「小料理屋 桜」を最初から読まれる方はこちらから
店を閉店して桜子は梓のクラブに向かった、
梓は煙草を吸いながらぼんやりとしていた。
「ごめんなさい。遅くなって。」
桜子が声をかけるまで桜子が来ているのにも気づかない様で桜子は心配になった。
「悪いね。こんな遅くに。」
「いいえ、構いませんよ。それで相談ってどうしたんですか?」
梓は煙草を引き寄せると新しい煙草に火をつけて言うかどうか迷った様だったが、
他に相談する人物がいないと考え、ポツリと呟いた。
「私、離婚しようと思うの。」
その事は桜子を驚かせるのに十分だった。
「突然、どうしたんですか?」
「旦那がね半年前位から働かなくなったのよ。そうすると生活費は私のクラブの収入だけでしょ。
いい加減私の収入だけじゃ生活できなくなってきたの。」
「そうだったんですか…。」
「クラブの子達にもお給料渡さないといけないでしょ?旦那が働いていてくれてるうちは
なんとか生活出来てたけど働くなっちゃったから…。」
「離婚されても店は続けるんですか?」
「当然よ。そうじゃないと私まで生活出来なくなっちゃうから。
それにお付き合いを申し込まれてる人もいるし。きっとその方とお付き合いするかもしれないわ。」
梓の年齢は知らなかったが梓程の美貌を持ってるのなら付き合いたいと申し出る人は山程いるだろう。
「私の相談はこれだけ。誰かに聞いて欲しかっただけかもしれないけどね。」
梓は苦笑しながら煙草にまた火をつけた。
「桜ちゃんは堺さんと結婚したんでしょ?私みたいにならないでね。」
梓は店の外まで桜子を送ると店に戻った。
桜子は梓が離婚する事に複雑な気分だった。
自分は雄二と結婚して幸せな生活をしているが梓は離婚してこれから1人の生活になる。
もう一度店に戻って梓に離婚は踏みとどめ様かと思ったが
梓が決意した事だ。これ以上立ち入る事ではないと思い、辞めておいた。