コイバナ
恋花
「嫁ぐ日に」
優しい月明かりの中で
母の心尽くしの愛は
ほのかな薔薇の香りと共に
私の心と体を優しく
包み込んでくれました
そして私は
いつの間にか優しい眠りに
就いていたのでした
*
午前七時玄関のチャイムが
軽やかに鳴りました
私を花嫁に仕上げて下さる
美容師さんのお二人が
お越しになりました
花嫁化粧から始まり
花嫁衣装の着付け
文金高島田の鬘を着けて
鏡に映る私が
次第に花嫁姿になってゆく
もう泣かない…
私は、そう思いました
花嫁の支度が出来上がり
迎えのマイクロバスが
お仲人さんご夫妻
祖父母や親戚の人を乗せて
門の前へと到着しました
私をいつも静かに
優しく迎えてくれたこの家に
感謝の思いを込めて
手を合わせました
お仲人さんに手を引かれ
いつも愛犬のバニーが
走り回っている庭を通ると
家の中からバニーの鳴く声が
聞こえて来ました…
*
十一月十日
挙式は澄み渡る青空の下
神社で厳かに行われました
披露宴のホテルへの移動時
彼とその日初めての言葉を
交わしました
彼「とっても綺麗だよ」
私「ありがとう」
*
披露宴会場に入場すると
1番後ろの親族のテーブルに
父と母の姿が
ありました
両親が並んでいる
私の為に
並んで座ってくれた…
離婚した父と母が並ぶ姿を
しっかりと
目に、心に焼き付けて
両親に深く感謝しました
込み上げそうになる涙を
歯を食いしばり
堪えました…
*
私の友人代表の挨拶で
いつもしっかりしている
M美ちゃんが
スピーチの途中で
泣いてしまいました
彼女の優しい友愛
まるで小さな子どものように
泣いている姿に
駆け寄って抱きしめたく
なりました…
*
白無垢から色打ち掛け
色打ち掛けから
父が成人式にと買ってくれた
紫色の総絞りの大振り袖
そして
お色直しの最後には
母に内緒にしていた
薄いピンクの薔薇のドレスを
着ました
まさか前の日に
薄いピンクの薔薇の花びらの
お風呂を
母が用意してくれるとは
知らずに…
母への感謝の思いで内緒に
選んだドレスでした
そっと母を見ると
母は泣いていました
二時間の披露宴が終わり
拍手をされながら
会場を出る時に
両親の姿を
もう一度だけ…と
振り向きたくなるのを抑え
会場を後にしました
*
Rくんたちが
披露宴の2次会として
夕方からライブハウスを
貸し切ってくれました
彼と2人で予定の時間に
ライブハウスのドアを開けると
いくつものクラッカーが
鳴り響き
そこには
サークルのメンバーと
M美ちゃんたちが…
沢山の拍手に迎えられて
Rくんたちの
バンド演奏が始まりました
彼と私は席に案内され
演奏を見ていました
演奏が終わると
サークルのリーダーが
「Mくん、京子ちゃん
ご結婚おめでとうございます
お二人はステージへ
どうぞ!」と
言いました
私は彼に手を取られ
ステージに上がりました
すると突然照明が消えて
スポットライトが当たり…
リーダーの声で
「さあ!
幸せのkissをどうぞ!」と
すると周りから
エー⁈と言う声や
はやし立てる声が聞こえて
来ました
私は「そんな…」と
思っていると
彼が
「いいよ、無理しなくて
いいんだからね」と
言いました
私は彼のその言葉で
「私…大丈夫」
そう言うと
静かに目を閉じました
*.° ♡ °.*
次の瞬間
キャー!と言う声と共に
拍手が沸き起こり
ました
*・*・*・*・*・*
あなたの色に
染まります
一瞬の内に恋をして
一生をかけて愛を育んで
参ります
それが
私の幸せだからです
女は花であれ
賢く優しい花となれ
**+.° ♡ °.+**
恋は一瞬 愛は一生