開演15分前にオフィスを出て、ビルの出口のところで雨が降っていることに気づく。結構な降り。わたしは傘が嫌いなので、普段は極力傘なしで過ごしている。都内で移動中雨に降られた時は傘ではなくタクシーを探せば、ワンメーターも走れば屋根のあるところまで大抵行かれるし、家に帰るだけならよほどの豪雨でなければ濡れながら歩いて帰る。出かける前からたくさん降っているときはフード付きのゴアテックスとレインシューズ、もしくは出かけないという選択。これで少なくともここ数年は傘を持たずになんとかなっている。
けれど、今日は困った。ホールはオフィスから徒歩3分。タクシーを使うのは憚られ、でもしっかり濡れてしまう程度には歩かないと着かない距離。濡れ鼠でコンサートホールに入っていくわけにもいかないので、仕方なく、ものすごく久しぶりにコンビニで小さなおりたたみ傘を買った。800円。(私にとっては大きな出来事なので書いておく)
無事にホール到着。平日夜の公演だからか、週末の新国や文化会館に比べて若い人が多い気がする。
場所柄なのか、きちんとドレスアップしてる人が多くてちょっとびっくり。以前通っていた都響の定演は同じサントリーホールでも、もっとカジュアルで、いい意味で、格好なんて構わずに音楽好きな人が聴きに来てます、って感じだったけど、楽団のカラーの違いなのかシーズンオープ二ングだからか…
…そろそろ肝心の演奏の話(-。-;
いや、とっても良かったです!演奏会形式で演技も何もなかったけど、初めて(爆)フィデリオというオペラを面白く感じられた公演でした。特に後半、話が急展開するのもあるけど、後半から登場のフロレスタン役、ペーター・ザイフェルトさんが突出して素晴らしかったのが大きな要因。彼の第一声でそれまでより一段深い物語世界にぐいっと引きずりこまれ、そこからは、緊張感ありつつ華やかなオケの演奏にのって、レオノーラとの感動的な二重唱、フィナーレの大団円な合唱と、一気に連れていかれたような感覚だった。前に聞いた時は、最後の合唱とアンサンブルが(字幕のせいもあるかもしれないけど)随分説教じみていて、ベートーベンの手にかかると夫婦愛がテーマのオペラもこんなまとめになるのかー、と感じた記憶があるのだけど、演奏がいいと説得力も増すのか、今日はそんなことは感じずに素直に歌詞を受け止められた(笑
ザイフェルトさん、お名前はかねがね、というだけでお声を聴くのは初めてだったけど、たたずまいと雰囲気からはちょっと意外な感じのする(※個人の感想)、軽やかに澄んだよく伸びるお声。タイプとしてはフォークトさん系。囚われ者のフロレスタンの最初の一声は「Gott!」という嘆声なのだけど、ホール全体に見事に響き渡ってみんな「おおっ」ってなっておりました。
ほかの歌手の方々はもちろん、マエストロ・ミョンフンの指揮率いるオケも、東京オペラシンガーズの合唱も、非常に贅沢な布陣で作られてるので当然なのかもしれないけど、演奏会形式とはいえ、定期演奏会でこんなすごいオペラを聴けてしまうなんて有り難い。
ミョンフンさん、このあと東京以外でもしばらくフィデリオをやるらしく、6月にはヨーロッパでフルステージオペラ版を振られます。
実は私、その時期に仕事で渡欧することになり、向こうでなんのオペラを見られるかちょっと前に調べた時は「なーんだ、フィデリオかー(-。- …」って若干残念に思っていたんだけど… 今日のを聴いて、もう一回見てもいいかなという気がしてきた。