My Dear  18話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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ビルの3階にあったレコーディング・ルームはすでにバンドメンバーの人達が来ていた

賢治の姿を見るとガラス越しの大きな部屋から出てきて次々と賢治と握手をしたり

ハグをしたりしてた

「もういいのかよ?」

「賢治の事だから退院したいって言い張ってたんだろ」

そんな事を話してたら一人の若い人が私が立っているのに気がついた

「賢治、あの子は?事務所の子?」

「うんにゃ。俺の彼女」

なぜか自慢げに紹介してたけど、正直そんな風に紹介して欲しくなかった

「賢治!そんな風に教えなくていいって言ったでしょ」

「だって本当の事だろ?」

自分でも私は賢治の彼女なのか分かってないのにそんな事を言われても困る

「へぇ、賢治に彼女ねぇ。なんて名前なの?」

「橋本 奈々子です。でも賢治さんとは正式にお付き合いしてるわけではなく…」

そこまで言うと賢治は傷つけられた様に

「そんな言い方しなくてもいいじゃねぇの?付き合うって約束はしたんだから」

「そうだけど…」

私と賢治のやり取りを見ていたその男性は私に握手を求めてきて

「賢治のバックメンバーのTakuyaです。ギター担当なんだけどたまにベースもしてるんだ

よろしくね」

「あ、はい」

Takuyaさんと握手した手は柔らくて温かかった

色々な機械があるブースのソファーに座って、賢治たちがガラス越しの楽器とかがいっぱいある

部屋で談笑しながら、何回も歌を合わせてるのを見ていた

こうやって見るとやっぱり賢治って芸能人なんだなぁって思った

1時間も見てただろうか いい加減飽きてきた

ガラス越しの賢治たちは楽しそうだったけど

私は少し勇気を出して谷口さんに話しかけた

「あの…。十分見学出来たので帰りたいんですけど」

チラッと私を見てから谷口さんは無言で立ち上がると

「賢治さんにお知らせしてきます。リポーターとかが張り付いているかもしれないのでお送りします」

「大丈夫です。一人で帰れます」

「今、賢治さんにスキャンダルが出ると困るんです。コンサートも延期されましたし

入院したのが女優に刺されたって事が噂になってますから」

そう言って賢治たちが歌っている部屋に入っていき賢治に何か話しかけていた

そうすると賢治はガラス越しの部屋から出てきて

「なんだよ。もう帰るのかよ」

「だって賢治たちは曲を演奏していて楽しいだろうけど、私は暇なんだもん」

その言葉に賢治は少し黙って

「ちょっと待ってろ」

ガラス越しの部屋に戻るとバックメンバーに何か話していた

それを聞いてたバックメンバーの人達は一斉に爆笑したあと私に視線を向けた

…。何を話してたんだろう