳優はバイト。歌手はパート。本業は“生きていること”です」と言う。結婚23年、妻とけんかをしたことがない。「この出会いは一言で表せない。彼女は言葉を超えた存在です」。はにかみながらも、力強く語った。
「人って分からないから面白い。自分を分かった気にならず、常に新しい自分と出会いたい」
旅はまだまだ続く。(文・橋本奈実)
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【プロフィル】水谷豊
昭和27年、北海道生まれ。43年、テレビドラマ「バンパイヤ」で初主演。「傷だらけの天使」(49年)、「熱中時代」(53年)などで個性的な演技を見せ人気俳優に。51年、映画「青春の殺人者」でキネマ旬報主演男優賞受賞。平成12年、放送開始のドラマ「相棒」は人気シリーズとなり、劇場版も大ヒット。歌手としても活躍。「カリフォルニア・コネクション」などのヒット曲がある。妻は女優の伊藤蘭。
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「HOME 愛しの座敷わらし」は28日から、大阪・梅田ブルク7ほかで公開。
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