小料理屋 桜 93話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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雄二たちはその足で雄二のギャラリーに向かった。

それは内山にギャラリーを見てもらってどの様な個展を開くのを確認して欲しかったのもあった。

雄二は今まで借りていたギャラリーを通り過ぎ5分程歩くと、

「ここだよ。」

少し自慢げに紹介した。

全面ガラス張りで今までのギャラリーと変わりはなかったが、規模が大きくなっていた。

「すごいですね。僕なんかが個展を開いてのいいのかな。」

「スウェーデンで君が描いてた絵を見たけど、十分ここで個展を開けるよ。」

内装はま工事中だったが白のしっくいの壁にするらしい。

「ねぇ、工事っていつごろ終わるの?」

「来週中には出来上がるよ。ちょっと待ってて。工事の人と話してくるから。」

そう言ってガラス張りの壁の横に置いてあった工事用ヘルメットとかぶって中へ入って行った。

手持無沙汰になってしまった桜子は内山に旅行の感想を聞く事にした。

「スウェーデンはどうでしたか?」

「白夜を初めて見ました。綺麗でしたよ。それとこれ。」

それはアリビアとセージの絵が描かれている葉書だった。

「アリビアは『千の恋物語』でセージは『家庭の幸福』って意味があるんです。

堺さんがご結婚されたと聞いて堺さんにははお世話になってるから旅先で描きました。」

その葉書を手にした桜子は葉書を撫でると、

「ありがとう。記念にうちに飾らせて頂きますね。」

そこへ工事現場の人と打ち合わせをしていた雄二が戻ってきた。

「雄二さん、これ。内山さんに頂いたのよ。」

「へぇ。綺麗な絵だね。」

「こっちの白い花が『千年の恋物語』って意味で、紫の花が『家庭の幸福』って意味なんですって。」

「ありがとう。フォトスタンドに入れてうちに飾るよ。ここら辺はCafeがいっぱいあるから

お茶でもしてく?」

「ごめんなさい。私、お店の準備をしなきゃ。雄二さんの新しいギャライーも見れたし

内山さんから素敵な絵も頂いたし今日は帰るわ。」

「そう。じゃぁ今日のつまみは焼きナスにしてもらおうかな?」

雄二と桜子の会話を聞いていた内山は、

「松嶋…じゃないな。桜子さんは結婚してもお店をしてるんですか?」

意外そうな顔で聞いて来た。

「えぇ。常連のお客様もいらしゃるから。それに私が専業主婦ってイメージでもないでしょ。

じゃ、私はこれで失礼しますね。」

「桜子が帰るならさっきの打ち合わせの詰めでもしようか。」

そうして桜子は店に、雄二と内山は近くのCafeに向かった。